第53話
「そっ、そんなに怒る事ないじゃないか!」
僕は神様の態度に怒って銅像に文句を言うと、神様の声は元気がなくなり段々と静かになっていった。
「すっ、すいません。そう…そうですよね…。…やはり、あなたには本当の事を言おうと思います」
「…ほんとの事?」
「あなたが倒した黒い魔物…。あれは悪魔の一部です。恐らくですけど…」
「えっ!? …じゃあ、あの六つに別れたっていう悪魔の一部なの?」
信じられない答えに驚きながらも、僕は銅像をじっと見て神様の返答を待った。
まさか、魔物の次は悪魔を吸収しているなんて…。
「…それはわかりません。…ただ、説明がつかないんです」
「…説明?」
「はい…。私の恐怖の感情…。それがなにか考えると…それしか思いつかないんです」
神様が怖がるとしたら、悪魔ってことか…。
「なるほど…。空間系魔法を渡すと、この世界からでれる可能性があるから渡せないってことか…」
「はい…」
「神様…。正解だよ」
「…はえっ!?」
神様は僕の答えが予想外だったのだろう。間抜けな声をだして驚いていた。僕は淡々と過去の思い出を話した。
「…ゲームにおいて重要な点が一つある」
「はい…」
「…それはサブキャラクターの冷静な判断だ。例えるなら旅の途中で一目惚れしてパーティーを抜けだすようなやつはいらん!」
めちゃくちゃ、あいつ強化したのに抜けだしやがって…。あのあと…どれだけ大変だったか…。
僕はあるゲームのムカつくキャラクターを思いだしていた。
「…よくわかりませんが、許して下さるのですか?」
「ああ、当然だろ? むしろ感謝してる。空間系の魔法を手に入れるのがバッドエンディングの条件かも知れないからな。…それはそうと、何個か聞きたいことがあるんだがいいか?」
僕は地面に座って、銅像を眺めた。神様は元気よく返事をした。
「はっ、はい!」
「まず、一つ目に勇者は転生したのか?」
「いえ、まだしていません…。あなたが今いる世界のどこかで眠りについているのでしょう」
よし! 確定だ!
僕は一安心して、次の質問に移った。
「二つ目に…悪魔がもし六体いるなら、吸収しようと思うんだけど問題ないか?」
「なっ、なぜそんな事を!?」
当然、こんな事を聞いても驚かれるだけだが、ヒントくらいは出る可能性はある。神様に聞いてもタダなんだから、気になった事はどんどん聞くべきだろう。質問するだけで金を取る悪徳NPCとは大違いだ。
「理由はゲーマー予想なんだが…恐らく魔王がそれぐらいしないと倒せない。HPが億単位らしいんだ。…恐らくこいつは倒さないといけない」
「…そんな恐ろしい魔物がいるんですね。…はっきりいうとわかりません。ただ、悪魔の魂はとっくに消滅しているので問題ないはずなんですが…」
「動き回ってるのが引っかかるな…」
「はい…」
「…まあ、様子見だな。三つ目は…。予知って、なにか見える?」
僕はバリアブルブックを開きページを確認すると、以前と同じように文字化けしていた。ただ、少しだけ読めるところが増えた気がする。ほんの少しだけだが…。
「…特に前回と変わりありません。ただ、少しだけ見やすくなったぐらいでしょうか…」
同じか…。
「そうか…。じゃあ、最後に…前に話した幽霊の事なんだけど…。魂を身体に戻すには魂と身体に触れて、リカバリーすればいいそうなんだけどあってる?」
「はい。それで大丈夫です」
僕は立ち上がり神様の銅像に手を振った。
「オッケー…。それだけわかれば十分だ。また、連絡するよ」
僕が話をすませシルフィの部屋に戻ると、アリスは椅子に座りベッドに寝ているシルフィの様子を心配そうに見ていた。
「アリス、お待たせ」
「用事、終わった?」
「ああ…。やっと物語が進みそうだよ」
「ふーん。…なにしてたか、どうせ聞いても教えくれないんでしょうね?」
「ごっ、ごめん…」
アリスは目を細めて、僕の方を見てきた。僕は自分の頭を押さえながら謝った。
「まぁ、いいわ。…そろそろいい時間だし、シスターが帰ってきたら一回城に戻らない?」
「…そうだな。そういえば、シスター達が入れるように扉の鍵を開けとかないと…」
「そうね…」
教会の重い扉を開けると夕日が綺麗にさしこんできた。僕は何故かその夕日を見ると、アリスとの別れを考えてしまった。
「どうしたの? ぼーっとして…」
ぼーっと夕日を見ているとアリスは僕のところにきて話しかけてきた。
「まあ、黙って行くのもなんだしさ…。一応、アリスには伝えておく。明日か明後日、この国をでようと思うんだ」
「そっ、そんなに急がなくても…。もう一週間ぐらいいればいいじゃない? もっ、もしかして足踏んだの怒ったの?」
「そうじゃないけどさ。…って、やっぱり踏んだんだろ! ちょっと痛かったんだぞ」
「だって変なこというから…」
僕が問い詰めると、アリスはとぼけた顔をしていた。僕はその件については追及するのを諦めた。
「まあいいや。…ってことだから帰りにアリスのいってたデザート食べに行こう。パーティーの解散会だ」
僕がそう言うと、アリスはどこか嬉しそうで悲しそうな顔をして返事をした。
「うっ、うん…」
僕等はシスター達が買い物から帰ってくると鍵を返して、お店に行きケーキを食べて城に戻った。こんな事言う性格じゃないけど美味しくて甘いケーキも少し悲しい味がした。
…よし、帰ってきたぞ。…ん?
「あれは…シオンさん?」
城に戻ると入口の所にシオンさんが立っていて、少し落ち込んでいるようだった。
「待っていたよ。…こっちはダメだ。…そっちはどうだった?」
「ヒントは見つけたよ」
「ほっ、本当か!?」
「かなり有力な情報だ」
僕は今までの経緯を全て話す事にした。まあ、神様のことは内緒だが…。
「…って、事なんです」
「…でも、本当に信じていいのか? …そんな話?」
「…俺の予想だと大臣達がなにか見つけてくれてるはずです。…まあ、同盟国が協力的だったら…の話ですけどね」
僕が城を見ながら答えると、お腹を押さえてアリスが話しだした。
「ねぇ、アル…。話しの途中で悪いんだけど…。食べながら話そうよ…。ケーキだけじゃあ、お腹が空いちゃったし…。そうだっ! シオンさんも夕御飯どう?」
「…いただいていいのかな?」
「いいわよ! シオンさんは敵をやっつけてくれたんだから…。この国の恩人よ!」
「いや、あれは私じゃなく…」
シッ、シオンさん! アリスにばらす気じゃないよな!?
僕はシオンさんに気づかせる為、目を見開いてワザと大げさに言った。
「ごっほん! シッ、シオンさん! いっ、いいんじゃないかな!? アリスがいいっていってるんだからっ!」
「そっ、そうだにゃ! ごっ、ごっほん! そっ、そうだな…。おっ、お言葉に甘えていただこう!」
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