Strike Spring

ペペロンチーノ

第1話



緑豊かな山々が連なり、ピンク色に色付いた桜の木が綺麗に並んでいる一直線の道を俺、海道陽太を乗せた二両編成の電車が突き進む。


「あいかわらず、静かなとこだなー。」


かれこれ3年振りに帰ってきたド田舎のようでド田舎じゃない極々平凡の街。海成町。相変わらずうるさいわけでもなく、かと言って静かでもない平凡な街。その風景をスマホに撮り、一息つく。


「あいつら、元気してっかな。」


スマホに保存された3人の子供の写真を見つめる。そこに映るのは、俺と俺の義理の妹。紫紅と双子の妹燈だった。


俺達三兄妹は、俺と燈が産まれた次の日に母親が亡くなり、1人での育児は大変だからと義理の母親と再婚し、その時に紫紅と兄妹関係になることとなった。


その後、交通事故により両親が亡くなった俺達は、親戚の家を転々と回り、ある時は手厚く歓迎され、ある時は雑に扱われたりなど散々な目にあいながらも生活をしていた。


そして、中学は推薦されたところに行きたいと野球に打ち込むために寮に入り生活を送っていたが、全ての親戚に見放された燈達と生活するために電車に乗りこみ今に至る。


「ったく、見放すなら最初から引き取るなっつーの」


そんなことをぼそっとつぶやいてはみるが、引き取られもされなかったら俺たちは今頃飢え死にしていたし、もっと大変な目にあっていたのかもしれないから仕方の無いことだと自己完結をさせておく。


「次はー、海成ー。海成でございます。」


そんなこんなで駅に着いた俺は、荷物をまとめて改札口を抜け、燈達の待つ自販機を目指す。


「あれ?ここら辺に.......」


「「よーにぃ(お兄様)おかえりなさい!」」


キョロキョロしていると、後ろからとてつもない勢いで何かが突撃してきた。


慌てて体勢を立て直し、後ろを向くと、背中のちょうど真ん中くらいまで伸ばした艶やかな黒髪をポニーテールにしたスタイル抜群の美少女と、肩甲骨くらいまで伸ばした赤髪をサイドテールにしたこれまたスタイル抜群な美少女がにこやかに立っていた。


「お、おぉ。え、どちら様ですか?」


あまりの急展開っぷりに頭が回転しない俺。あとから何を言われようとこれは仕方の無いことだと思う


「えっ、よーにぃ、私たちのこと忘れちゃったの.......?」


「お兄様?それは本当ですか?」


美人さんがうるうると泣きそうなめで見つめてくる。やめてっ!よーたのライフはもう0よっ!


「嘘だよ。お前が燈でお前が紫紅だろ?」


俺は2人の頭を撫でてやる。


「にへへー。やっぱりよーにぃだー」


「このこんがり焼けた手のひらで撫でられる.......ふぁぁぁ、私もう今日は頭洗いませーん」


「いや待て待て、頭は洗えよー?」


そんなことをしていると、周りの人が邪魔そうなめで見つめて来ていることに気づいた。


「なぁ、そろそろ帰らねぇか?荷物置きたいんだが」


「うん!なら行こ!」


そしてさりげなく俺の左腕にくっついてくる燈。


「お兄様。お荷物お持ちしますよ?」


「いやいやいいよ。どうせすぐ着くでしょ。そして重いし」


さすがの俺でも女の子に荷物を持たせるほど腐ってはいない。


「むー、でもそうしたら燈だけお兄様にくっつけて私だけくっつけないじゃないですかー。」


「ん?あ、そうだな。なら.......」


俺は黒いキャリーケースの持ち手を背負っていた愛用の青いバッグの後ろに偶然付けていたフックにかけ、片腕を空かせる。


「これでいいだろ?」


すると、返答を待たないうちに紫紅が抱きついてきた。


そんなこんなで、これから俺が生活する家に着いた。見た目はごくごく普通の一軒家。ローンに関してはもう全て完済しているらしい。


「ここか。」


玄関で靴を脱いだ俺は、リビングのソファーに腰を下ろす。



「はい、生活用品などに関する事なんですが、月に30万円振り込まれるように銀行の人に交渉をしておきました。それでも足りない場合はやはりバイトをするしかないかと.......」


「ほぇー、さすが紫紅だな。」


元々紫紅は、才能的なもので交渉、裏作業その他もろもろがとても得意で、周りが良く見えている。


だからといって燈はなにもできないといったらそうではない。紫紅はそういうものに特化している反面、家事が壊滅的にできない。それを補える腕前を持っているのが燈だ。


「食材やほかの日用品などに関しては予め補充しておいたので、あと足りないものがあったら個人的に追加しておいてください。」


「そういやなんだが、部屋ってどうなるんだ?」


「えっ?3人同じでベッドも同じですが…何か問題でも?」


紫紅がキョトンとした顔で答える。さも当たり前のように


「え?いやいやいやいや、年頃の男女が一緒に寝るとか…マジで言ってんのかよ」


「だって、部屋の数少ないですしなるべく備品は少なくいきたいので別にそれでもいいかなと…」


…まぁそういうことにしとくか。そう思わんとやって行けん。





「おはなしおわったー??じゃ!」


そんなこんなで風呂上がり。俺がソファーでゆっくりテレビを見てると、燈が俺の膝に頭を乗せてきた。これがいわゆる膝枕というやつか?!にゃんと!


「にひひー。ここは頂いたのだー!」


「むぅ、ずるいです。」


横で紫紅が拗ねているのでここで1つ提案をする。


「もう日もくれたし。もう布団に入るかー。明日から学校だろ?」


「はい…そうですけど…。」


「…なら、布団に入って3人で寝ようぜ?明日早いんだろ?」


すると、2人は目を輝かせて布団に飛び込んでいくのであった。

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