第237話
「…ん?」
…どこだ、ここ? 確か…。
目覚めると僕はどこかで見たことのあるような部屋の中で寝ていた。
「そうか…。あの時、倒れて連れてこられたのか…。よっと…」
僕はベットから降りて部屋をでた。部屋をでると、そこは大きな場所でお城のようだった。僕は手すりに、もたれかかりながら下を見た。
みんなどこにいったんだろ…。こんなとこでモタモタしてる場合じゃないのに…。
「…あれ? この部屋って…」
僕は振り返って部屋に帰ろうとすると、ある事に気付いた。
「ここ…。…もしかして、神族の城か?」
見れば見るほど似ている…。でも、おかしい…。微妙に作りが違う…。
「…やっと、お目覚めかい?」
「…おっ、お前はウル!? ……じゃない?」
ウルに似ているが髪型も違い、その人は大人びていた。高そうな服に身を包み、まるで…。
「…ルア君の事はすまない」
こいつ…。
「お前…勇者か…!?」
「ああ、そう…」
僕はそいつが答える前に殴りかかった。だが、思いっきり体をすり抜けて僕は天井を見上げていた。
「…くそっ!」
僕は床を思いっきり叩いた。
「…大丈夫かい?」
「よかったな…。触れられなくて…」
「そうでもない…。本当は殴られたかったのだがね…」
「…ボコボコにしてやろうか?」
「…望むところだよ。切実にね…。……話を少ししないか?」
「…ルアになにをしたんだ?」
「それを含めて話をしよう…」
僕は勇者についていき、城の外にでた。城の外にでると、城下町は人でごった返していた。ただ、おかしなことに人の声は聞こえず、体も次々にすり抜けた。なんというか、まるで幽霊だ。
「……」
…ここ…どこなんだ? 神族の城の近くにこんな街なんてなかったぞ?
「…気になるか? …ここは私の夢だ」
いや、それよりもこいつ…。
「…前も言ったはずだ。俺の心を読むな…!」
僕は勇者を睨みつけると、勇者は動じずに僕の目をジッと見ていた。
「読んではいない…。私は既にここにいないのだ…。これは君の反応…言葉…表情…。それらを元にして予測し、話しているにすぎない…」
「…それでここに連れてきた理由はなんだ?」
「…ここはなにに見える?」
「なにって…夢なんだろ? …今、言ったじゃないか?」
「ああ…。夢だ…。では、夢と現実の境にあるものはなんなんだと思う?」
僕は怒鳴り散らした。
「そんなことが聞きたいわけじゃない! ルアの事について聞きたいんだ!」
「…彼はそもそも人間ではない」
「そっ、そんなことわかってる! だからって…!」
「私もそういったことが言いたいわけではない…。あそこの噴水に座ろう…」
「おっ、おい!?」
勇者はスタスタと歩き、噴水に座った。僕は戸惑ったが、しぶしぶ横に座った。
「…話を少し戻すが、夢と現実の境はなんだ?」
「…触れられないか、触れられるかだ」
「そう…。…だが、それを夢の中の住人である君が認識できるのかな?」
「…どういう意味だ?」
「その水に触れてみなさい」
僕は噴水に手を触れると、冷たい柔らかな感触がした。
「…えっ? なんで触れるんだ? まさかっ…」
いや、違う…。ここはやっぱり違う…。
「…ここは現実か?」
「そんなことはどうでもいい…! これで…お前を! …くらえ! …えっ? ちょっ、まずい!? おっとっと…」
僕は噴水の中に入り、ビショビショに濡れた。
「君がそれをそう認識しているから、現実とはかわらない…。そう…。…今の君のようにね?」
「……」
僕は起き上がると、花を持った女の子が近づいてきた。少しだけ、アリスに似ている。
「…大丈夫ですか?」
「ああ…。ありがとう…。…えっ?」
さっきまで何も聞こえなかったのに、声が次々と聞こえてきた。本当の街にいるようだ。
「…ずぶ濡れですね」
「まっ、まあ…」
「タオル入りますか?」
「ああ、ありがとう…」
僕はそれを受け取り、顔を拭いた。
「お花いりませんか?」
「えっ、じゃあ? 一本だけ…」
僕は小さなオレンジ色の花をとり、胸ポケットの中に入れた。すると、アリス似の女の子は僕の顔をジッと見ていた。
…ん? なんだ?
「……」
「えっと、何か用?」
「お金…」
「ああっ、ごめん…。お金は…」
僕はポケットの中を漁って、コインを出した。すると、女の子は怒りだした。
「ありがとうござい…。…なんですか、このコイン!? こんな偽物で私が騙せると思っていたんですか!? お花返して下さい! タオルも!」
「ええっ…。ごめん…。じゃあ、はい…」
僕が返そうとすると、隣にいた勇者がコインを取り出して支払った。
「彼は外から来たんだ…。許してやってくれ…」
「まっ、まあ…。お金、払ってもらえれば…」
彼女はお金を受け取ると、どこかへ消えてしまった。
「……」
なんだ…。この世界…。まるで…。
「まるで、本当に現実のようだ…。…そう思ったね? でも、ここは現実ではない…。ただ、夢の中の住人では気付けない…。人は夢を見るとき、現実との境目などなくなるのだ。ここを夢と認識しなければね…」
「…現実の記憶ってことか?」
「そう…。…夢を自覚するには現実の記憶が必要になる」
「……それがルアとなんの関係があるんだ?」
僕が勇者に尋ねると、景色は一瞬で代わり空の上に立っていた。そして、場面は急に変化して今度は海に…。次は山脈…。僕はまるで映画の中にいるような気分になった。
「…彼は君の力の根源に近いところから生まれた。だからこそ、君よりもそれに近づけるかもしれない…。それをウルに接触されれば、どの未来も終わりだった…」
なんか…質問に答えてない気もするけど…。
「要するに俺とルアが繋がっていたから、あんたの力で蘇らせらせたってことか…」
「そういう事だ…。本当にすまない…」
「…わかったよ。俺にはお前を叱る資格なんてないしな…。…ん? …あれ、花が?」
「…枯れたか……。…そろそろ時間のようだな」
僕の胸ポケットに指した花が急に枯れ始め、落ちた花びらを手に取った。すると、どこからともなく現れた暗闇と輝きが拮抗する不思議な空間に僕は落ちていった。
「おっ、おい!? なんなんだこれ!?」
「夢から覚める時がきたのだ…。私自身も時期に消えるだろう…。最後に一言伝えておく…。スキルの意味は他の誰でもない君自身が決めるんだ…。それがこの戦いを決めるだろう…」
「おっ、おい、今のどういう意味だ!? スキルってディナイアルグローリーの事か!?」
「いや、それは既に決まっている…。破滅の力だ…」
「破滅の力って!? おっ、おい!?」
「最後のスキルとはヘイズ…」
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