第153話

「実はあるスキルのことなんだけど、ちょっと見てほしいんだ。…ステータス!」

 僕はステータス画面を操作してディナイアルグローリーのスキルをみせると、神様は首を傾げて変な顔をしていた。

「…ん? なんですかこれ?」

「なんですかって…。このスキルの効果が全く表示されてないからわからないんだ。予想はついているんだけど…」

 ピンクの髪の毛を横にフリフリさせて神様は答えた。

「私もこのスキルに関していえば見たことも聞いたこともありません。…というか、そうではなくてですね。私が聞きたいのはこっちのことです」

 神様はなにも表示されていない青い画面を指差したが、僕にはなんのことか分からなかった。

「…ステータス画面がどうかしたのか?」

「やっぱり、ステータスなんですか? こっ、これすごいですね! 最近、開発されたんですか? 私の知らない間にこんなものが、いつの間にか便利になったんですねー」

 神様はそれをみて感心していたようだったが、僕はその言葉の意味が理解できなかった。

「なっ、なに、冗談いってるんだよ…。…神様がくれたんだろ?」

「いっ、いえ、私はあげてませんよ! 私があげたのはスキル…。…というか、あなたがこの世界で普通に呪文を発動できるようにしただけなんです」 

「…えっ? …じゃあ、これは一体?」

「わっ、わかりません。調べてみましょう…。少し貸して下さい」

 神様はステータス画面をポンポンと触ると頭を抱えながら悩んだ顔をしていた。


「…なにかわかった?」

「うーん…。全然わかりません…。ただ、私が持っているステータスよりも高性能かもしれません…。少し壊れてますけど…」

「そうかわからないか…。…ん? 壊れてる?」

「みてください…。ここにあなたのHPとMPが表示されているはずなのに、なにもでてないんです」

 確かに神様が指差した箇所をみると、ステータスにはなんの数字も表示されていなかった。

「ほっ、本当だ…。でも…おかしいな…。この前までできたのに…。まさか、実は表示しきれてないほどのHPとMPが…」

 …なわけないか……。

「一応みておきましょう…。こっちを向いてください…」

 僕は下を見ると上目遣いをしながら可愛い神様がこちらを見つめていた。本当に小学生のようだった。見た目は…。

 うーん…。これが千歳以上…。どう見ても子供なんだよな…。発言といい…体型といい…完全に小学生だ…。もっと魅力的な神様だったら…。

「…今、ものすごく失礼な事を考えているでしょう」

「…まっ、まさか、心を読んでいるのか!?」

「そんな事しません! あなたの顔にでてるんです!! まったく、これで三つ目です。後でお仕置き…」

 神様は急に無言になり目をこすりながら、なにかを見ていた。

「どうしたんだ? まっ、まさか本当に表示しきれないほどのHPとMPが...」

「…ちっ、違います」

 なんだ違うのか…。戦いが楽になると思ったのに残念だ…。

「じゃあ、どうたんだよ…。変な顔をして…」

「HPとMPが完全になくなっているんです!」

「ゼッ、ゼロってこと?」

「いえ、これはそういうのではなく…。そういえば、あのスキルに予想がついているっていいましたよね?」

「ルールに縛られなくなるスキルかなと…」

 僕は自分がいったあとに気がついた。もしかして、これはそういうことなのではないのかと…。

「もっ、もしかして…」

「神様、俺もいま気がついた…。…そうだと思う?」

「…はい。このスキルのせいです…。でも、もしかするとこれは…」

 詰んだ…。これは完全に詰んだ。…待てよ。

「…そうだ! 神様がくれればいいんだよ。超絶スキルを…」

「それはダメです」

「なっ、なんでだよ…。もう…ルールとかいってる場合でもないだろ?」

「そうではなくてですね。実は試しに送ってみようとしたんですが、拒絶されてるんです」

「…えっ?」

 下を向くと確かにお腹のあたりにキラキラしたものが入ろうとしていたが、僕の体から跳ね返されていた。

「きっと、あなたはこの世界のルールに当てはめる事ができなくなってしまったんです…」

「…それって結局どうなるんだ?」

「…わかりません」

「……」

 わからないことが更にわからなくなっただけのような気がする…。まあ、危ない匂いがするのは確かだ…。

「…でも、このステータスにしてもよくわからないことばかりです。このステータスが喋ってくれたら簡単なんですけどね…。はぁー…」

「…ん? 喋るぞ? おい、ステータス!」

 神様は僕の目線とあわせるように飛び、ジトッとした目で僕を見つめていた。

「冗談いってる場合ではないですよ! ステータスが喋るわけ…。…あれ? 今、声が聞こえませんでした?」

「だから、喋れるんだって…。なあ、ステータス?」

「…お呼びでしょうか?」

「スッ、ステータスが喋った!?」

 この後、ステータスと神様がよくわからない会話をしたあと、神様が疲れ切った顔で僕に話しかけてきた。


「すいません…。色々聞いてみましたが、全くわかりませんでした…。ただ、聞いて見る限りでは、このステータスはあなたが元々持っていたようです」

「…元々持っていた?」

「何故かはわかりませんけど…。さて、そろそろ帰ります…。…もう用事はないですよね?」

「うーん…。もう、ないよ…。なにかあればまた連絡する…」

「そうしてください…。…それでは!」

 神様は空高く宙に浮かんで右手をあげた。そして、しばらくするとなにか呪文のようなものを唱えて何度も手をあげたり、グルグルと回したり妙な事をしていた。

 変わった魔法だな…。まあいいか…。さて、これからどうするか…。まずはここがどこかだな…。恐らく竜の国なんだろうけどリアヌスと落ち合うのが先か…。

「あのー…」

「かっ、神様!? まだ、帰ってなかったのか?」

「…実は帰れなくなっちゃったみたいなんです」

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