第287話
僕はユリスさんに少し待ってもらい、とある実験をすることにした。他の人の家の玄関の扉を何件もノックして開けてみたのだ。
…開かないか……。
「……なるほどな…」
この町には開く扉と開かない扉がある。開く扉の共通点はこの主人公と知り合いだということだ。逆に開かない扉は主人公と接点が全くないというわけでもない…。僕は試しにその家の住人達と会話をしてみたが、挨拶程度の会話だけで同じ事の繰り返しのような話ばかりだった。そう…まるで…ゲームのキャラクター…。NPCのようだった。
「…少し…わかってきたぞ……」
この結果から推測すると主人公…僕の前世達の記憶に残っていれば入れるということなのだろう。つまり、この世界は本当にゲームのような世界ではなく、ゲームそのものだと思った方がいいのかもしれない。
「だとしたら…下手にルート外に行くと…危険な気がするな…」
僕は開かない扉のドアノブから手を離した。この扉は恐らく無理にこじ開ければ開く気もする。ただ…僕の直感だが、ゲームのバグ技を使う前のような嫌な予感がした。ゲームで本来いけない所にいくと、クリアする事もできなくなる…。ゲームが止まったり…後はここまでの全てのセーブデータ…僕自身のセーブデータも消える…。そんな気がした…。
まっ…少し気になるが…。妙な事せずに…ストーリー通りに最速でクリアすれば問題ないか……。
「……よしっ…ゲームスタートだ!」
僕の心配をよそに物語はドンドンと進んでいった。色んな人と出会い…新たな力を手に入れて…僕は成長していった。そして…僕はラスボスと出会う…。このおとぎ話はラスボスを倒すまで終わらない…。だから、僕はあえて何度も挑戦した。ギリギリのラインを常に維持して…まるで綱渡りのように…巨神と僕は戦い続けた。その頃には悪魔のスキルも使えるようになり、僕は完全に圧倒するまでに成長していた。
「…っ! …これで…ゲームクリアだぁああ!」
「……ガァアアアア!」
僕は倒れた巨人からユリスと共に飛び降りると、ユリスが話しだした。ユリスの顔を見ると、まるで操られていた時の表情になっていた。
「…大丈夫か、ユリス!?」
「…全く…貴方には呆れますね……。私を倒してしまうとは…」
「スッ、ステータスか…! 驚かすなよ…全く…。…ん? …もしかして…途中から変わってなかったか!?」
「…ふふっ…バレましたか」
「…通りで急に強くなったと思ったよ……。なんか…形態変化もするし……。聞いたこともない巨神達もでてくるし…」
僕は数々の巨神が消えていくのを振り返って見ていると、ステータスは寂しそうな顔をしていた。
「さて…貴方に重大な話をしなければなりません…」
「それよりも聞いてくれよ! あいつ等を倒す方法を…」
「…その力は持って変える事ができません」
「…わかったん………だ? ………いっ、いま…なんて…?」
「この世界は夢の世界…。夢の更に夢の世界…。夢の中でいくら力を手に入れても持ち帰ることはできません…」
「そっ、そんなぁ……」
この力があれば…あいつ等を倒せるかもしれないのに…。
「ですが…全くの無駄ではありません…。記憶だけは持ち帰る事ができます…。少し…強引にですが…」
「…そっ、それで?」
ステータスはありえないような物を出して、神様からもらったバックにそれを入れたあと、僕の体に装備した。
「ええ…。その為に私がきたのですから…。さて…まずは、空間を開きます…。貴方はそこを通り…元の空間に戻ってください…。私がナビゲートします…」
ステータスが呪文を唱えると円柱状の白い輝きをした光が現れた。
「…わかったよ……」
「……君達は一体…?」
僕はステータスと話してると、過去の勇者が話しかけてきた。
……完全に忘れてた…。
「わっ、悪いな…。お前の出番奪っちまって…」
「そんな事はいい…。…今のはどういうことなんだ?」
「まっ…俺がこの世界にもう一度くるってことだよ…。……勇者…」
「なにをいってるんだ…。勇者は君達の方じゃないか…」
「まっ…時期にわかるさ…。お前とのバトル…なかなか楽しかったぜ…」
「…おっ、おい!」
「…じゃあな…勇者……。…未来で会おうぜ!」
僕は挨拶をすませたあとに輝く光の中に入った。そこは白いトンネルのような場所だった。
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