望月家の家庭事情。紀斗視点

「ねぇねぇ、さくらは、ゆめあるの?」

「わたし!?ゆめ……なんだろ?」

嗚呼、今日も俺の妹達はこの会話。いつもどおりの日常。いつまでもずっと続いて欲しい日常だ。

望月家は平和だった。過去形にしたのは、親父は俺が幼い頃に蒸発したし、母親はそれのせいで少しだけ狂ってしまったからだ。

はっとして目を覚ます。

「……夢か」

どうやら、桜空と彼方の会話を聞きながら寝落ちてしまったようだ。

「のりとにいさん?」

「のーにぃ?」

「あ……あぁ、わりぃわりぃ寝てたわ」

「むー……のーにぃのばか」

「ごめんな。彼方、お詫びに今日はハンバーグでも作るか」

「えっほんと!?」「……のりとにいさん、だいじょうぶなの?」

「ん?なにがだ?」

「き……きょう、おかぁさんかえってくるんじゃ……」

そうか。桜空は母親が苦手だ。だから今日母親が帰ってくることを知って、この様子だったのか。

「ごめんな。俺がもう少し大人だったら…お前らにこんな思いさせなくて済むのに」

そうポツリと呟いた。

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