第286話
目覚めると二人の話し声が外から聞こえた。少し眠かったが、様子が気になり僕は階段を降りた。
「おはようございます…」
「ああ…おはよう…」
「…よく眠れた?」
「いっ、いや…実はあんまり…。…どうかしたんですか?」
「いや…なにか…侵入されたみたいでな…」
「痕跡も消されていて…よくわからないの…」
「ああ…。多分…知り合いです…。ちょっとお願いすることがあって…」
僕がそう言うと、険しい顔をした二人は胸に手を置いて安堵していた。
「そうか…それならいい…」
「なにをお願いしたの?」
「いっ、いや…まあ…大した事じゃないんですけど…。ところで…その…クリアしたら…僕はここに戻ってくるんですか?」
「いや…多分…違う出口からでるんじゃないのか…」
「私もそう思うわ…。でも…それが…どうしたの?」
「じゃあ…最後にお礼を言っときます…。えっと…今まで…ありがとうございました…」
「よく頑張ったな…。頑張れよ…」
「私も昔を思い出せて楽しかったわ…。頑張ってね…」
僕はいらない一言を付け加える事にした。本当は多分必要ないだろう。意味のないことだろう。それでも、僕は伝えることにした。
「じゃあ…もう一言だけ…。以前…教えてもらいましたけど…ここは僕の想像と僕の中にある記憶が入り混じっている場所なんですよね?」
「多分な…」
「それがどうかしたの?」
「僕は信じてますよ…。喧嘩する事もあると思いますけど、本当は二人が素敵な家庭を気付けてるって…」
「それなら、心配するな…!」
「…もうっ! 準備はいいわね?」
「はい…! …いってきます!」
僕はこうして記憶の世界の過去に戻ったのであった。二人の予想どおりの世界かもわからない。もしかしたら、敵が強くなってるかもしれない。でも…僕はこのハードゲームを絶対にクリアする事にしたのだった。
眠い…。朝から眠い…。
そんな僕の隣には、朝っぱらからうるさいやつがいた。
「起きろー!」
「眠いから先に行ってろよ…」
行くってどこにだったかな…。確か…。
僕は布団を深くかぶった時に思い出した。僕は過去に戻った事を…。
そうか…。俺は…戻ったのか…。まずいな…。少し記憶が曖昧になってた気がする…。それに…なんだ…? なにか…変な音がする…。一体…なんの……。
「ファイヤーボールあんどウォーターボール!!」
「だから、眠いから…先にいっ…熱っ冷っ!」
……そうか…。この人は昔っからこうだったのか…。
僕は起き上がり、子供の頃のユリスさんを見て地獄の修行を思い出していた。本当にバカかと言いたくなる…。僕は自分の寝ていたベッドとパジャマが一瞬にしてダメになった事を理解した。焦げてベチョベチョになっているのだ。
「もう…一発…」
「おきましたよ! おきればいいんだろ!?」
本当に容赦がない…。この人は…。でも…本当にラスボスに会えるのかな…。
僕は着替えた後、下に降りて子供の頃のユリスさんと話をした。どうやら、この町に病院を作る為にお金を稼ぎたいらしい…。
「……」
なるほどな…。そういえば…そんな事がおとぎ話に書いてあったな…。理由は少し違ってたけど…。脚色されてるのかもしれないな…。でも、ユリスさんは将来…お医者さんになってるし……。いや…あれは…想像の世界なのか…?
「…ねえ、聞いてるの?」
「あっ、ああ…」
確か…おとぎ話だと…お金を稼ぐ為にギルドを作るだったんだよな…。
「…ダイコンとかいう町だっけ?」
「ダイコンじゃなくて、ダイオンよ!」
「ごめん、ごめん…。そうだった…。でも…よく両親を説得できたね…」
普通、こんな子が男と一緒に旅にでようとしたら両親はものすごく反対すると思うんだけどな…。それとも…主人公はものすごく強くて…誠実で…信頼されてるのか…?
「……その件については……」
「…まさか、両親にいってないの?」
彼女は、急に耳をさわりだした。彼女は何かを隠しているようだった。
「いったわよ…。ただ……」
「……ただ?」
「…人間知らないほうがいいこともあると思うの」
僕は少し真面目な顔をして問い詰めた。もしかしたら、実はここでユリスさんとお別れって可能性も十分ある。
「正直に言わないなら……」
「わかった。わかったわよ…」
真相は、こうだった。
僕がある日彼女に告白をした。大好きだ、結婚してほしいと…。だが、僕には夢がある。君を産んでくれた両親とこの町に恩返しがしたい。その為には、ギルドを作りお金を稼いで病院を作りたい。
でも、ギルドを作るには最低二人いる…。君はそばで見ているだけでいい。危険なミッションはしない。大丈夫だ…! 僕には、先祖から受け継いだ宝の地図がある…。この宝の地図はギルド許可書がないと入れない場所だ。そこの宝さえゲットしたらギルドは引退する。
二年後、結婚しようと……。
「なにこの設定……。誰だよこいつは…」
彼女は、うつむいたまま紅茶をスプーンでかき混ぜていた。僕は、二回テーブルを人差し指で叩いた。
「さてと…」
「…どこ行くの? まさか……」
「…えっ? …行くんだろ、ダイオンに?」
まっ…最悪…全部俺がやればいいか…。
「…えっ、ええっ!」
「……でも、少し時間をくれないか…? 十分くらいで帰ってくるから…。ユリスさ…ユリスも準備して待っててくれ…」
「うん…!」
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