2/21 文庫本が好き

 今回はのっけから本の話など。


 昨日の日記で少し触れた『婦好戦記』、古代中国(殷の時代というのがすごい)が舞台ので美貌の女傑と美少女軍師の百合要素の強い歴史ファンタジーなのかなという軽い気持ちで読み始めたところ、作者が中国史に造詣のある方だそうでライトでありながら骨太なところはしっかり太いという作品で大いに楽しみました。

 特に好きだったのが戦争描写ですかね、戦争は単なる戦争ではなく神と神の代理戦争であり正しい方が勝利するという呪術的な側面が強かった時代の理屈がきっちり表出されていて、そこに歴史ファンタジーとしての本作の面白みを感じました。終盤の文字を作る件なども良かったですね、イマジネーションの使い方のお手本のようでした。

 以下は趣味に走った感想になりますが、女ばかりの軍隊で繰り広げられる「憧れのあの方のおそばに新参者がいるなんて気に食わないわ」みたいなところから発生するいじわる女子のいじわるイベントなんかもあって大いによかったですね。いじわる女子や、こういう少女小説や少女漫画ノリが大好きなので……。


 ひとつ不満をあげるとしたら、「文庫で読みたかった!」ってことくらいでしょうか。

 なぜなら私が文庫好きだから……。


 それにしても、web発の小説というのは単行本が多いのはなぜなんでしょうね。

 そして、web発小説の単行本の多くがわりと原色を多用した視覚的に賑やかなカバーデザインを採用しがちなのも何故なのか。既存のラノベレーベルなどが白バックにキャラクターを大きく配置したり、色味も比較的中間色を多用したりするのとえらい違いのような。

 単行本が多い理由はアルファポリスさんあたりが単行本サイズで書籍化したのが大きいのかな? とみておりますが、他にも利益のことだとか書店での他なの占有率だとか業界的な理由が多そうですね。

 しかし、web小説と既存のライトノベルレーベルでのデザインの差の謎は本格的に不思議だったりします。なぜweb小説単行本のデザインは視覚的に賑やかなのか……? スタイリッシュにしようとおもえばできそうなのに、天下のカドカワさんでもアルファポリスさんなど先行するレーベルの単行本にデザインを寄せているのか、原色多用なところがあるし。そうした方が売れやすいというデータがあればこそなのでしょうけれど。

 ……と、うっかりデザインに言及していしまいましたが、まあ基本的にweb発の小説も文庫本で出してくれた方が購入しやすいので嬉しいのに、という話でした(ていうかそういうレーベルもありましたね。でもなぜか「読んでみようかな」という気になったweb発小説に限って単行本サイズで書籍化なんですよね……)。



 そんなわけで文庫本の話ですよ。


 文庫本、好きです。文庫本はいい……。軽いし持ち運びに便利だし、可愛い。

 一部例外はあれど、各社大体そろったあのサイズ。文学もラノベも各ジャンル小説も、学術書もビジネス書も、官能小説も、料理のレシピ本、写真集も図鑑も自己啓発本もなんでもかんでもあのサイズになるという夢とロマンがいいじゃないですか。


 ついでに好きな文庫レーベルを勝手にあげておきます。


1、ちくま文庫

 私の好きな文庫本レーベルランキング第一位ですよ。

 手の中に納まった具合、中の紙質、表紙デザイン、バラエティー豊かなラインナップ、どれもよい。本棚に並べた時に統一感が生まれるのも良い。

 ここ近年は復刊の神様でも降りているのか、古本でしか手に入らなかった昭和期の名作を次々に復刊してくれるので嬉しい。森田たまの『石狩少女』を復刊してくれぇ。

 難点はちょっとお高めということですかね。そのうえで月に一冊は欲しくなる本が出る……まあ仕方ない。


2、河出文庫

 十年以上前に黄色い背表紙に変わった時は「こんなんあたいの好きな河出文庫じゃないやい!」となりかけましたが、背表紙黄色の本が増え続けてきた結果今では大好きなレーベルに……。

 読みたかった海外文学を文庫にしてくれるし、ちくまさん級に復刊の神様が降りてるし(森田たまの『石狩少女』を……)、やっぱり月に一冊は欲しくなる本をお出しになるし、まったくニクいレーベルですよ。


3、ハヤカワ文庫

 トールサイズで変な自己主張をする分、ちょびっとだけランクダウンしてしまいますが好きなレーベルです。いつもお世話になっています(文庫本は規格がそろってることに美が宿ると信じているところがあるので、サイズの大小で自己主張するレーベルにはどうしても点が低くなるのです。幻冬舎文庫とかな)。

 よくお世話になるレーベルはJAですが好きなのはepiです。epiは出る月と出ない月があるのと、よく利用する書店ではカズオ・イシグロしか置いてなかったりするので目が放せません。これからもどうか安定した海外文学の供給を……。

 しかし、最初に否定したトールサイズですが、年々ハヤカワ文庫が読みやすくなってしまい、トールサイズを受け入れる気持ちがようやく芽生えつつあるのがなんか悔しいですね。最近などは「持った時にちょっとずっしり来るのがいいよね」てな風にむしろトールサイズの良さをかみしめつつありますしね……。これを堕落と言わずして何と言おう。トールサイズにちょうどあう文庫本カバーがなかなかなくて苦しめられがちだというのに、こちとらは。一度など「トールサイズ対応」を謳いながら、ステッチがわずかに内側にズレてるせいで肝心のトールサイズに使用できない不良品をつかまされたこともあるというのに。


 ほかにも朝日新聞社文庫(軽くてやや小ぶりなのが愛らしい、ラインナップが渋い)、講談社文芸文庫(高い! でもここでしか買えない本が多い……)、昔の集英社文庫(背表紙にSマークがあるやつ。読みやすい)などが好きです。


 

 ――こういう趣味に走った文章、書く方は楽しいのですが読むほうはどうなんでしょう……? うるさくて失礼しました。

 

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