第104話
僕は地面に落ちていたボロボロのハンカチを手に取った。
「これは…汚いな…。これじゃカッコ悪い…。他に顔が隠せそうな…。…ん?」
カッコ悪い…? カッコ悪い…。…カッコ…いい?
僕は地面に落ちていたガラスを急いで手に取り覗き込むと、美少年が僕を見つめていた。
カッコいいってそういう事か…。
「確かに小さい頃はモテモテだった記憶はあるけど…」
僕は大人になるにつれて段々とモテなくなり、そんな事をすっかり忘れていた。
っていうかこれじゃない…。余計なフラグは折るっていったけど…これじゃないだろ…。見た目小学生にモテても仕方ないんだよ! なんで…ナイスバディなお姉さんじゃないんだぁあああ!!!
「はぁー…」
ふざけてる場合じゃないな…。さっさとあのドワーフ達が話していたやつに会わないと…。仕方ない、また透明になっていくか…。
僕は起き上がり目的のカジノを探すことにした。
「…ここかな?」
街の中には、いくつか小さなカジノはあったが、中心にある一番大きなカジノの中に僕は入ることにした。
「……」
すっ、すごい…。ここがカジノか…。
奥へ進むと想像以上にきらびやかな世界が広がっていて、カラフルな光が僕を包みこんだ。ここはここで異世界と言っても過言ではないだろう。
こんなに光があたっているのに誰も気づいてないみたいだな…。…あれ? このドワーフ…老けてる?
僕は隣にいるドワーフの横顔をじっと見ると、小さくて気がつかなかったがやはり老けている。周りを見ても幼く見えるドワーフはかなりいるがどうやらコビットと違ってドワーフは年を取るようだった。
「……」
そういえば、兵士たちも少し老けていたような…。まぁいいかそんな事…。さて、どうやって探すかな…。まぁカジノに捕まってるっていわれるくらいだから、相当熱くなってるドワーフなんだろうけど…。
そのまま、さらに進むと奥にはRPGゲームでもでてくるスロットやカードゲーム、ルーレットといったものがあり、想像通り熱い世界が広がっていた。
「……」
楽しそうだな…。……いっ、いかん! 雰囲気に飲み込まれそうだ…。こんなとこで、遊んでる場合じゃない。まずはトイレで透明化をとくか…。
僕はトイレを探そうとすると、遠くの方に酔っぱらいらしきドワーフが黒服に連れていかれているのを見つけたので急いでついていった。トイレにでも連れていくのだろう。
「……」
ちょうどよかった…。それにしてもこんな薄暗い地下にトイレがあるのか? …なっ!?
前をみるとドワーフは驚いたことに勢いよく牢屋に入れられた。僕は隠れて黒服の会話を聞いた。
「準備ができたら呼びにくる…。それまで大人しく待ってるんだな。お前に貸した百万ゼニー…キッチリ返してもらうぞ…」
黒服達は牢屋の鍵をかけでていき捕まった年老いたドワーフは叫び声をあげた。
「たっ、助けてくれー! 頼む! 助けてくれー!」
「……」
哀れだ…。捕まってるってそういう事か…。
僕がそんな事を思っていると後ろの方から怒鳴り声がした。怒鳴ったのは別の牢屋の中にいる人物だった。
「うるせぇー! 百万ごときでピーピー泣きやがって…。泣きたいのはこっちだ…。ぐすっ…」
「…もっ、もう、終わりだ」
「どうせ、そのぐらいの額ならすぐ開放だ…」
「ほっ、本当ですか!?」
「ああ…。何度も通ってるから間違いない。これに懲りたらもう二度とくるなよ…」
僕はその説教ほど薄っぺらなものはないように感じたが、牢屋を見ると重なれば重くもなることを知った。
「……はっ、はい…。とっ、ところで、貴方はいくら負けたんですか?」
「…一億だ!」
「ひぇっ…。うっ、上には上がいるもんですね」
こいつ、ろっ、ろくでもないやつだな…。自分のこと置いといて…。…ん? …何度も?
「まぁ大体は剣とか盾を作って返したんだがな。せっかく作業場からでたのにまた上限いっちまった」
…まっ、まさか!? こっ、こいつ、なのか!?
僕は声の主を確認しようと牢屋の中を覗き込んだ。
くそっ、暗くてよくわからないな…。
「すっ、すごいですね…。でも、真面目に働けばお金に困ることないじゃないですか? …なんでまたカジノに?」
「ああ…それは…」
檻の中の人物が答えようとすると、入口の扉がドンッと音をたて開いた。どうやら黒服が戻ってきたようだった。僕は急いで通路の奥に隠れて様子を見ていると、黒服はさっき放り込んだドワーフの前で立ち止まった。
「手続きがあるからさっさとでてきな…。釈放だ…」
「本当だ…。よっ、よかった…」
年老いたドワーフは牢屋からだされた後に黒服に連れていかれた。牢屋の中にいるもう一人のドワーフは下を向きため息をついた。
「はぁー…」
「……」
さて、どうするかな…。そもそも本当にこいつなのか? …というか仮に本人だとしても時間もないし、他の方法を探したほうがいいんじゃないか? うーん…。
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