第15話・村でのあれやこれや
3日の予定だった狩りが1日で終わって、村に帰ってきた。
帰ってくればヒマになる……、わけはない。
仕留めた鹿の処理をしたり、スライムゼリーを壺に詰め替えて村の共有の倉庫に保管したりと案外やる事が多い。
夜は夜で、村長と訓練学校の事で話合いをしたりと忙しく動いていた。
そんなある日、村に行商人の一行が来た。
このアサイ村は、街からそれほど離れてはいない為、月に一度の割合で行商人が来ている。
今回、紹介されたのが村の一番のお得意様のトッドさんだ。
トッドさんは街でもそこそこ大きな商いをしているらしく、懇意にしてもらっているんだとか。
で、なぜ俺なんかが紹介されたかというと、この人も訓練学校に一枚噛んでいる。
「いやぁ~、今回の買取はなかなかの物でした」
「スライムゼリーが多少増えた事もあって、いつもより買取金額が大きくなってましたな」
「いえいえ、今回は量もそうですが、かなり上等の質でしたからね」
「そうですか。それもこのユウキ君のおかげということですね」
そう言って、村長が俺をトッドさんに紹介してくれた。
「彼のおかげで、例の訓練校の話も進める事ができましたしね」
「と言うと、生徒第一号という事ですかな」
「ええ、そうです。彼は優秀ですから、冬場には街に出稼ぎに行ってもらうつもりですよ」
あら?知らないうちに、そんなところまで話しが進んでたのね。
「そうですか。その時はよろしくお願いしますね。ユウキ君」
「え?あ!はい!こちらこそよろしくお願いします」
にこやかに握手を求めてくるトッドさんに営業スマイルで答える。
街に伝手を作っておいて損はないしね。ここはお互いに商売という事で繋ぎをつけておこう。
そんなこんなで、村長とトッドさんは買取の伝票とか学校の経過の資料なんかの受け渡しをやっていた。
行商人さんたちは一週間ほど村に留まり商売をするいうので、俺はその間にソロで狩りに出て獲物の現金化に努めた。
その成果は以下の通りだ。
スライム・1メートル級 4
50センチ級 8
30センチ級 6
鹿 3頭
ウサギ 12羽
イノシシ 2頭
ちなみに、これは3日間の成果だ。
なぜ、3日なのかと言うと、ヘイゼル爺さんから「待った」が掛かったから。
なんか、効率が良すぎるんだって。
「乱獲すな!」って怒られた。
んで、俺には猟の制限が掛けられた。
スライムは1メートル級未満は狩猟禁止
鹿、イノシシ等の大型の獣は月に3頭まで
ウサギや鳥など小型のモノは一日に3羽まで
爺さん曰く「ダンジョンじゃないんだから、森が枯れる様な狩り方はダメ」だそうだ。
だよねぇ。生態系が壊れたら死活問題になるしねぇ。
そういういうわけで、しばらくの間は狩猟禁止の御達しが出たので、俺はDELSONの実験を兼ねて狩り以外の村の仕事のお手伝いをさせてもらうことになった。
で、今日はちょっとした思いつきもあって、河原に来た。
まずは、弾丸用の小石の補給。それと水も大量に補給しないと。
それから、川下に向かって歩く。砂利と砂を探さないと。
どうしてか?というと、砂利は鳥を狩る為の散弾代わりになると思ったからだ。
ソロで狩りに行った時、何回か鳥を狙ってみたんだけど、的が小さい分当たらないんだよね。
で、思い出したわけ、鳥を狩る時って散弾銃を使ってたじゃんって。
で、散弾代わりに砂利を代用しようと思ったわけだ。
砂に関してはちょっとした思いつきの方に使おうと思っている。
しばらく歩くと少し川幅が広くなった所に小さな中州が出来ていた。
お誂え向きにその中州は砂と砂利で出来ている。
早速、回収しよう。
これで散弾の確保と思いつきの実験が出来る。
さて、思いつきのことなんだけど、それは定番とも言える武器「ウォーターカッター」だ。
ラノベなんかだと高圧の水流でゴーレムやら魔獣なんかをサクっと斬っている。
これなら、DELSONで出来るんじゃね?なんて安直に考えたんだけど……。
ソロで狩りをしてた時に森の木で試してみたんだ。
結果から言うと、切れた事は切れたんだけど、なんか思ってたのと違う。
まず、サクっと切れない。しかもちょっと離れると威力が激減して、単なる「高圧洗浄機」になる。
まぁ、掃除機としては良い事なんだろうけれど、俺はこの世界で掃除屋になるつもりはない。
で、工場で使ってる「ウォーターカッター」は水に何か砂みたいなのを混ぜていた事を思い出したんで、やってみることにした。
目の前にあるのは、3メートルほど大きめの岩。
こいつでテストしてみよう。
水と砂を混ぜて高圧噴射開始!
ビャービャーと水跳ねがすごい。でも、そこそこのスピードで岩が切れていく。
……、これじゃ武器としては使えねぇ~。
それに今回もちょっと距離を離すとあっという間に「高圧洗浄機」に早変わり。
水鉄砲みたいな感じにならない。やっぱり、マンガやアニメみたいにうまくいかないか。
別に武器として使わなければ良いんだし。人間、諦めも肝心かな。
それに木こりさんたちの手伝いには使えそうだしね。
さて、村に戻ってみんなのお手伝いでもしましょうかねぇ~。
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