第250話

「よし…みんなの所に帰るか…」

 僕は振り向いて帰ろうとすると、視界の端に誰かが立っていることに気づいた。僕は急いで体勢を戻し構えると、そいつは青白い球体のような物を手から発射した。僕はルアからもらった短剣にオーラを溜めて、その物体を叩き切ると、フォーの亡骸のところに真っ二つになって飛んでいった。

「…なんだ? …氷? お前は……」

「……」

 そこには、黒いフードを被った人物が立っていた。僕は警戒を解き、スキルの発動を停止して剣を鞘にいれた。

「ひどい挨拶だな…」

「……」

「でも…エリックやリアヌスの件、助かったよ…。もしかして、さっきフォーがフィールド魔法を発動できなかった理由って…」

「……」

 僕が話しかけていると、黒いフードを被った人物は剣を抜き斬りかかってきた。僕は不格好な体勢で神様からもらった剣を抜いて、必死にガードした。

「…っ! なっ、なにするんだ…!」

「……」

「…くっ!」

「……」

 止まらない剣の連撃は僕の頬をかすめて、僕の持っていた剣を弾き飛ばした。

「…剣がっ!? …うっ!」

 僕は蹴り飛ばされて、地面に顔をつけた。僕は両手をついて振り向くと、黒いフードを被った人物は剣を振り下ろそうとしていた。

「…しね」

「…やっ、やめろよ! …ゼロ!」

 僕が名前を呼ぶと僕の顔の寸前のところで、黒い剣が止まった。

「……」

「…ずっと…誰なんだろうって思ってた……」

「……」

「エリックを助けてくれた時、ゼロの顔が浮かんだんだ。…でも、ウルはお前の事を殺したっていってた。あいつは嘘をついてる感じもしなかった…。だから、違うと思ってた…」

「……なら…いつ、気づいた?」

 月明かりに照らされ、フードを外し仮面を投げ捨てた。聞き覚えのある声が聞こえ、そこにはゼロが立っていた。

「…さっきだよ」

「…さっき?」

「…蹴られたときさ」

「ふっ…。殴っておくべきだったな…」

「生きてて…本当によかった……」

「……」

 ゼロは無言のまま暗い表情をして、僕を見つめた後に剣を鞘に入れた。僕は心配になって、ゼロに声をかけた。

「…どうしたんだ? …ゼロ?」

「……さっきの力はあまり使うな」

「…えっ?」

「…わかったか?」

「……」

「…わかったか!?」

 ゼロは大きな声を出して、僕に同意を求めた。そして、妙な話を始めた。

「…うっ、うん」

「…勇者の祭壇にこい。奴も連れてな…」

「…一体、なんの話なの?」

 ゼロは僕の質問に答えず、横を見ていた。僕は視線の先を見ると、皆が手を振り走って僕のところに向かって来ていた。

「…おーい!」

「…アルー!」

「…大丈夫ー!」

「…無事そうだにゃー!」

「よかった…。みんなも無事だ…。ゼロも飛空艇に…。…あれ?」

 …消えた?

 僕は辺りを探したが、ゼロの姿はどこにもなかった。

「……」

 あいつ…どこに…。

 

「……どうしたんだ? …アル?」

 シオンさんが僕に声をかけてきた。

「…ゼロがいたんだ」

「…ゼロ? 見間違えじゃないのか…。あいつは…」

「生きてたんだ…。よかった…。本当に…」

「…そうか……」

 シオンさんはなぜか辛そうな表情をしていた。

「…どうしたの?」

「いっ、いや…少し疲れてしまってね…。…飛空艇に戻らないか?」

「そうだね…。戻ろう…」

 僕は飛空艇に戻りながら、シオンさんと次の目的地について話をしていた。

「…次の行き先はどうする? 一応、候補は二つあるんだが…」

「…どこなの?」

「…魔族の国と神族の国だ」

「…今はどっちも反応ないんだよね?」

「ああ…。今は…」

「うーん…。なら、近い方からいこう…」

「…となれば、神族の国だな」

「じゃあ、俺はリアヌスの治療しとくから…。操縦は任せるよ…。…そういえば、リアヌスは?」

「船の中で寝かせてある…。割と元気そうだったが…。早く戻ってやった方がいいかもしれんな…」

「そうだね…」

 僕は飛空艇にもどると、部屋の中で横になっていたリアヌスの治療を始めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る