第223話

「いこう! ウル!」

「…ああ!」

 数週間前、僕は奇跡とも呼べるような出会いをした。僕がエルフのお城を散歩していると、神王国にいた頃に仲の良かった友達…。いや、親友がいたのだ。

 

『…やあ? …僕の事、覚えてる?』

『…君は?』

『…僕だよ? …思い出せないかい? …アル?』

『……』

 僕も初めは思い出せなかったが、話していく内に段々と思い出していった。まさか、ウルがあの戦争を生き抜いていたなんて思いもしなかったけど…。

 

「いや〜。なかなか今回のクエストは疲れたよ」

「そうだね…。でも、君とならなんでもクリアできるよ」

「ああ…。なんか…喉が乾いたな…。コーラでも飲む?」

 僕はバッグからコーラを取り出そうとすると、ウルはカフェを指差した。

「僕はそのジュース苦手なんだ。それよりも、少しなにか食べていかないかい? お昼には少し早いけどね」

「うーん…。…そうだな。…食べに行こう!」

 僕達は席に座り、いくつか注文してご飯を食べた。僕がお腹をポンポンと叩いていると、ウルは妙な質問をしてきた。

「…アル?」

「…ん?」

 ウルはネックレスを外して、僕に手渡してきた。

「…これをみて、なにか感じないかい?」

 ネックレスには銀色の指輪がついていた。僕はそれをじっくりと見てみたが、特に変わりはなかった。

「なんもないと思うけど…」

「そう…」

 僕はネックレスをウルに返した。

「…どうかしたの?」

「いや…。少し気になることがあってね…。…気になることといえば、君のネックレスをみせてくれないかい?」

「うーん…。いいけど…」

 僕は胸の中からネックレスを取り出して、ウルに見せた。ウルがそれを触ると、白く強い光がペンダントを覆った。

「…なるほど……」

 ウルはしばらく握った後、僕にネックレスを返した。

「…壊してないよな?」

「はははっ…。壊せるものじゃないよ…。それは…」

「ならいいけど…」

 ウルはなぜか痛そうな顔をした後、コップを手に取った。僕は不思議に思いながらネックレスを首にかけると、妙な質問をまたしてきた。

「…ねぇ、アル? 君が今…一番欲しいものはなんだい?」

「うーん…。一番欲しいものか…」

「…なんでもいいよ…」

 なにかあるかな…。…お金? …地位? …名誉? …それとも可愛い女の子?

「…特にないかな」

「…なるほどね」

「…ウルはなにがほしいの?」

 僕が質問すると、ウルは不敵な笑みを浮かべた。

「…永遠の命……。つい、最近まではね…」

「また、すごいものを欲しがるな…。…今はなんなんだ?」

「…君かな?」

「…俺、男だからな!」

「はははっ、冗談だよ。本当は…。…ん? 誰かきたようだな…」

 僕が振り返ると汗を垂らしながら、シオンさんが走ってきていた。

「シオンさん? どうしたの?」

「はぁ…はぁ…。ちょうどいい…。二人とも、教会にきてくれ! シルフィー様が目覚めたそうなんだ!」

「シルフィーが!?」

「…私は先にいってるぞ!」

 シオンさんはものすごいスピードで街中を走っていった。僕達も支払いを済ませた後、急いでその場に向かった。

 

「はぁ…はぁ…。やっと、ついたぞ…」

「…そうだね」

 教会につくと鍵はかけられていなかったが、中には司祭様やシスター達はいないようだった。どこかへ買い物にでもいっているのかもしれない。僕達は静かな教会の中を歩き、シルフィーのいる部屋へ向かうとシオンさんが扉の前に立っていた。

「二人とも…」

「シオンさん、まだ入ってなかったの?」

「ああ…。なんだか、不安になってきてね…。私の事、覚えてくれてるかな…」

「大丈夫だって…。おい、シルフィ…」

 僕は笑いながらシオンさんの手を引いて、部屋の中に入った。…その時だった。強烈な爆風が辺りの壁を粉々に壊し、僕達の後ろに立っていたウルの上半身を吹き飛ばしたのだ。

「ウッ、ウル!?」

「…あなた達、逃げるわよ!」

「シルフィー!?」

「シルフィー様!?」

 辺りの空間が急に歪んだかと思うと、次の瞬間には草原に立っていた。シルフィーは息を切らせながら胸を抑えていた。

「はぁ…はぁ…」

「シルフィー! 今のはいったい…」

「私が…私がやったのよ…」

 シルフィーが…。

「なんでそんなこと!?」

「シルフィー様…。一体、どうして!」

「はぁ…はぁ…。あなた達! いい加減に目を覚ましなさい!」

「おっ、おい!」

 シルフィーはなぜか僕達の体に触れて、リカバリーを発動した。すると、僕は悪夢から覚めるように次々と記憶を思い出していった。

「俺は…一体…」

「うっ…。私は…」

「戻ってよかった…。…あれ? …ここはどこなの!?」

「どこって…。シルフィーが空間移動で連れてきたんじゃ…」

 シルフィーは辺りの景色を不安そうにみていた。

「…私はこんな景色知らない……」

 僕はシルフィーから視線をずらすと、ステータス画面が勝手に開いた。あの音楽が鳴り響いていた。

 …ん? これは…。

「リカバリーフォー…。発動…」

「今の声!?」

 驚くべき事に目の前に半身だけの人間が現れた。そして、段々とそれは回復していき、元の人間の姿に戻っていった。

「ふぅ…。はははっ…。…久しぶりにダメージを受けたよ」

 

 

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