奈津ヶ島の昔話:龍の盃(りゅうのさかづき)
まだ
ある日、
「くりゃ、
江ん助はすん
ちぃっ
「づったすて? 何か
江ん助が聞っつ
「
江ん助はすぐなり
「ゆーすてくれられて、ありがたーありゃす。じんぎがすってげん、
「
江ん助が
「
すったん話すちゅってば、
「
「うぇあーっ!」
江ん助はうったまげて、すん場で気ぃ失ぁてまぁてな。
ざぜん、
「いまはすまんげな。くん
いっつき
「分かりゃすて。すれぜぁまた目ぇ
江ん助が
ざぜん、辺り見渡して江ん助は自身が住んぢゅって家が無ぁなってまぁてがに気づいてな。
江ん
「すみゃすんが、
すてばぢゃぢゃは首傾げてな。
「知らんなぁ。
「
江ん助はうったまげてな。
「なんぜん、
「
すてばぢゃぢゃは
「
江ん助は青ざめてな。気づかん内に自身むぢゃぢゃになってまぁてんざ。
「江ん助さん、くれ
「
●訳
まだ
ある日、江の助がいつものように海に行くと、浜辺に盃が落ちていた。
「これは、誰のだろう?」
江の助はその盃を家に持って帰ると、大切に保管した。
しばらく経ったある日、江の助が同じ浜辺にやって来ると、今度は美しい女がめそめそと泣いていた。
「どうしたのだ? 何か困っているのですか?」
江の助が尋ねると女は答えた。
「父の盃がなくなってしまって、探しているのです」
江の助はすぐさま先日拾った盃のことを思い出し、女にそれを返した。すると女はとても喜んだ。
「ありがとうございます。お礼がしたいので私の家に来てほしいのですが、一度目を閉じてください。私がいいと言うまで、決して目を開けないでくださいね」
女に言われるまま江の助は目を閉じた。そして、もう一度目を開くと目の前には立派な宮殿が建っていた。
「ここはどこですか?」
江の助が尋ねると、女は答えた。
「ここは
そんな話をしていると、宮殿の中から立派な紫の着物を着た男が出て来た。海の神様、龍王だった。
「私は龍王だ。お前が私の盃を奪った不届き者か。懲らしめてやる」
龍王は怒り、江の助の目の前で雷をどおん、と落とした。
「うわぁっ!」
江の助はびっくり仰天して、その場で気を失ってしまった。
しかし女が事情を説明すると、龍王の怒りは鎮まった。
龍王は目が醒めた江の助にこう言った。
「先ほどはすまないことをした。この度は娘が世話になったことだし、お礼にもてなそう」
龍王とその娘は江の助を大層なごちそうや歌、踊りでもてなした。
瞬く間に三ヶ月が経った。江の助と龍王の娘はねんごろになり、たくさん子供をもうけた。しかし、江の助は両親が心配になって龍王の娘に、家に帰りたい、と言った。
「分かりました。それではまた目を閉じてください」
江の助が瞼を閉じてもう一度開いたとき、彼は再び地上に戻っていた。
しかし、辺りを見渡した江の助は自分の住んでいた家がなくなってしまっていたことに気づいた。
江の助はたまたま近くを通りかかった老人を呼び止めた。
「すみませんが、ここに江の助というものの家がありませんでしたか?」
すると老人は首を傾げた。
「知らんなぁ。ここはもう五百年前から誰もおらんよ」
「五百年前?」
江の助はびっくり仰天した。
「なんでも、ここに住んでいた漁師の男が海へ行ったきり帰ってこないそうだ。お前もそんな年なら、聞いたことあるだろう?」
「年って、私はまだ若いですよ」
すると老人は笑い転げた。
「お前はどう見てもわしよりも年じゃないか」
江の助は青ざめた。彼は自分でも気がつかない内に老人になってしまっていたのだった。
途方に暮れて浜辺に戻ってきた江の助の前に、再び龍王の娘が現れた。
龍王の娘は江の助にある物を差し出した。それは、
「江の助さん、これを飲んで下さい」
龍王の娘はその盃に酒を注ぎ、江の助に渡した。江の助は不審に思いながらも、その酒を飲んだ。すると体が若返り、若者の姿に戻った。
「
龍王の娘は若返った江の助を連れて、
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