第120話

「一体、なんだよ?」

「ねえ、暇だから俺も戦っていい?」

「子供は危ないから…」

 いや、見た目子供だけどこの子はスキルだ…。実はとんでもない力を持っているのかもしれない…。まあ、試してみるか…。

「じゃあ、ちょっとやってみてくれ…」

 少年は剣を抜いて少しすると黄色く強い光を放ち始めた。


「よしっ…。けっこう、硬そうだし……。本気でいくか…。せーのっ…!」

 少年の思いっきり振った剣が魔物へ当たると、空間が歪むほどの爆風が発生し僕は吹き飛ばされ尻尾まみれの壁に激突した。

 痛っ…くない…。尻尾がクッションになったのか…。

「まさかこいつに助けられるとはな…。しかし、なんて威力なんだ…。あの魔物、瀕死じゃないか…」

 あれだけ切ってもダメージをくらわすことができなかった魔物のHPは残り一万になっていた。しかも、HPが回復していない。あの紫色の線になったものが途切れているからかもしれない。

「…相棒、大丈夫か?」

 少年は手を差し伸べてきたので、僕はその手を取った。子供とは思えない、かなり強い力で引っ張られた。

「ああ…。びっ、びっくりしたよ…」

「狙い通りいい感じにHP減らしたといたからさ。まあ、俺も野暮じゃないし、わかってるよ」

「わかってるって…。…なにが?」

「トドメはさしていいよ。はいっ…! 剣かしてあげる」

 少年はポンッと僕の手元に小さな剣を軽く置いた。本当に軽くポンッと置いたはずだった。

「えっ? ちょっ、ちょっと、なんだこれ!? おっ、おもっ! ぐぬぬぬ!」

 神様の装備をつけて重いってどんな剣なんだ!? まずいっ…。剣が落ちそうだ!

 僕は空中で逆さまになって変なポーズをとっていた。

「相棒…遊んでるの?」

「こっ、これが遊んでるふうにみえるか!? はっ、早く持ってくれ!」

「仕方ないなー。ほいっと…」

「はあ…はあ…。なんて剣なんだ…」

 僕が息切れをしていると少年は不思議な顔をした。

「…そんなに重いかな?」

「しっ、死ぬかと思った…」

「うーん…。困ったな…。どうしよう。…ん? っていうか、持ってるじゃん。ちょっと貸して…」

「おっ、おい」

 少年は神様からもらった剣を強引に手に取るとなにやら呪文を唱え始めた。

「うーん…。…あれ? まっいっか…。こんな感じかな…。はいっ」

「重っ…くはないな…。でも、なにしたんだ?」

「相棒、剣に数字みえる? まぁ、メーターでもいいんだけど…」

「…数字? …メーター? …ん? なんか、かいてあるな…」

 目を凝らすと柄の近くに丸いメーターらしき中にゼロと浮かび上がっていた。

「まぁ、相棒の好みでその辺は変えれるから…。まぁ、それはおいといて…。そのメーターがマックスになるまで風の魔力込めてみて?」

「…こうか?」

 剣に魔力を込めていくと重いというより、なにかこう寒気のするような恐ろしく、そして重苦しいような力を剣に感じた。

「それをそのまま思いっきり魔物に向けて振ってみて? さっきの感じだと、ちょっと離れてたほうがいいよ」

「大丈夫なのか!? ばっ、爆発するんじゃないんだろうな!?」

「だっ、大丈夫だよ…。たぶん…」

 少年は少し目をそらした。

 ほんとに大丈夫なのか…。

「まあ、離れてれば大丈夫か…」

 僕は緑色に強く輝くその剣を思いっきり魔物に向けて振ってみた。しかし、なにも起こらなかった。

 …失敗か?

「…なっ!?」

「なにもなってないな…」

 僕がガクッとなって、下を向くと少年は唖然として尻もちをついた。なぜか驚いた顔をしていた。

「あっ、相棒…。次からはもっと少なくしとけよ…」

「…えっ?」

「かっ、風の剣でよかった…。俺の剣、使ってたら…とんでもない事になってたぞ…」

「おい…。一体なんの話なんだ?」

 少年は何故か驚いた顔で僕を見ていた。

「わっ、わかんないのか?」

「…だから、なにが?」

「もう少ししたらわかる…。大きな灯りをつけて前を見てくれ」

「…前?」

 僕が火の魔法を発動して前方を確認した。あの黒い魔物は灰になって消えていき、それと同時に周りの尻尾はゆっくりと地面の中に溶けていった。ただ、それ以外特別な事は特になく、広い空間がどこまでも続いていた。どうやら、ここが最深部のようだ。

「…わかるだろ?」

「魔物は倒せたってことくらしいか…。っていうか、暗すぎて先まで見えないし…」

「相棒がやったんだよ…」

「…ん?」

「だから、相棒がさっき振った剣で、このどでかい空間ができたんだ!」

「はっ、はあ!? 洞窟じゃないのか!?」

「入口は真上だよ…。おっ、恐ろしい力だ…」

 僕は上を見ると人一人入れるかわからないほど、小さな穴が空いていた。

「なっ、なにしたんだ!? おっ、俺の剣に!」

 

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