第23話・ソロに必要なもの
「ユウキくん、お疲れさま」
ギルドに着くとすぐにアドルさんから声を掛けられた。
俺の帰りを待っていたようだ。
「お疲れ様です。じゃこれ、納品しますね」
そう言って俺はスライムゼリー20本をドン!と受付のテーブルに置いた。
「やれやれ、手紙でわかっていた事ですが、さすがにこれは驚きですねぇ」
アドルさんは少し困った顔をして、ゼリーの品質検査をやっている。
「これはスゴイですね。量もさることながら品質も最高ですよ」
品質検査を終えて、アドルさんが唸っている。
ま、スライム狩りは得意中の得意なんでね。
「では、こちらがゼリーの買取金額になります。ご確認ください」
そう言って、提示された金額は銀貨七枚。ちょっと少ない。
「3割は買取手数料ですよ。ギルドも儲けを出さないといけませんので…」
そう言う事か…。ギルドも慈善事業じゃないからね。
……!そか!!だから、村長は個人的な販売ルートの確保を 勧めてたのか。
さすがは村長、抜け目がないね。
ま、これも勉強だ。俺は銀貨七枚を受け取りギルドを後にした。
……と、その前に…。
「すみません。図書館とか近くにありませんか?」
「図書館はありませんけど、何か調べものでも?」
「えぇ、魔法や魔獣の勉強でもしようかと思って…。せめて、知識くらいは入れておかないとね」
「そうですか。それならギルドの資料室がありますから、そちらを使ってください。閲覧は自由ですよ」
「ありがとうございます。近いうちに利用させてもらいますね」
そう言って、俺は本当にギルドを後にした。
アドルさんから貰った地図を頼りに、ギルドで一括借上げしている宿泊所に向かった。
その宿泊所の見た目は3階建てのアパートそのものだった。
各階の部屋数は5部屋、外側に階段がある。
俺の部屋は3階の5号室、村のみんなは別のアパートに割り振られたみたいだ。
3階を階段で上がるのってちょっとキツいなぁ。
部屋の鍵はギルドの登録証「ギルドスティック」が兼用になっていた。
間取りはだいたい8畳くらい、ベットと小さなテーブルと椅子。
それに小さな簡易キッチン。シャワーとトイレがあったのは驚きだ。魔導具が普及しているからと言っても、そこそこ贅沢な造りになっている。
ギルドって儲けてんだなぁ~。
とりあえず、ここがこれからの生活拠点となるわけだから荷物の整理をしなくちゃならない。
とは言っても、それほど荷物があるわけじゃないから簡単だ。
着替えを作り付けのクローゼットにブチ込めば終了。
時間的に少し早めだが、夕飯に出よう。
近くに旨い食堂がある事はリサーチ済だしね。
さて、俺はこの街で出稼ぎをするわけだが、基本的に行動は「ソロ」になる。
だから、これからの行動はかなり重要になっていくわけだ。
なぜなら、「ソロ」に絶対必要なモノあるからだ。
それは、「知識」と「人脈」だ。
「知識」に関しては言わずもがなだろう。
だが、「人脈」に関しては案外と見過ごされがちだ。
「ソロ」はパーティーを組まないんだから、「人脈」なんて重要か?
なんて思われがちだが、そんな事はない。
正直に言ってしまえば、「知識」より「人脈」の方が重要なのだ。
所詮、一人の人間が出来る事なんてたかが知れている。
武器や防具はもちろん、食事や生活環境を維持するだけでも誰かしらの手を借りているのだ。
それは「ソロ」だろうが「パーティー」だろうが変わらない。
今後の活動を楽にするのも悪くするのも、俺自身のコミュニケーション能力に掛かっていると言っても過言ではないのだ。
ならば「ボッチ」にならないように、「愛想良く」を心掛けていこう。
これがイベントの多い世界の主人公なら、そんな努力はいらないだろう。
だが、俺のいるこの世界は極端にイベントが少ない。
それは、元いた世界とほぼ同じ事だ。ならば、必要なのは地道な勉強と営業活動しかない。
「出来る事からコツコツと」それがこの世界で生き残るコツなのだ。
正直、面倒くさい!いくらチートアイテムを持っていようが、イベントが無ければ「俺TUEEEE」なんて、できるわけがない。
異世界生活って、もっと夢があったはずなんだけなぁ~。
やっぱり、俺はこの世界にイジメられていると思う。
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