第258話
「あとは…シャドウに聞いてみるしかないか…。よっと…」
僕はベッドから起き上がり、右手の鎖を外してあの大理石の空間に移動した。
「おーい…シャドウ…! …いないみたいだな……」
僕は異空間で何度も呼んだが、そこにはシャドウの姿はなかった。
なにかわかるかと思ったのに…。でも…いないってことは…。もう…。
「…ワンッ!」
僕はシャドウがもう消えてしまったのかもしれないと思っていると、足元に二匹の白い犬が駆け寄ってきていた。
「よしよし…。…モフオにモフコ…元気だったか? …なんだ、これ?」
モフオは小さな宝箱を口に加えて持ってきた。僕はそれを手に取り、モフオの頭をなでてやった。
「…宝箱か……」
僕は座ってそれを眺めていると、モフコは膝の上に乗ってきた。
いかにも僕好みのデザインだな…。開けてみるか…。
「…その名前はやだよ……」
「同感ね…」
「…ん?」
なにか今…声がしたような…。
僕は辺りを見渡したが誰もいなかった。僕は気を取り直して開けようとしたら、目の前にいたモフオとモフコから声がした。
「僕の名前はハティ…」
「私の名前はスコール…」
「…モフオとモフコがしゃべった!? …あっ!?」
僕が驚いて宝箱を投げだすと、モフオはワンワンと困ったように僕に鳴いてきた。モフコは膝の上に乗ったまま全く動じていなかった。
「モフオとモフコがしゃべったと思ったら、気のせいか…。悪い…。それとってくれるか…」
僕はモフコを膝の上からおろして、立ち上がった。モフオは僕の言うことを聞いて落ちた宝箱をもってきてくれた。
「はい…どうぞ…」
「ありが…」
しゃべったよな…。疲れてるのか…。それとも…シャドウがふざけてるのか?
「モフオ…モフコ…お手…!」
二匹の犬は僕の右手と左手にかわいい手を乗せた。モフコはなんとなく嫌そうな顔をしていたが…。
「なるほど…。じゃあ、お座り! …伏せ!」
なるほど…これもできるか…。でも、こんな芸…誰が仕込んだんだ…。もっと…マニアックなやつやってみるか…。
「うーん…。ちん…」
僕がそれを言おうとすると、モフコがジャンプして僕の顎を撃ち抜いた。あまり痛くなかったが…。僕がダウンしていると、モフコは僕の上に乗ってきた。
「どちらが上か決める必要があるようね…」
「やっ、やっぱり、喋ってる…!?」
いや、まぁ…そんなに驚くような事でもないか…。ノスクだって喋ってるし…。
僕はファンタジー耐性が上がってることに気がついると、モフコは僕の喉元をペロッとなめた。
「あまり調子にのると噛み切るわよ…」
「ごっ、ごめん…。ちんちんはやりすぎた…」
…ん?
なぜかモフコは急にちんちんを見せつけてきた。目の色が段々と変わり、怒っているのがわかる。僕はすぐにモフコを体から降ろした。
「やっ、やってくれたわね…。ぶっ殺してやる!」
「ごっ、ごめん…。わざとじゃ…。まっ、まって! …ん?」
僕を襲おうとしていたモフコはプルプルと足が震えたまま立っていた。
もしかして…僕の命令には逆らえないのかもしれない…。
「こっ、殺してやる…」
「えっと…」
僕はモフコを手に取り、体中をマッサージしてやった。
「やっ、やめろぉ〜! こんなことで私が…。堕ちるとでも…」
「ここなんて…どうかな…」
「ぐっ…!」
僕はお腹を優しく撫でてやると静かになった。
「ごめんって…。許してくれよ…。…なっ?」
「……つっ、次は許さんからな…」
「…はい……」
僕は機嫌が治るまでしばらくモフコを撫でていると、モフオがワンワンと吠えていた。
「…ん? …モフオは話せないのか?」
「あんたが触れれば会話できるわよ…。…っていうか、あんたのせいでずっと動けないで待ってるわよ」
「ごっ、ごめん…。よし…!」
モフオは疲れ切った顔をして近より、僕の膝に手を乗せてきた。
「全く…ご主人には驚かされるよ…」
「ごめん…。でも、君達は一体…」
「私達は彼の中にいたスキルだったもの…」
「僕達は君を一つの存在にするはずだったもの…」
「…はず?」
…どういう意味だ?
「私達はもう本来のスキルではなくなった…。継承の失敗により…」
「僕達は新たな力を継承するスキルとなった…。君の力により…」
継承の失敗…。…俺の力?
僕は右手に巻かれたひび割れた鎖をみて、思いだした。
「…あの矢がこの鎖に当たったからか?」
「私達や彼にとってもこれは予想外…」
「僕達も彼も知らない…。君だけの新たなスキル…。ただし、効果は消えたわけでもない…」
よくわからないな…。
「…あいつはなにがしたかったんだ?」
「私達とあなたを精霊と統合する為に…」
「僕達と君を次の次元に進ませる為に…」
「おいおい…。その言い方だと…すでに俺は…」
「そう…。私達は精霊を飲み込んでいる…」
「そう…。僕達は魔物を飲み込んでいる…」
僕はその言葉に驚いて次に何を聞こうか忘れてしまった。
「……」
俺が精霊達を飲み込んでいるだと…。俺が…。
「…みたい?」
「…みたい?」
「…ああ……」
僕が返事をすると、床が抜けて真っ白な空間に落ちていった。僕は落ちていることがわかるほどの力を感じていたが、不思議なことに僕は立って歩いていた。
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