第6話 あの日の真相①

「じゃ 再会を祝してカンパーーイ!!」

「カンパーーイ」


約3週間ぶりの再会だ。正直またこうして会えるとは思っていなかった。

それにしても、この間は化粧をほとんどしていないようだったけど、今日は化粧もしていて、ちょっと大人っぽく見えるな。


10人も入れば満席になるような小さな居酒屋。

俺と小島さんは、店のカウンター席に座りおつまみを食べながら酒を酌み交わしていた。


「今回は声を掛けてくれてありがとうございました。また会えて嬉しいですよ」

「いえ!こちらこそお忙しいところ来ていただいて・・・嬉しいです」


会えて嬉しいって、もしかしてやはり俺の事を・・・・・?

い いや前にも自分で否定したはずだ。俺みたいなおっさんにこんな可愛い子が惚れるなんてことは断じてない・・・・はず。


ま まぁそれはそれとして、今はあの日の事を確認しないとな。


「小島さん。再会できたということで、店長に聞いてみませんか?あの日何があったのか。俺も小島さんも記憶があやふやだし」

「そ そうですね。確かに店長さんなら目の前で見てたわけですし」

「店長!ちょっと話いいですか?」

「ん?何か用か洋?」


というわけで、厨房の奥で仕込みをやっていた店長に声を掛けて話を聞いてもらった。ちなみに店長は大学の先輩で普段から色々お世話になってる恩人だ。


「・・・というわけで、俺も小島さんも酔っていて記憶が曖昧なんです。どうやって家に帰ったとかわかりませんか?」

「・・・本当に覚えてないのか? 二人とも一応は歩けてたし受け答えもしてたんだけどなぁ~。とりあえず居酒屋で言うことじゃないけど今日は飲みすぎるなよ!」

「あ、それはもちろん気を付けます。で、どうなんですか?」

「・・・家までは朱里に車で送らせたんだよ。お前の家は俺も朱里も知ってたからな」


なるほど。マンション前まで送ってもらってたなら、千鳥足だったとしても家までたどり着けるよな。だとしても・・


「娘さんでしたよね。朱里さんって。でも何で小島さんも?」

「あぁ娘だ。ちょうど仕事が終わって帰ってきたところだったから頼んだんだ。小島先生の件は・・・もう1度聞くが二人とも本当に覚えてないのか?」

「「はい」」


店長はちょっと困ったような顔をしている。

もしかして俺達何かやらかしてたのか?


「俺も厨房に居たから経緯は知らねぇけど、小島先生が『おじ様!私と結婚して』って大声で叫んだんで何かと思って見に行ったんだよ。そうしたら、小島先生が洋に抱き着いててな。それで今度は洋も『こちらこそ結婚して下さい!』って何だかそこの席で抱き合って急にキスしだしたんだよ」

「「はぁ!!」」

「で『イチャつくなら家帰ってからにしろ!』って俺が朱里に送らせたんだ。朱里に聞いたら、マンション前に着いたら二人して手を繋いでエントランスに入っていったらしいぞ。その後は知らん」

「「・・・・」」


何その話。俺と小島さんが結婚とか・・・それにキスとか。

まったく覚えてないぞ!そんな羨ましい話!

と横の小島さんを見ると今にも泣きそうな顔をしてプルプルと震えていた。


「わ わたし、そんなことをしてたんですか!!」


と青白い顔をして、ついには泣き出してしまった。

そりゃ、こんなおっさんに公開プロポーズとか恥ずかしいよな。

俺も酔っていたとはいえ『こちらこそ』とか言ってたとか何様だよ!

まぁ確かにこんな可愛い子なら本音が出たのかもしれないけど・・・

抱きしめてキスはまずいよな・・・キスは・・・


「小島さん 申し訳ない。酔っていたとはいえキスしたとか俺が悪かった」

「そんな・・謝らないでください・・私の方こそ初対面の方に"結婚"とか・・せめて最初は"お付き合いして下さい"じゃないかと思うんです・・・・・」

「へ?そこなの?」


泣きながら何だかポンコツな事を言いだす小島さん。

そして、相変わらずの涙声で


「あ あの私みたいな酒乱な女は、嫌いになっちゃいましたか?」

「い いや別にそんなことは・・・」

「じゃ じゃあ、キスした責任取って私とお付き合いしてください!」

「え?ええーーーーー!」


今日はまだ生のジョッキ1杯目だよね・・・








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