第231話
「……」
「アル…」
「シオンさん…。ごめん…。敵を助けるようなことして…」
「君ならそうすると思ってたよ…。残念だったな…」
「…っ!」
僕は拳を握りしめていると、ノスクとアリスの声が聞こえた。
「…あれ? また、戻ったにゃ?」
「アル、私も戻ったんだけど…」
「私も戻ってるな…」
力が不安定みたいだな…。でも、必要な時には変身するみたいだし…。…まるで、コントロールされてるみたいだ。…もしかして、ステータスがなにかしてるのか?
「…いえ、私はなにもしていません」
「そうか…。なら…。…って、なっ、なんだ、あれ!?」
空中に大きな鎖が突如現れた。どうやら、地表の中にも入りこんでいるようだ。
「君もみえるようになったのか?」
「ああ…。…これなんなんだ? 二人は見えないのか?」
「みえないにゃ…」
「みえないけど…」
まぁいいか…。今はそんなこと考えてる場合じゃない…。
「シオンさん、次はどこにいけばいい?」
「反応が強いのは…コビットの国だな…」
「了解…。…ノスク、コビットの国に移動してくれ」
「わかったにゃ!」
僕達はノスクにコビット城の近くまで連れてきてもらったが、ここもいつもと変わらず平和そうだった。
「ついたけど…。鎖もみえないし、ここじゃないのかな…」
僕は空を見上げたが、それらしいものはなかった。
「いや、私にはみえるぞ…」
「えっ? どこに?」
「どこって…。…目の前にあるだろ? 触ることはできないみたいだな…」
シオンさんは僕には見えない鎖に触れようとしていた。
「みえないな…」
…なんか条件があるのか?
「うーん…。…とりあえず、城にいってみないか? シャル様が心配だ」
「そうだな…」
僕達が城に入ろうとすると、シャルは駆け寄ってきた。ケガはないようだが、シャルはしょんぼりしていた。
「アル…」
「よかった…。とりあえず、ケガはなさそうで安心したよ」
「うっ、うん…」
僕は辺りをみてルアを探したが、どこにもいなかった。
「…ところで、ルアはどこなんだ?」
「……」
シャルは下を向いて、なぜかなにも話そうとしなかった。僕はしゃがみ込んでシャルにもう一度話しかけた。
「シャル…。もうあんまり時間がないかもしれないんだ…。頼む…。なにか知ってたら教えてくれ…」
「…うん。ルアは…」
「…おいっ、アル! 上を見ろ! 妙な魔物が現れた!」
「なにっ!?」
ただ事ではないようなシオンさんの声を聞き、僕は上を向いた。そこには女の魔人と同じく、いるはずのないものがいた。
…黒騎士? こいつも復活したのか…。
黒騎士は人差し指をクイッとやると、どこかへ飛んでいった。
「おっ、おいっ! くそっ…。…フレースヴェルグ、発動! シオンさん、後からきてくれ! 」
…ん? …なんだ? 前より、体が重い…。…連発したからか? まっ、気にしてる場合じゃないか…。
僕は下にいる皆が手を降って応援しているのをみて、片手をあげて応えた後に黒騎士を追った。
「…どこにいった?」
見失った…。でも、妙な方向に木が倒れてる…。…ってことは、この方向にいけばいいのか?
「…あっちじゃないかな? 木が倒れてるし…。なんか、アルと初めて会った時みたいだね」
「確かにな…。…って、なんで、シャルが背中に乗ってるんだ!?」
「あっ、暴れないで! 落ちちゃうよ!」
シャルはいつの間にか僕の背中に乗っていたようだった。
そうか…。さっき、手を降っていたのはこういうことだったのか…。
「はぁ…。シャル、ふざけてる場合じゃないんだ! おり…」
ここで降ろしたら危険かもしれない…。かといって戻ってる暇もないし…。
「ふざけてるわけじゃないよ! ねぇ、アル…。私も連れてって!」
「…ダッ、ダメだ!」
「お願い…。アルには言わないといけないことがあるの…」
「…言わないといけないこと?」
「それに私には鑑定眼のスキルがあるんだよ? もっ、もし、撹乱されたら私が必要なんだよ!」
「うーん…」
確かにな…。
「それに精霊の力だって、使えるよ!」
「うっ、うーん…」
「そっ、それに…!」
「わかったよ…。…でも、危なかったら逃げろよ」
「うっ、うん…。大丈夫だよ…」
僕は再び飛空を開始して、木々の倒れてる方向へ向かった。
「シャル…。あんな建物…なかったよな?」
まるでゲームにでてくるような円柱状の城が見えた。
「うん…」
「じゃあ、あれか…。…シャル、準備はいいか?」
「まっ、待って…。言わないといけないことがあるの…」
「なんだ? なにも話さないから、てっきり嘘だと思ってたよ…。それで、なんなんだ?」
「……」
僕が問いかけると、シャルは黙り込んだ。どうも様子がおかしい。
「シャル…。…さっきから変だぞ? …一体、なにを話したいんだ?」
「うん…。実は…」
僕はシャルの話を聞いたあと、城の屋上に着地した。屋上には大きな剣を持った黒騎士が立っていた。
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