仮想神社の作り方

宮武しんご

第1話

 島根県。今まさに夕日が沈もうとしている、日本海に臨む岬の突端。その目と鼻の先にある小島。その小島の上に、鳥居とやしろが見える。小さな、小さな社。その横に、白いワンピースの少女が立っている。腰まである長い黒髪を海風になびかせながら、西に沈みかける夕日をまぶしげに見つめるその表情は美しくも、その柳眉りゅうびは哲学的苦悩をたたえるようにひそめられて―――いや? 違う。より正確に言うならば、その本来は美しかるべき表情は、まるで猪木のように突き出されたままのアゴで固まった表情によって台無しになっている。

 少女の視線の先には、前衛芸術のようなオブジェが置かれている。人間がエビぞりのまま包帯でぐるぐる巻きにされたように見えるそのオブジェは、包帯でぐるぐる巻きにされたエビぞりの人間であった。

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