第177話
僕はオーク達の姿が見えなくなると、空中を飛ぶのをやめて地面に足をつけた。
「……」
よっ、よかった…。でも…さっきは危なかった…。気をつけて進もう…。
僕は一安心した後、気を引き締めて扉の奥へ進んだ。
「……」
…でも、あいつさっきなにをいいかけたんだ? それにって…。…まだ、なにかあるのか? トラップが…。…ん? 広間についたようだな…。
そこは青い絨毯が敷きつめられ、不気味な形のランプが辺りを照らしていた。あたりにはチラホラと魔物が歩いている。
「……」
なるほど…。魔王城というだけあってなかなかの迫力だ。…あれ? そういえば、ネズミはどこにいった? まさか、捕まったのか!? まずいぞ! 早く見つけないと!
辺りを注視しながらみたが、特にはそんな様子ではなかった。というか、みんな気力がないというか…。目が死んでいるというか…。
「……」
…ん? …なんだ、この映像? それにこのマップは…。
目を凝らしていると、ステータス画面に妙な映像が浮かび上がってきた。
「……」
まさか、ネズミのいる位置が…。なんていい機能なんだ…。ステータス有能だな…。
そんな事を思っているとメッセージがフワッと浮かび上がった。
〈ありがとうございます〉
「……」
…もしかして、心の声が聞こえているのか? おっ、おい! ステータス!
〈はい…〉
「……」
なるほど…。そういう機能もあるのか…。ところで、ステータス…。この点滅しているとこに行けばいいのか?
〈はい…。呼び戻すことも可能ですが、どうされますか?〉
呼び戻すときに他の魔物に見つかると面倒だな…。ステータス! ネズミには見つからない程度に物陰にでも隠れておいてくれって指令を追加で…。
〈了解しました…〉
僕はマップに従い、大きな階段を上っていった。
「……」
ったく、あのネズミ…。どこまで上がってるんだ? 確かに上がるにつれて魔物の数は少ないけど…。…ん? ついた…。このフロアだな…。一体、どこに…。いた、いた…。あんな銅像のところに…。
僕はネズミからカギを受け取るとステータスに心の中で問いかけた。
「……」
ステータス…。…これでいいのか?
〈問題ありません…。データ登録終了…〉
「……」
よし…。じゃあ、ドゥラスロールワン解除! これでいいのか?
僕が心の中で念じるとネズミは我に返ったようで、チュウチュウと鳴きながらどこかに消えていった。
「……」
全く、ネズミに助けられるとは…。皮肉なもんだな…。さて…。一応、オリジナルのカギはこの辺に隠しておいてっと…。
銅像の裏にカギを隠すと僕は立ち上がり、ふと窓の外をみた。
「……」
高いな…。一番上のフロアじゃないか…。…一番上?
僕は一つの仮説を立てた。もしかすると、ゲームと同じであれば一番上にはやつがいると…。僕は音を立てずに背後を振り返った。
「…っ!」
…サーティス!
不気味な表情を浮かべながら奴は椅子に座ってこちらを向いていた。
「……」
ばっ、バレてないよな…。
しばらく蛇に睨まれたカエルのように全く動けなかったが、奴は微動だにせず、こちらを見ているだけだった。
「……」
…今がチャンスか? いや、焦っちゃダメだ…。今は逃げよう…。
僕が下に降りようとすると、二体のゴブリンが話しながら歩いてきた。
「はぁ…。なげえ…。全く、侵入がいるかもしれないからって…。ったく、こんなところにきてもな…」
「だな…」
「適当に見たっていって帰るか?」
「そうだな…」
ゴブリン達は階段をベンチ代わりにして座った。
「……」
おいおい、サーティスがいるんだぞ!? こっ、こいつら大丈夫か!?
僕は振り向いて様子をみたが、サーティスは微動だにしていなかった。
「……」
…気付いてない? まあ、離れてるし…。…気付かないか? というか、こいつら不用心だな…。こんなところでサボりなんて…。サーティスに気付いてないのか?
僕がそんな事を思いながらゴブリン達を見ていると、ゴブリン達は小声でコソコソと話しだした。
「…それでお前、聞いたか? ここだけの話だけどよ…」
「…なにがだ?」
「俺達もようやく帰れるぞ…」
「…ホントか!?」
…帰れる? なにをいってるんだ、こいつ?
「ああ…。ここに奴等をおびき寄せる準備は整った。この幻影城に…。俺達の役目も終わりだ…」
「長かったな…。これで故郷に…。よし…。そろそろ下に戻るか…」
ゴブリン達は結局そのまま下に降りていった。
「……」
どういう意味だ…。幻影城…。幻影って…。まっ、まさか、ここは魔王城じゃないのか!? もしかして、あのサーティスも…。それであんな態度を…。おびき寄せるとかいってたな…。だとしたら、ここにくること自体が罠!? 皆を止めないと! …でも、どうするんだ? 連絡も取れないのに…。くそっ…。ここで考えても仕方無いか…。一旦戻ろう…。
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