第110話

 ファンタジー耐性があると思っていたのにそろそろ頭が限界だ…。

「まぁ、そういうわけなのよ。ところで…彼…助けなくて大丈夫なの?」

「…彼?」

「さっきのドワーフよ。そこの扉の前で腰抜けて立てないみたいよ」

 僕が扉の前に向かうとタオルに埋まっているドワーフを見つけた。


「…エリック、大丈夫か!?」

 僕はタオルの中からエリックを救いあげると、驚くほど号泣していた。

「だっ、大丈夫じゃない! 今の俺の気持ちわかるか!?」

 まぁ、そりゃそうだろうな…。仕方ないとはいえ、自分達の国を魔法の使えない国にしたんだ…。恨みたいたい気持ちもわからないことはない。

「エリック…。でも、仕方がなかっ…」

「俺は今…猛烈に感動している!」

「…えっ?」

「俺は…色んな本を読み漁った。でも、本だけの知識には限界がある…。まさか…そんな…そんな歴史があったなんて…。ウィンディーネやヴォルト様に会えて本当によかった」

 まぁ、ゲームの裏設定とか好きなやつもいるよな…。

 僕がそんな事を思いながらウィンディーネの方をみると、明らかに不満そうな顔をしていた。

「なんで私には様がついてないのよ!」

 エリックはタジタジになって小さい声で答えた。

「いや、あのヴォルト様はこの国で神と祀られてるので…」

「ふーん、私は?」

「特には…」

「私…帰ろうかしら?」

「まっ、まって下さい。ウィンディーネ様! すっ、すみませんでした…」

「よろしい…」

 僕はタオルで体を拭いたあとにウィンディーネに尋ねた。

「じゃあ、この尻尾はどこを指してたんだ?」

 僕は神様のバックから尻尾を取り出した。

「…そもそも、ここなのかしらね?」

「どういう意味なんだ?」

「貴方もわかってると思うけど、ここでは魔法は使えない。あの尻尾がこの国に入った時点で活動が止まるのよ」

 確かに話を聞くとそうなのかもしれない。

「でも、みてくれよ。この尻尾ずっと地面をさしてる…」

「確かにそうね…。…ん? んんん!?」

 ウィンディーネはガラスのような檻にひっついた。ウィンディーネの方を見ると明らかに動揺していた。

「どうしたんだ?」

「…なっ、なんで、尻尾動いてるの!?」

 僕はその言葉に背筋が少し凍った。

「…すっ、少しは動けるんじゃないのか?」

「…そんな事ないわ」

「まっ、まさか、剣が壊れたから!?」

「違うわ…。あれは私達精霊の力を増幅するために作ったの…。発動してしまえば関係ないわ…」

「じゃ、じゃあ…なんで動いてるんだ?」

「…まっ、まさか復活したの?」

 ウィンディーネは急いで窓に移動して外を確認しているようだった。

「どっ、どうしたんだ?」

 僕は隣にいって問いかけると、ウィンディーネは少し沈黙したあとに話しだした。

「…でも、やっぱりおかしいわ。尻尾がどこにもいない…」

「…ちなみにどのくらい尻尾がいたんだ?」

「この空が黒くなるくらいね…」

 勇者達…よく封印できたな…。

「…じゃあ、一体どういうことなんだ?」

「…わからない。でも、もしかしたらとんでもないことが起きるのかもしれない。ノームがいれば…」

 なんで、ノームがでてくるんだ? 

「一応、ノームなら呼べるぞ…。ちょっと待っててくれ」

「ええだから…。…よべるの!?」

「ああ…」

 僕の言葉にウィンディーネとエリックは戸惑っていた。

「そんなに簡単に私達を呼べるものなのかしら…。ほんと…あなたって何者なのよ…」

「何者っていわれても…」

「なあ、二人とも…。さっきからなんの話なんだ? …尻尾って絵本の話なんだろ?」

 エリックには協力してもらわないといけないし、ウィンディーネに説明しておいてもらおう。

「ウィンディーネ…。悪いんだけどノームを召喚するまで、エリックに説明しておいてもらえないか?」

「なんで、私がそんな事…」

「頼むよ…」

「まあいいわ…。説明しておいてあげる。早く呼んできなさい」


 僕は家の外に出てザラザラとする地面に触れて唱えた。

「…ノーム!」

 僕が唱えると地面がモクモクと盛り上がってきた。だが底に現れたのは予想外の人物だった。

「…あれ? ここ、どこ?」

「…シャ、シャル?」

 なんでシャルがでてくるんだ? …召喚に失敗したのか?

「あっ、あなた、だれ!? …っていうか、ドワーフ!? はっ、離して!」

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