第148話
「そっ、そんな事するわけないだろ!?」
「とぼけるな! 俺は見たんだ…。…あの扉の奥にあるのは一体なんなんだよ!」
「…本当になんの話だ?」
「…心当たりがないってのか!?」
「少なくとも私達は絶対にしない…。そうか、だから君は…。だが、そんな話は…」
目の前の男をみると僕の言葉に動揺していたが、嘘をついている感じはしなかった。
…本当に知らないのか?
「でも、見たんだ! 巨大なドラゴン達が人間を…」
「巨大なドラゴン? …その中に私達のような竜人はいたかね?」
「……」
…竜人? 人型って事か…。
僕はあの消えた未来で倒した奴らを思いだしてみた。だが、ゲームの中にでてくるような大きなドラゴンばかりで、そんな人型のドラゴンなんてものはいなかった。
「…どうかね?」
「…人型はいなかった気がします」
「そうか…。まあ、なんとなくはわかったよ…。少し長くなるが説明し…。おっと! 魚が焦げてしまう…。そっちは任せたよ」
僕は魚が刺さった棒を手に取ると、リアヌスは別の焼いている魚を手に取った。そして、焼けていない反対側へ火に向けた後、手に持っていた魚を一口食べた。
ウロコとってないな…。おいしいけど…。
「…説明って?」
「まず、私達の国というのは特殊でね…。王の息子が王になるというわけではない…。次の王が辞めるまでに一番結果を残したものが王となるんだ…」
「なるほど…。だから、四天王を倒した事にこだわったんですね…」
リアヌスは少し焦った様子で釈明していた。
「ぐっ…。するどいな…。まあ、そうだな…。あれはそういうことにしてくれれば助かるよ。…君の為にもね」
「…それがなんの関係があるんですか?」
「大アリさ…。つまり、意にそぐわないもの…。例えば文化の違うものが王になるなんてこともあるんだよ」
「じゃあ、竜族の中にも色々な考え方を持ってるやつがいて…。リアヌスさん達はそういう事をしていないって、いいたいんですか?」
僕は少し焦げてしまった魚を火から離してそばにおいた。
「そうだ…。私達の姿を見ればわかると思うが人間に似ているだろう…。これは人間に対して少なからず憧れを持っているんだ」
「…憧れ?」
「そうだ…。例えば、君の作ってくれたハンバーガーだったかな。あんなに美味しいものを一口で食べたらもったいないだろ?」
目の前の男は冗談まじりにそういったあと、手に持った魚をペロリと食べた。
「たっ、確かにそうですね…」
「まあ、あのでかいだけの姿は大人数をのせて飛ばすとき以外は役に立たないだろうね。後は戦闘の時以外は…」
戦闘の時以外? じゃあ、やっぱり…。いや、ワザワザいうのもおかしいか…。聞いてみよう…。
「戦闘の時だけ元に戻るんですか?」
「元にか…。まあそうだな…。ただ、人型の方が集団戦には適しているよ。竜族は個が強すぎるんだ。そして、なにより頭が悪い…」
「人型になれば、まるで頭が良くなるような言い方ですね…」
「そのとおりだ…。まあ、それを嫌うものもいるがね…。もしかしたら、そいつ達の仕業だろう…」
「…そいつ達を止める事は?」
「できない…。…私以外にはね」
目の前の男は手に持った木の枝の束を焚き火に投げると、パチっと音がなりなんともいえない静けさが漂った。
「……」
「まあ、安心したまえ。それに関しては国に帰ったらすぐ対処しよう」
「……」
つまり、僕は勘違いしていたってことか…。でも、本当に信じていいのだろうか?
「…信じてないって顔だね。まあ、無理もない」
男は立ち上がり僕の隣に座ると、とんでもない行動をとった。
「…なっ!?」
今の一瞬で…剣を!
ただ、おかしな事に攻撃するわけでもなく、男はしばらく剣をみつめた後に刃を自分の首元に当てて柄の部分に僕の手をのせた。
「信じられないなら、このまま私の首を落とすといい」
その行動に時が止まるような緊張感を覚えた。
「…自分がなにをしているかわかってるのか?」
「わかってるさ…。竜王石がたやすく切れたんだ。私の首なんて簡単に切れるだろう」
「そういうことじゃない…! …死ぬんだぞ…?」
僕の言葉に目の前の男は少し悲しそうな顔で笑って答えた。
「君にはその資格がある…。神族を一番滅ぼしたのは私だからね」
「なんだと!?」
「つまり、君が本物の神族の生き残りだとしたら、私は倒すべき相手ということになる」
「なんで…なんで、殺したんだ!」
僕が少し剣を揺らすとリアヌスの首から赤い血が流れた。
「…言い訳に聞こえるかもしれないが、魔王の能力を抑える為にはあの方法しかなかった」
相手の能力を吸収する力か…。
「…他に方法はなかったのか?」
「いや、嘘はよそう…。感情の赴くままに行動した。殺意に身を任せたんだ…」
「なっ!?」
男は冷たい目をしながら、僕の目をジッと見てそういった。
「さあ、切りたまえ…」
シオンさんの仇なら切るべきだ…。でも、なにか引っかかる。
「なぜ…殺意が生まれたんですか?」
「…愛する人を殺されたからだ」
「……」
僕はその言葉になにも言えず黙り込むと、悲しそうな表情をして彼は話し続けた。
「当時、神族は一人の魔物と手を組み秘密裏にある実験を行っていた」
「…実験って?」
「…悪魔の力を扱えるようにする人体実験さ」
「…悪魔の力を!?」
「その実験で多くの人間達が犠牲になった。私は許せなかった…。愛する人を殺した神族とあの魔物…サーティスを!」
「……」
こいつ…人間を愛していたのか…。
「…さあ、どうする? やるなら一思いに頼むよ…」
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