第119話
「…ここはどこだ?」
「…なんで、子供の時の俺が……。…しっ、しかも、こいつは!?」
その子を見ると背中に剣を背負い右腕には包帯を巻きつけ、更に鎖を巻きつけていた。
間違いない…。こっ、これは…。こじらせていた時の僕だ…。
「まさか、魔界か…。…やったぞ! ふっはははは! とうとう魔界にきたのか!」
「頼む…。コーラをやるから帰ってくれ…」
僕はそいつの肩に手を置いて、黒歴史に声をかけた。
「…ん? …なんだ、お前? …まさか、敵か!?」
子供は剣を抜き、僕に剣先を向けた。
なんだろう…。ぶん殴りたい…過去の俺を…。いっ、いや、ダメだ…。ここは大人になった僕がスマートに決めるべきだ。子供には優しい気持ちで接するこれが大事だ。
「おっ、俺は…あっ、相棒だ…。お前の力を借りたくて召喚したんだ」
僕は平常心を維持するようなんとか努力した。
「…相棒? 嘘をつくなよ…。お前みたいなダサいやつみたことないぜ」
こっ、子供のいう事だ…。心を鎮めて話をあわせるんだ…。
「いや、本当に相棒なんだ…」
「ふーん…。なら、俺の真の名前いえるよな…」
僕はそんな事をいわれて、言葉に詰まってしまった。
「そっ、それは…」
いえない…。恥ずかしすぎていえない…。
「…ほら、いえないだろ? …やっぱり、敵だな!?」
仕方ない…。本当に仕方ない…。
「いっ、いえる! ………ングだ」
「小さすぎて聞こえないんだけど…」
「いや、だから…! ………ニングだ」
僕は泣きそうになりながら、自分に言い聞かせた。
ここでは誰もいない…。いいじゃないか…。別に大した事ない…。
「…ねえまだ?」
僕は心を無にした。
「…ハデス・ライトニングだ……」
「なっ、なぜ、その封印されしその名前を!? 誰にもいってないのに!?」
頼むから誰にもいわないでくれ…。一生、封印するんだ…。
僕は天を仰いだ後、話を元に戻した。
「信じてくれ…。信じてくれたら、ポテチでもコーラでもなんでもやるから!」
子供の頃の僕は少し迷っていた。
「うーん…。でも、先生がお菓子をくれる人についていくなっていってたし…。どうしようかな…」
「じっ、実は親戚なんだ。…似てるだろ?」
少年はジーっと僕の方をみて首を傾げていた。
「うーん…。少し似てる気もするけど、先生があったことのない親戚は不審者かもしれないからついていくなっていってたし…」
先生のおっしゃる通りです…。
「…もうなんでもいいから手伝ってくれ! 世界の危機なんだ!」
「せっ、世界の危機だと!?」
そのセリフに少年は目を輝かせていた。
そうだ…。思いだした…。僕はそういうやつだ。早く思い出していれば、あんな恥ずかしい名前をいわなくてすんだのに…。
僕は檻の中にいる尻尾をみせた。
「ああ…。早くこの尻尾のいく先にいる魔物を倒さないといけないんだ。協力してくれないか?」
「相棒、そういう事は早くいえよ。なるほどな…。少しそれ…貸してくれ」
「貸せって? これを?」
「早くー」
「こっ、壊すなよ…」
僕は尻尾の入った檻を手渡すと、少年はなにやら呪文を唱えだした。
「オッケー…。大体わかったよ。相棒、手を繋いでくれ!」
僕は少年の手をとって話しかけた。
「…わかったってなにが?」
「魔物の居場所だよ。離さないでね」
「…ん? おっ、おい、これ!?」
下を見ると足が沼の中にいるようにズブズブと沈んでいた。
「ビビリだなー。大丈夫だから! 信用しろよ…相棒!」
「わっ、わかったよ…」
本当に大丈夫なんだろうな…。
そう思った瞬間一気に沈み込み、凄まじい速さで落ちていった。
「…ついたよ」
「おっ、落ち…。ついたって…。…こっ、ここは!?」
紫色の線に照らされてなにかが揺れ動いていた。よく見ると、気持ちが悪くなるほどの尻尾が辺りを埋め尽くしていた。
「ホントは裏技使わずにダンジョンクリアしたかったけど、世界の危機だから仕方ないよね?」
「ああ…助かったよ。相棒…」
裏技か…。なんというか…すごい空間だ…。普通にいってたら、これてなかったかもしれない…。でも、この子は一体なんなんだろう。こんな魔法が使えるって…本当に僕のコピーなのか?
そんな事を考えていると、少年はさっと振り返り声をかけてきた。
「さあ、さっさと倒そうぜ!」
「ああ…。まあ、確かにそうだな…」
確かにこの子のいうとおりだ。とりあえず倒そう。
僕は中心に佇んでいる黒い魔物の前に立った。近くで見ると紫色の線になったオーラのようなものが魔物の体中に張り巡らされていた。
「…なあ、相棒こいつなのか?」
「ああ…」
相手のステータスを確認するとHPが一千万と表示されている。恐らく間違いないようだ。
僕は空間を飛び回り風の刃で切り続けた。
かなり切ったのにHPが減ってない…。速度が遅いってのもあるけど、回復量がとてつもなく多いのか…。
「相棒、ちょっと降りてきて…」
「…なんだ? 今忙しいんだけど?」
「いいからっ!」
僕はひとまず攻撃をやめて、しぶしぶ地面に降りた。
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