第57話
僕はその後に二人を起こして、皆と朝食をとった。シオンさんは相変わらず朝からとんでもない量を食べ、船員さんを驚かせていた。色々な意味で…。
「…お腹いっぱいだ。…ん?」
…船がとまった。…どうやら港についたようだな。
「…よしっ! いこうか!」
「そうねっ! アル、シオンさん、早くいこうっ!」
「そっ、そうだな…」
うーん…。やっぱり、シオンさんの元気がない気がするな…。ちょっと、聞いてみるか…。
「シオンさん、どうかしたんですか? 元気がない気がしますけど…」
「…ん? ああ、気付かれてたか…。…いや、まあ少し考え事があってな。そのせいで、ご飯もあまり食べれなかったよ…」
「あっ、あれでですか!?」
「あっ、あれって…。普通だろ…。そういう君達も食べてなかったけど…なにかあったのか?」
「あっ、あれが、普通ぐらいですよ…。…あんまり食べると船の食料つきちゃいますよ?」
「はははっ、面白い冗談をいうなぁ…。さて、さっきの件はどうせすぐにわかるけど…。まあ、歩きながら説明するよ。さぁ、いこう」
シオンさんは笑いながら扉を開けて一人で先にでていった。
「…なぁ、アリス?」
「…なに?」
「…さっき…船員さん…いってたよな?」
「…うん」
「帰りの食料は…大量に買っておこうな…」
「そっ、そうね…」
僕とアリスは駆け足でシオンさんに追いつき、さっきの話の続きを聞いた。
「ところで、さっきの話って…」
「ああ…実は…」
僕達はシオンさんの驚くべき話を聞きながら、揺れる船から落ちないように慎重に降りた。辺りを見渡すとエルフ王国の港街に似ていたが違う点も一つあった。そう…。全体的に小さかったのである。半分程度の大きさだ。
「ほんと小さいな…」
僕がボソッと独り言をいうとアリスに小突かれた。
「それ禁句だからね…。建物とかは、まだいいけど…。コビット達にいったら外交問題になるから気をつけてよ」
「りょっ、了解…。じゃあ、コビットの王国に早速いこう。…シオンさんはどうします? ここで待っときます?」
シオンさんは憂鬱そうに答えた。
「…いや、いこう。いつかは断らないといけない話だ…」
「でも、まさかびっくりよねー。シオンさんがお姫様に求婚されてるなんて…」
アリスが驚いた顔をすると、シオンさんは深い溜め息をついた。
「はあ〜…」
僕達はシオンさんを励ました後、空を飛びコビットの王国を目指した。
「…シオンさん。そういえばコビットの国ってどんな国なんですか?」
「うーん…。なんだろうな…。まぁキノコの国だな。一言でいえば…」
「…キノコ?」
「ああ…。この国には魔力を持った不思議なキノコが生える。例えばポーションの原料にも使われていたり、毒としても使われていたりする。まあ、資源の豊富な国だな…」
「なるほど…。そこら中に生えてるの?」
「ああ…。ただ、もしキノコが生えていても勝手に食べない方がいい。私が聞いた話によると毒キノコの中には全身からキノコが生えてしまったり、体が大きくなったりするものもあるらしい…」
かっ、体が大きくなる…だと!? なんだ、そのゲーマー心をくすぐるキノコは…。…というかちょっと食べたい。
「…でも、体が大きくなるのは毒キノコなの?」
「まあ、毒というよりは…体が大きくなった時に衣服が裂けて、裸になるから一応毒キノコとしているらしい」
「へぇー…」
あっ、あぶねえ…。知らなかったら完全にやるとこだった。防御力強化した装備でそんな事したら…。食べた瞬間アウトじゃないか…。聞いといてよかった…。
本当にこの世界は僕が住んでいた世界と明らかに違う。確かに僕の世界にも危険なキノコもあるが危険の意味が違う。この世界の住人にとっては当たり前に近い事も僕にとっては当たり前ではない。本当にこの世界の当たり前の情報というのは大事だと会話をしていく中で僕は実感した。
「…じゃあ、あれはどういうことなの?」
「あれはだな…」
「それは…あれよ、あれ!」
僕は他にもこの世界の当たり前の事をシオンさんやアリスに質問していると、山々に囲まれたコビットの王国…ニダヴェリールの城にあっという間についてしまった。
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