第26話 川野辺高校文化祭②
「あ、小島先生! 素敵!可愛い」
「先生!一緒に写真撮って!」
「あっお隣はもしかして噂の婚約者さんですか!カッコいい方ですね」
何だかメイド姿の美香は、生徒に大人気だった。
確かに似合っているからな。
普通に可愛いし健吾君が言うには授業も上手いらしいから、普段から生徒に人気の先生らしい。美香の人柄もあるんだろうけどな。
「大人気だな」
「ちょっと恥ずかしですけど、こういうのも生徒が話しかけてくるきっかけになりますからね」
へぇただメイド服を着たかったから着てたんだろ思ってたけど、そういうふうにちゃんと考えてたんだな。
「ちゃんと生徒の事考えてるなんて偉いな美香は」
「ふぇ、そそれ程でもないです。ちょっと私も着て見たかったってもありますし」
「はは。でも本当に似合ってるぞ。衣装のクオリティが高いのか本職のメイドさんみたいだしな」
「そ そうですか。やっぱりこの服は買取の方がいいですかね」
「買取?」
「はい。今回メイド服と執事服は外注で結構作ったらしいんです。
基本は演劇部に卸すらしいんですけど、欲しい人いたら格安で販売してくれるらしくて・・・洋さんも喜んでくれたみたいですし♡」
え~と、それって家とかでも着てくれるってことかな・・・
うん。これは健吾君に話して買取だな。
と、ちょっとアレな考えに浸っているとジャージ姿の女子生徒が声を掛けてきた。
「小島先生! 私たちのクラスにも寄って行ってくださいよ~」
「あ、大室さん。ということは1年B組よね。ここは何をやってるの?」
「よくぞ聞いてくださいました!
うちはですね。スポーツ専門のゲームセンターをやってます。
ゲームでいい成績だせば商品ゲットできますよ!」
この子たちは1年みたいだからバスケ部の子かな?
スポーツ専門って何やってるんだろな。
「美香 ちょっと見て行ってみようか。何だか面白そうだし」
「あ、噂の彼氏さんですね。楽しいですから是非遊んでってください!
2名様ご案内で~す」
大室さんだっけ?この子客引き上手だな・・・
教室に入ると、いわゆるストラックアウトの的が壁際に用意されていて、何人かのお客さんが的にボールを投げていた。
なるほど、これなら狭い教室でも出来るな。
と感心していると案内役の大室さんが競技について説明をしてくれた。
「ゲームはストラックアウトだけなの?」
「いえ、後はサッカーとバスケもありますよ。
サッカーはPKの要領で野球と同じように的あてを楽しめるようにしてます。バスケは時間内に何本ゴール決められるかで競う形ですね。
1競技300円で的を空けた枚数やゴール数によって商品が選べるようになってるんですけど、どの競技を行いますか?」
野球にサッカーにバスケか。校庭に出れるようにしてるとはな。
じゃ、俺としては・・・
「サッカーでいいかな?」
「はい。それでは校庭の方で行いますので後ろのドアからお願いします」
俺は美香を伴って校庭に出た。
校庭には教室の近くに仮設のサッカーゴールが用意されていて、野球と同様に的が設置されていた。的は全部で9枚と野球と同じ仕様だ。
「あの洋さんってサッカー得意なんですか?」
「あれ?言ったことなかったっけ?俺、川野辺高校時代はサッカー部だよ」
「え!そうなんですか?」
「と言ってももう20年以上前だし、サッカーは随分ご無沙汰だから、あんまり期待はしないでくれよ」
体はジムで鍛えてるけどサッカーは卒業以来だからな。体が覚えてればいいけど。
「1分経過するかミス3回でゲームオーバーです。それでははじめ!」
大室さんが笛を吹くと横に控えていた男子生徒が俺の方にサッカーボールを転がしてきた。なるほどこういうやり方か。
俺はゴールとの距離感と力加減を図るため、転がってきたボールをインサイドキックで軽く蹴った。一応狙いは向かって左上。
[ガン]
ボールは左上のフレームに当たりボールは明後日の方向に跳ね返っていった。
『もう少し下でいいのか。でも力加減はこれくらいで良さそうだな』
「洋さん!惜しいです。頑張って!!」
折角美香が応援してくれてるんだし、カッコいいとこ見せないとな。
と、続いて転がってきたボールは方向を少し修正し蹴った。
見事左上のパネルと打ち破った。
「洋さん!凄い!!」
美香のテンションも以上に高い。
生徒も見てると思うんだが・・・いいんだろうか。
美香の心配をしつつも転がってくるボールをひたすら蹴り時間切れ。
結果は9枚中7枚だ。
結構テンポよく蹴ったと思うけど・・・これ9枚全部抜ける奴って居るのか?
などと軽く疑問には思ったけど、まぁ深くは追及しないことにしておいた。
ゲームだしな。
「おめでとうございます!本日の段階でトップの成績です。
賞品なんですが、特賞としてレストラン"フルール"の特別ディナー券を差し上げちゃいます!」
「え!フルールって幹線道路沿いにあるレストランよね。
結構有名なお店じゃない!」
って何だか美香の話に食いついてきたけど、そんな有名店のディナー券なのか?
「はい!2名様のディナー券なのでお2人で是非楽しんで来てください」
「ありがとう大室さん。でもよく予約取れたわね。あの店って確か人気あるから予約が取りづらいのでも有名だったわよね。それに結構な高級店だからディナー券も高額になったんじゃ」
「え~とですね。ここだけの話ですが、フルールって瑞樹の実家なんですよ。
だから、予備の個室を特別に使わせてもらえるようお願いしたんです。
ディナー券もご厚意で安くして頂いて」
「瑞樹って鮎川さんのことね。そうなんだ。私も一度は行ってみたいって思ってたのよね。凄く楽しみ!」
美香も嬉しそうにしてるし、俺のカッコいいとこも見せることも出来た。
俺としては大満足な結果だな。
ちなみにバスケ部のOGということで美香はバスケゲームに挑戦したけど・・。
まぁ結果は察してやってくれということで。。。
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