【短編】柚季くんのギャップについていけない。

咲倉なこ

第1話



放課後。


部室に行くと、後輩の柚季くんだけがいた。



「あれ、まだ1人?」


「3年生は進路説明会とかで、今日は来ないと思いますよ」



そっか。


昨日そんなこと言ってたかもしれない。



「じゃあ今日は2人っきりだね、ゆじゅきくん!」



私が所属する新聞部は3年生が5人いるのに、2年生は私1人、1年生は柚季くん1人だけ。


いよいよ来年の部活存続が心配されている。



「遥先輩」


「なにかな、ゆじゅきくん」


「その呼び方、まじでやめて下さい」


「なんでー、かわいいのに」



私はたった1人のこの後輩が、かわいくてかわいくて仕方ない。


だって初めてできた後輩だし、顔もリスみたいでかわいいんだもん。


柚季くんを見てニタニタしている私に気づき、盛大なため息をつく柚季くん。



「あんまり見ないでもらっていいですか?」


「えーなんで?」


「気が散るので」



そう言って昨日スクープしたネタをパソコンに打ち込む柚季くん。


マジメかっ。



先輩たちもいないし、柚季くんも相手にしてくれないから、つまんなーい。


真剣にパソコンとにらめっこしている柚季くんをこっそり眺める。



ほっぺた、めっちゃ柔らかそう。


ほお袋でもあるんじゃないかな。


めちゃくちゃ伸びそう。



そんなことを思っていると、ついつい自然と手が伸びていて。


柚季くんのほっぺたをぷにっとつねっていた。



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