黒板の文字の謎とふたつの恋模様
陸 なるみ
第1話 黒板に現れた四文字
先生は毎日、前の黒板にチョークで説明を書き、生徒はノートに板書する。教室の後ろにも黒板があって、そこにはその月の行事や連絡事項が書いてあったと思う。
文化祭の前だったから二学期だったんだろう。ある朝、後ろの黒板の片隅に
相反志有
と書かれていた。
「何だ、これ?」
男子も女子も教室の後ろでワイワイと謎の四文字を眺めた。登校してくる生徒が次々とその輪に加わり、朝の
「どうした、何かあったかー?」
社会科担当で、三十才過ぎていても兄のように話しやすいと人気の先生は、クラスを見廻した。前日の学級会で文化祭の出し物を話し合ったが案は三つ、賛否両論紛糾し、結論は出なかった。のん気そうに見せてはいても、クラモトも内心気にしていると圭子には感じられた。
提案のあった出し物のそれぞれは
というものだ。
反町案にある馬場君とは、
「声変わりに歌なんかうたえるかよ」というのが大半の理由だ。
富田誠一は子供っぽくはないが、急いで大人になりたがっているようで不良っぽく、暴走族の先輩に憧れているとのウワサだ。何でもカッコ良く決めたい、らしい。
植村健史は優等生を絵に描いたような男子で、秀才だから一応彼の意見は聞いておいたほうがいいかなという雰囲気がクラス中にある。
「教室発表にしようよ、書いて張っとけばいいんだからさ。歌や踊りの練習したくない人多いんじゃない?」
と無気力発言だ。家庭教師か塾にでも行っているのか、忙しいのだろうと圭子は危ぶんでしまう。
クラモトが後ろの黒板の四文字を見つけ近づいて行った。
「
先生がふと四人の女子の名を呼んだ。
「うーん、みんな可愛いよな。うちのクラスは美人揃いだ」
「何それ?」
「ダセェ、オヤジ発言」
教室のあちこちに声がする。
名前を呼ばれた女子は圭子も含めて真っ赤になった。
「何だ、クラスの女子の人気投票でもしたんじゃないのか? その頭文字だろ」
「バカー!」
女子が騒ぐ中、植村が
「うわぁ、それ問題発言。教師がそんなこと言っちゃあ」
と突っ込んだ。
「そうか? みんな美人だと言って悪いか? じゃあ植村はこの四文字、何だと思うんだ?」
「
「おう、それはカッコいいな、取りあえずそういうことにしとくか」
皆は
「てきとー」
と笑いながら植村の説明に「さすがだな」と頷いたりしていた。
「消しとくぞー」
四文字を黒板消しが
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