第84話
…まさか、そういう事なのか?
「……」
ドゥラスロールを発動していたから…。いや、悪魔の力を持っていたから僕を攻撃してきたのか? いや、まてまて整理しよう…。
「そうか…。そういう事なのか…」
ネズミの王は悪魔の力を使っているのか…。だとしたら、ノスクの剣はネズミの王というより悪魔の力を感じ取るのかも知れない…。だから、僕に会った時…青く光輝いたのか…。
「……勇者じゃなくて、悪魔じゃねえか!」
でも、なんでだ…。なんでダンジョンに入った瞬間、攻撃してこなかったんだ?
「……」
そういえば石版に…青き剣と共にって書いてあったな…。そうか、そういう事か…。青き剣と離れたから発動したのか…。
「…っていうか、かなりまずい状況だな。これ……」
まあ…攻撃されてないところをみると、ここから動かなければとりあえずは大丈夫ってとこか…。でも、脱出をしようとすれば容赦なくトラップが発動するだろうな…。
「さて、どうするかな…。ここでしばらく待つというのも…。…んっ!? なっ、なんだ!?」
僕はさっと立ち上がった。妙な音が聞こえる。例えるならなにかがうごめいている。そんな音だった…。
「…なんの音だ?」
僕が耳をすまして聞くとその音は、だんだんと大きくなっていった。
「まっ、まさか!? トッ、トラップか!?」
僕は空中に大きめの火を灯すとその光景に背筋が凍った。
そうだ……忘れてた……。この空間に僕以外のなにかがいる…。その可能性を…。
「まっ、まさか…。これが…」
それはゆらゆらと漂っていた。どこからでてきたのかはわからないが、数千の尻尾はだんだんと絡みあって輪になっていき僕を取り囲んでいった。まるで、獲物を逃さないように…。
「なっ、なんだ、この数…。……えっ?」
そのうちの一つが僕の右手にボトッと落ちた。そして、それを合図に全ての黒い尻尾が僕に襲いかかってきた。
「……ぐぁあああああ!」
…いっ、痛い! それになんだ!? ちっ、ちからが入らない…。
「…こっ、これは!?」
僕は尻尾の隙間からステータス画面を見ると、どんどんHPが減っていた。
「…まっ、まずい! リカバリー!!」
HPは減らなくなったが増えてもない。相手のHPが段々と増えてる。
「…そうか、HPドレインか!」
僕は剣を抜き、がむしゃらに尻尾を切り裂いた。切られた尻尾は床に落ちた後バタバタと動き、しばらくすると尻尾同士がくっつき、また僕に襲いかかってきた。
「くっ、くそっ…。だっ、だめだ!」
僕は空を飛び空中へ逃げながら近づいてくる尻尾を切り裂いた。
「はぁ…はぁ…。…っていうかなんなんだ、HP0って!?」
相手のHPを見ると僕のHPを吸ったもの以外は全てHPが0だった。なぜ動いているのかわからない。
「くっそ…。離れろ! かっ、考えろ! 考えるんだ!」
ここで思考を止めたら僕は死ぬ…。MPはまだ余裕があるけど時間の問題だ。…あっさり、スネークイーターを解除するか? でも、なんだ…。このすごく嫌な予感…。ゲーマーの感覚がいってる…。ここで…この場面で解除はしてはいけないと…。
「はぁ…はぁ…」
僕は…僕のゲーマーの感覚を信じる。スネークイーターは解除しない。でも、どうすればいい? フレースヴェルグを使うか?
「ちっ…!」
…いや、だめだ。強いがMP消費がひどすぎる。ここで、MPが尽きたらアウトだ。やるなら最後だ…。ならば…。
「ならば、ドゥラスロールか…」
ドゥラスロールで突破口を開くしかない。それしか方法はない…。それしか方法はないんだが…。
「はぁ…はぁ…はぁ…。なんとかHPが回復した…」
さっきから僕が気にしているのは、敵のドレインスピードだ。あの数秒間のドレインでHPが300近くも減っていた。もし、リカバリーの発動が数秒遅れていたら、僕は確実に死んでいただろう。今はリカバリーを常に発動しているから一応問題ないが、ドゥラスロールのデメリットである最大HPの減少…。これは正直怖い。
「くそっ…。しつこい尻尾だ! …って、壁がある!?」
僕は激突する前に壁を蹴り急旋回した。
「あっ、あぶなかった…」
あんまり炎から離れると視界が悪い。…っていうか、息が苦しいぞ。それに頭も痛い…。…そっ、そうか! 炎のせいで…。この空間…空気の循環が少ないのか…。
「…こっ、これでどうだ!」
僕は風の魔法を発動し空気を作成した。すると僕が落ちた穴の方へと風が流れていった。
息もしやすい…。これでしばらくは大丈夫だろう。
「でも、リカバリーを使いながらの魔法の同時使用は…。なかなか疲れるな…」
まずはⅠの影を使おう…。これが使えればあっさり解決なんだが…。予想だと厳しい…。
「ステータス! 操作だ! ドゥラスロールワン、発動だ!」
音声操作での発動に対応してくれれば嬉しいが…。
「了解しました。発動します」
よし! どうやら、発動できるみたいだ。
「ステータス! あいつらの中からHP0の魔物の意識を全て奪え!」
「了解しました。発動します」
Ⅰと書かれた影から無数の影の弾丸が敵に襲いかかった。しかし、敵の動きはまるで変わらなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます