第236話
「アル、リカバリーだよ! きっと、それなら…」
シャルは泣きそうな顔をしながら、僕の服を強く握った。
「そうだな…。…それなら!」
「…無理だって……」
僕は何度も何度もリカバリーをかけたが、ルアは元にに戻らなかった。
「どうして…」
「魂は黒騎士と共に消えたんだ…。だから、無理なんだよ…。今の状態だって…奇跡なんだぜ?」
「魂の代わりがいるのか…。なっ、なら、ドゥラスロールを発動すれば可能なはずだ」
「ダッ、ダメだ!」
「どうしてだ!?」
僕は膝をついてルアに話しかけた。ルアは下を向き答えた。
「わかった…。正直にいうよ…。俺も勇者に会ってるんだ…」
「…一体、何をされたんだ? 何をされたんだ!?」
僕はルアを揺さぶった。
「話すから落ち着けって…。勇者に復活してもらったんだよ」
「……」
やっぱり…そうだったのか…。
「勇者と約束したんだよ…。復活する代わりに…三つの約束を守れって…」
「…三つの約束?」
「まあ、難しくてあんまり話を聞いてなかったけどさ…。最後まで勇者に会ったって事を相棒に言わない事…。まぁ、これは破っちゃたけど…。…ん? 最後だからセーフなのか?」
「…残りの二つは?」
「二つ目は、相棒がドゥラスロールで復活させようとしたら拒否すること…。三つ目は……それを…理解すること…」
「そんな約束破ればいい!」
「…相棒……。ダメなんだよ…。俺がいたら…。俺っていう存在が既に危険なんだ…。俺がトリガーになる可能性がある」
「一体、どういう…」
「まっ、相棒じゃないとダメってことなんだよ…。この世界を救う主人公はさ…」
「……」
「…そうだ! …この剣…受け取ってくれないか? 多分、もうそんなに重くないとは思うんだけど…。世界を救うすっごい重要なアイテムなんだぜ」
僕が拳を強く握ると、黒く染まった短剣をルアは差し出した。僕は黒い短剣を受け取り、ルアの顔を見つめた。
「…なんなんだ? …これ?」
「それが必要になるときが、きっと…! …くると思うんだけどなぁ…。まっ、ゲーマーの勘ってやつかな!」
「ゲーマーの勘って…。すっごい重要なアイテムじゃないのかよ! …ったく、調子くるうな…。ぷっ…ははは…」
「はははっ、騙されたな! よし! ついでにもう一個やっとくか…。…よっと!」
「おっ、おい、なにする気だ!? …いででててっ!」
ルアは僕の頬を急にひねった。
「相棒、約束だ! みんながいるこの世界を救ってくれ! …いや、絶対に救うんだ! 世界を救えなかったら、もっとひねるからな!」
「わっ、わかったって! だから、そろそろ手を…」
僕はルアのつねる力が弱くなるのを感じた。
「ふんっ! …なら、許してやるか! …ありゃ? …そろそろ時間みたいだな…。よっと……」
ルアは僕から離れて、シャルに話しかけた。シャルは下をむきながら、首を横に振った。
「シャル、悪かったな…。変なお願いして…。ごめん…」
「うっ、ううん…。気にしないで…」
「その…。じゃあ…。まっ、また、今度遊んでくれるか!?」
「…あっ、当たり前だよ! また一緒に…」
シャルが言い終える前に、ルアは消えていた。僕は黙って、それを見ていた。
「……」
「……ねぇ、アル? …ルアは?」
「……」
「…わっ、わかった! 隠れんぼして遊ぶ気なんだね! そうなんでしょ!? 全く…二人で私を驚かそうと…」
「……ごめん」
「……ひっぐ…。なんにもルアは悪いことしてないのに! なんでっ、こんなことにっ…! うぅっ…」
「……ごめん」
「…私、泣がないからっ!」
「…うん」
「絶対…絶対…。…泣かないから!」
僕はシャルを優しく抱きしめた。しばらくして、僕はシャルと共に船に戻ろうとした。すると、膝の力が唐突ににガクンと抜けた。
「……」
あれ? 力が…。
「…アッ、アル!? …大丈夫!? …みっ、みんな!? …はっ、早くこっちにきて!」
僕はそこで意識を失った。そして、次に目を覚ますと僕は不可思議な空間に立っていた。
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