第16話・余裕ができれば趣味もできる
結局のところ「ウォーターカッター」は木こりさんたちのお手伝いにはそれなりに役に立った。
斧代わりにはなったわけだ。
が、伐採作業からは外された。そりゃ、現場を水浸しにしたら怒られるわな。
仕方ないので「ウォーターカッター」は個人的に使う事に決定。
んなわけで、俺は資材運びのお手伝いをやっている。
ストレージ持ちはこれが一番役に立つのだ。
さて、この世界に来て二か月もすると、村での生活も安定してきてルーティンワーク化してくる。
俺の場合は、三日ごとに狩り出ていく。しかもこの狩りは注文制で管理はヘイゼル爺さんがやっている。
これなら、俺の無茶な乱獲を未然に防げるって寸法だ。
で、狩りをしない日は村の手伝いやら訓練学校の相談やらで忙しく動いている。
基本的には休みは無い。休みは雨とか天気の悪い日と、祭りの日くらいだ。
普通、ラノベじゃ週休二日制が当たり前のようだけど、実際のところはブラック上等なのである。
まぁ、日曜日の休みとか週休二日制なんてのは、元いた世界の法律とか宗教的な概念でしかないわけで、こっちの世界で通用するはずがない。
だけど、クライアントや期限に急かされる仕事じゃないんで、「スローライフ」って言えば、そうなのかもしれない。
そんな感じで季節は流れ、秋も近くなってきたころのこと。
俺はその日、森をうろついていた。別に狩りをするわけじゃない。
この日の目的は最近の趣味「魔法集め」だ。これは森で出会う魔獣を怒らして、魔法を打たせてそれをDELSONでチマチマ回収するという非常にスリリングな趣味だ。
ちなみに、
魚のいそうなところに電撃をちょろっと流して、プカっと浮いてきた魚を掬うだけの簡単な漁。
元いた世界じゃガッツリ法律違反だが、こっちの世界じゃ関係ない。
乱獲さえしなければ、大丈夫だ。
んで、今回の目的の「魔法集め」なんだけど、今回はいろいろあって「火」の関係の魔法が欲しい。
正直、「電気」の魔法より「火」の魔法の方がこっちの世界じゃ利用価値が高いと思うんだよね。
お風呂だって入りたいしさ。薪を使うってのもありなんだけど、俺は居候の身だから、さすがに村では遠慮しないと…。
だから、朝から森の奥をウロウロしてるんだけど、それらしい魔獣がいない。
いるのは、風魔法のゴブリンモンキーと雷魔法のライトニングボア。
そして、たまに現れる光魔法の鹿「シャイニングディア」。
チマチマと魔法を回収しながら、半日を費やして森をうろついてみたけど成果は無かった。
「火属性の魔獣?そんなモノ森にいるわけなかろう」
森から帰ってからヘイゼル爺さんに魔獣について聞いてみたら、返事はこうだった。
「え~、いないんすかぁ~?」
「当たり前じゃ、森で火なんぞ吹いたら火事で自滅するじゃろが…」
「そかぁ~。んじゃ、どこらへんにいるんすかね?」
「ん~?そんなもん、荒野とか火山とかじゃろ?ここら辺じゃおらんな」
「え~マジすか?道理で森で探しても会えないはずだわ…」
「ここらで火属性の魔獣ならワイバーンみたいな『
さすが異世界!ファンタジーの王道たる「竜」は健在ですか!
で、詳しく聞いてみると、この世界の「竜」は2種類いるんだと。
それは、さっき言ってた「
「亜竜」というのは「
で、「神竜」ってヤツはこの世界に6匹しかいない神様の眷属で不死の存在なんだそうだ。
でも、闘ってコイツらに認められると、とんでもない「加護」受けられるんで、時折、貴族とかどっかのバカな冒険者が闘いを挑んだりして自滅する事があるんだとか。
「そうなんだぁ~。竜ねぇ~。竜じゃ会いに行けないかぁ」
「『神竜』の『
そう言って爺さんが遠くの山を指さした。
その山の名は「クゥオンロン山」。無駄に発音が難しい。
しかも、ここからだと歩いて十日ほどの距離と微妙に遠い。
ん~。無理だな。時間的にも金銭的にも今は行ける場所じゃない。
今後の目標としておこう。
今回の魔法集めは、もう一つの趣味にも直結していた。
もう一つの趣味、それはDIYだ。最近DELSONのクラフト機能でいろいろとモノづくりをしているんだが、やっている時に「熱量が足りません」とか「硬度の高い物を使用して下さい」なんてメッセージが表示される事があった。
このメッセージは溶接の時や切断の時に出る。
だから、熱量の確保に「火の魔法」が欲しかったのだ。
これさえ確保できれば、考えているアイテムで行動範囲も広がるはずなんだけどね。
でも、材料確保には移動手段が限定される……。
限定を解除するには材料確保が必須……。
こりゃ堂々巡りだ。
やっぱり、この世界は俺には意地悪にできているらしい。
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