第260話
「くそっ…。また…ふり出しに戻された気分だ…。…ん?」
僕はベッドの中に妙な感触を感じた。なにか毛玉のようなものがピクピクと動いていたのだ。
…もしかして…こっちの世界にきてるのか?
「おいっ! さっきの話の続きを…! ……ノスク?」
僕が布団をバッと取ると、青い剣を抱きかかえてプルプルと震えていた。
「ごめん…。怖くて眠れないんだ…」
「…それで俺の布団に…?」
「うん…」
「そっか…」
そりゃ…そうだよな…。俺は死んでも、もしかしたら一パーセントぐらいの確率で生き返れるかもしれない…。でも…みんなは…。
「でっ、でも、頑張るよ…。僕だって…」
「少し…外の風に当たらないか?」
「…えっ? いいけど…」
僕はカーテンを開けてベランダにでると、心地のいい風が入ってきた。
「いい風だな…」
「うん…」
「ノスク…前に世界を救った勇者の話をしたよな……」
「…うん……」
僕が手すりに寄りかかると、ノスクも背伸びをして寄りかかった。
「…勇者なんて…なるもんじゃないな……」
「…かもしれないね……」
「…はぁ……」
どうするかな…。
「…ねぇ…アル…?」
「…ん?」
「…僕達はこれからどこにいけばいいのかな……」
「…それは……」
考えは変わっていない…。最速で勇者の祭壇へいくのがいいとは思う…。でも、あの話が本当なら僕は悪魔に…。そもそも…行き方だってわからない…。いや…それよりも…。なんて答えたらいいんだ…。
「……二人でいると…あの時のこと思い出すね………」
「…えっ!? ああ…そうだな…。あの時から色々あったよな…」
「僕は立派なパラディンを目指してたけど全然ダメだったよ…。はははっ…」
「そんなことないよ…。ノスクは十分立派な…」
ノスクの顔が青い剣に映っている姿をみて、僕はふと疑問が浮かんだ。
「…どうしたの?」
「…ちょっとその剣かしてくれないか?」
「いいけど…」
…なんで…この剣は二つあったんだ? いや…それだけじゃない…。鑑定眼もだ…。
僕はノスクの青い剣をもって考えていると、青いその剣は僕の心に訴えかけているようだった。
「…まさか…扉は二つある?」
「…えっ?」
「いや…」
だからなんだ…。そんなことがわかったからって…どこにあるかわからないじゃないか…。ヒントがあるならまだしも…。そんな場所……。
「…どうしたの?」
「…ノスク! 今からいけるか!?」
僕はノスクに剣を返して、肩を思いっきり揺さぶった。
「…どっ、どこに!?」
「ネズミの王の墓の最深部だ!」
「あっ、あんなとこにいってどうするんだよ!? あそこにはほんとになにもなかったよ」
「いいから早くいくんだ!」
「わっ、わかったよ!」
僕達はネズミの墓場の最深部に向かった。到着してノスクの青い剣の光が消えると、辺りは暗くなり埃っぽい匂いが少しした。
「これは…なにもない…」
僕は灯りをつけると、そこは大きな広間になっていて確かにノスクの言うとおりなにもなかった。
「…ねっ? なにもないでしょ…。じゃあ、帰るよ…」
「いや…ノスク…おかしい…」
「…えっ?」
「なにもなさすぎる…」
「それは…そうだけど…。ちょっ、ちょっと…!?」
僕は近くの松明に火を灯して、辺りを探索した。
「ここが…本当に最深部なのか? 間違いじゃなくて…」
「間違いないよ…。ここまで一本道なんだよ…」
僕はこの部屋にゲーマーとして違和感を感じていた。
もし、ここに剣の台座があったら、この部屋の存在もわからないこともない…。だけど、本当になにもないって…。まさか…ここにも落とし穴が…。
「ノスク…少し部屋を出てくれ…」
「うっ、うん…」
「よし…でたな…。……ラタトスク、発動!」
ノスクは部屋をでたのを確認してラタトスクを発動したが、僕には何の異変も起きなかった。そして、床が抜けることもなく、僕はフロアの中心に立ち尽くしていた。
「なにも…起きないね…」
僕はラタトスクの発動を解いて、もう一度部屋の隅々までなにか仕掛けがないか探した。
「なにもない…。おかしいだろ…。この最深部になにもないってことはない…」
「そうかもしれないけど…」
「くそっ…暑い…。…ん?」
僕は壁を触ると妙な感触を感じた。なんだ…ザラつきを感じる…。…ヒビ?
「…どうしたの?」
俺が…あの時イメージしたのはパズルのように欠けた箇所を戻しただけ…。割と壊れてたから、よく覚えてる…。最深部だけは全く壊れてなかった事を…。なら…このヒビの正体は…。
「…ノスク、この壁に水をぶちまけてくれ。…俺は床に水をかける!」
「…みっ、水を!? いいけど…。怒られたら一緒に謝ってよ…」
「ああ、わかってるって!」
僕は魔法で水を発生させてあてていった。すると、あるものが床に現れた。
「…これは…ラタトスク?」
「…こっちは…ウィンディーネ…。反対側もだね…」
「ノスク、次は天井だ…。俺は入口側を…」
「うっ、うん…。…わかった!」
僕が入口側を削ると青き剣を持った猫らしきものが現れた。
「ノスク、そっちは…! こいつは…」
天井には妙な神殿らしきものと勇者らしき人間が立っていた。
もしかして、これが…勇者の祭壇…。
「あと一つだな…」
「うん…」
さあ…なにがでるか…。
僕はジャブジャブと膝まで使った足を引きずってノスクのところに移動して、最後の壁に水魔法を当てると驚くべきものが現れた。
「これは…世界地図…」
「…だね……」
「ノスク…。なにか印がないか探すんだ!」
「うっ、うん!」
僕達はなにか手がかりがないか必死に探したが、なにもそれらしいものは見つからなかった。
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