第4話・職業訓練があるようで……
夕刻、パレオ村長の奥さん、エイダさんが帰ってきた。ぽっちゃり系の優しいそうな人だ。
早速、ご挨拶がてら夕食をとりながら、これからの事についての話しになった。
「やはり、街で手っ取り早く稼ぐんだったら、冒険者になった方が良いですかねぇ」
正直、不安だ。ラノベの主人公みたいにチート能力ガッツリなら良いんだが、あいにくとこっちのチートは掃除機だけ。
しかも、俺自身はアウトドア派の人間じゃないから、火の起こし方もよくわからんときている。
そんな俺が冒険者になろうものなら、野垂れ死に一直線だ。
「そうだな。手に職があればなんとかなるが、そうでない人間がまともに稼ぐなると数年は住み込みの修行をする事になるのが普通だからなぁ」
まともに就職できてそんな感じらしい。これはかなり厳しい状況だ。
ならば、「冒険者」一択だな。
「じゃぁ、冒険者になるんだったら、猟師の基礎知識とかは覚えていた方が良いですよねぇ」
「それは当然だな。なんなら、この村でしばらく暮らしながら、猟師の勉強をするのはどうだろうか?」
なんと最高の提案!!まるでゲームのチュートリアル感満載だが、これは乗っておくべきだろう。
「よろしいんですか?こんな見ず知らずの俺なんかに……」
「かまわんよ。こちらにしても良いタイミングだからね。」
そう言って村長さんは一枚の書類を見せてくれた。それにはこう書いてあった。
「新人冒険者の訓練と質の向上について」
あっ、この世界の文字読めてるわ。
これも、あれかな?DELSONの効果かな?
ま、そんなことよりも……。
「これは?」
「冒険者ギルドからの依頼だよ。要は新人冒険者の生存率を上げるための試みだね。うちの村は出稼ぎ冒険者が多いからね。出稼ぎだからこそ自然と安全性を重視して生存率も高い、そこにギルドが目を付けたって感じかな。」
なるほど……。新人冒険者を教育育成して生存率を上げるための、いわば職業訓練だな。
「だが、この村では冒険者の育成なんて初めての事だ。だからユウキ君、きみにはテストケースとして教育方法や必要事項に関して気づいた事に意見が欲しいんだよ。」
ギブ アンド テイク。職業訓練してやる代わりに訓練学校の立ち上げに協力しろと……。
こちらには損はないうえに村に貢献できるとならば、これに乗らない手はない。
「こちらとしては、ありがたい限りです。よろしくお願いします。」
「手伝ってくれるかい。こちらこそよろしく頼むよ。」
それから俺の先生になってくれそうな人の選定やら、この村での生活基盤の話やらいろいろ決めていった。
どれだけの期間になるかは判らないが俺の安全マージンを広げるためだ。
しっかりと勉強しないといけないな。
こうして、「アサイ村冒険者訓練学校」第一期生になる事が決定した。
その夜、俺は村長さん宅の離れに案内された。しばらくの間ここが俺の拠点になる。
この離れは村長の息子さんが使っていたらしく、その息子さんは現在、ギルドの職員として街にいるんだとか。
それで、この村に職業訓練校の話が舞い込んできたというわけだ。
さすがにギルドの職員になるほどの人だから、この離れにはいろいろと資料が豊富だ。これは職業訓練の座学に役立つ物も多いだろう。
そんな事を考えつつも、俺は寝るまでの時間を使ってDELSONの取説を読んで、使えそうな機能をアクティベートしていった。
せっかくのチートアイテムなんだもの、使えるものは使わないとね。
できるだけ、楽して冒険者で稼ぎたいしねぇ~。
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