第23話「ナイスミドルからの刺客(前編)」
決死の思いで学校に来たが、肝心の
DNA奪取のために喧嘩も辞さない。殴り合い覚悟で気合を入れてきたのに、拍子抜けもいいところだ。
いい気味だが、それはそれで困る。
こうなれば方針転換して、学校でなく病院に直に乗り込んでみるか?
こっそり病室に潜入して
俺はただでさえ
一般ピープルの俺では、太刀打ちできない。
コネでもあれば普通に入口から入れるかもしれないが、庶民の俺にコネなんてない。
はい、嘘です。麗良という大コネがある。
麗良の前では、大病院もただの診療所にすぎない。草乃月財閥の紹介状でもあれば、一発OKだろう。
ただ、麗良とはいまだに連絡が取れていない。あいかわらず電話も繋がらないし、ラインも既読がつかないのだ。親父さんとの交渉……失敗した可能性が高い。麗良に期待するのはもう無理だな。
残りの手札は
力技か。
それに
じゃあ他に手札は……ってないよな。
どうすればいい? なにが最適だろうか? 画期的な方法を思いつけるか?
独りで考えていても埒が明かない。誰かに相談して第三者の意見を聞きたいよ。
でも、誰に?
強いて相談先を挙げれば、
数日前、
配下!? 家臣!?
どういうことだってばよ!!
いや、このご時世、どうやってそんなもの作るんだよ? 作ったとして、どういう奴なんだよ?
色々ツッコミどころ満載だったけど、なんか既に数百人いるみたいなんだよね。まだ顔合わせはしていないが、彼らの顔なら知っている。
……体中に刺青をバリバリ入れた見るからに狂暴な人達だった。スキンヘッドやモヒカンカットした筋肉マッチョな奴らがギラギラした目つきで睨んでいる。
お近づきになりたくない。というか一ミリも関わりたくない。
怖い、怖すぎる。
俺の人生にまったくかかわりがないと思っていたデンジャラスでバイオレンスな人達だ。
そんな今にも「汚物は消毒だぁ!!」とか言いそうな連中が、
一体全体、
強いからか?
真理香の話では、
喧嘩自慢の男達を相手に次々とタイマン勝負で勝って、強さを見せつけたとか?
少年漫画でよくあるタイマンしたら友達って奴ね。
う~ん、いやでもいくら強くても
それとも実はアイドルやってた
とにかく携帯動画の中で、奴らは、
城島は、この集団の副総長みたいなんだけど、「アリッサ様に逆らう奴は殺す」ってまじな眼で演説していた。
嘘じゃない。本気だよ、彼。なにせ
この城島って男、絶対に人殺したことあるでしょ。間違いない。
それぐらいイッちゃってる。
そんな狂暴な男を従えている中学生の女の子。
もうね、
そんでね、城島のヤンチャムービーが終わった後に
「お見苦しいところをお見せして申し訳ございません。まだまだ練度が十分とは言えず、ショウ様には不十分な部隊とは思いますが、いかようにもお使いください」
可愛い顔してそう言うんだ。
使わないよ。というか使えない。
俺は完璧超人のショウではないからね。彼らをアゴで使おうものなら百パー殺される。
彼らと顔合わせなんて絶対したくない。
だからね、なるだけ今は
はぁ~もういいや。
いろいろ考えてもいいアイデアは浮かばない。
幸い、麗良の脅しがまだ効いているようで、
ここは当初の作戦通り、奴が学校に復帰してから勝負といこう。それまでの辛抱だ。
★ ☆ ★ ☆
あれから一週間……。
麗良……。
まぁいい。今日も何事もなく終わった。それを喜ぼう。
さぁ、帰宅だ。カバンに教科書、筆記用具を入れて教室を出る。
外靴に履き替え学校の門を出ると、太陽の日差しを感じた。
温かな陽気に心が幾分軽くなったような気がする。
平和だ。
つかの間の平和だが、こんな生活がいつまでも続けばいいと思う。
……無理だろうな。
胸中の不安を無理やり押し込めていたけど、考えてしまう。
このまま麗良不在が続けば、さすがに皆も不審に思うよね。麗良の脅しも効果がなくなる。俺へのイジメが再発するだろう。いや、今まで抑えつけられていた分、イジメはさらにグレードアップするに違いない。
くそ。
イライラしながら帰宅していると、一台の黒い車が目の前で停車した。
すっげー高級そう。
こんな町では一度も見かけたことがない。曲がる時に一苦労しそうな縦にバカ長い車だ。
これ、ロールスロイスだ。
金持ちの定番の車だよ。英室ご用達だよ。
もしかして麗良かな?
車に近づき、そっと窓を覗こうとすると……。
「うぁああ!」
いきなりドアが開き、そのまま引きずり込まれた。
誰だ? 誘拐? なぜ俺なんかを?
いや、違う。次は俺がターゲットにされたのだ。
しまった。油断した。
それを主君命令を使って無理やりやめさせたのだ。だってヒャッハーな奴らと知り合いになりたくなかったから。
いまだに顔合わせはずるずる引き延ばしてた。
くそ、こんなことならボディガードを頼んでたらよかった。
後悔先に立たず。
慌てて車を降りようとするが、ドアはロックされたままだ。開かない。
がちゃがちゃとドアを何度も引っ張る。
「開けろ。助けて!」
「落ち着け!」
引きずり込んだ男がパニくる俺を一喝する。
その短くも威厳の籠った声には、逆らえない圧のようなものを感じた。
「あ、あ……」
「落ち着いたか!」
「は、はい」
多少落ち着いたところで、その男の顔を見る。
四十代後半くらいの中年の男だ。ただ中年と言っても髪はびしっと決まっていて、体形はすごく引き締まっている。上質なスーツを着こなし、高級時計と高級靴が似合うイケてる中年って感じだ。
ナイスミドルのお手本のような男である。
よかった。この人はあまりに上品すぎる。
少しほっとする。
でも、だったらこんなに強引に車に乗せてきて、誰なんだって話だ。俺の記憶にはない。知らない男だ。
「誰なんですか?」
「私は、草乃月涼彦だ」
えっ!? うそ!
草乃月涼彦って確か草乃月財閥の現社長の名前だよな。
ってことは麗良パパだとぉおお!! なぜここに?
「白石翔太……娘がずいぶんとお
麗良パパは、皮肉たっぷりに言う。この言葉が全て物語っている。
あぁ、娘とのバトルが相当応えたのだろう。
顔に笑みをはりつけているが、その眼は笑っていない。これは、相当俺に恨みを抱いている。
どうやら
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