第7話R
そして、プレイデッド、バリアブルブック、パーバスセット、これらは任意発動タイプにあたる。厄介なのは常時発動タイプ…。はっきりいってクソスキルだ。
だが、このパーバスセット…逆さまの鬼のアイコンが描いてあるスキルを使うと、とてつもなく有効なスキルに変わる可能性がある。
「さて、まずはパーバスセットを外すか…」
僕はスキル画面を開きパーバスセットを外そうとした。しかし、ブーっとアラームがなり外れない。
「…ん? 押し間違えたかな…」
もう一度行ってみたが、またブーと音が鳴るだけだった。僕はフツフツとある感情が湧いてきていた。
「…ふぅ……。…おりゃ、りゃ、りゃ、りゃりゃ、りゃぁあー!」
僕は名人にも負けない怒りの十六連打をしたが、ブーと音がなるだけで結局…解除はできなかった。
「くっ、くっ、クソスキルがーー! …だが…まあ…仕方ない…。……もう、外れなくてもいいか…」
一番厄介なスキル…魔法が使用できなくなるアンスキルフルを無効化しなければ、あのゴブリン達にやられていたかもしれないし…。
僕はそんな事を思いながら諦めてステータス画面を閉じて寝ようとしたが、誤って妙なところに手がふれてしまったようだった。さっきまで聞いたことのない音が聞こえて、ボーッとしながらパーバスセットのスキル画面をもう一度見た。
「…ん? …外れた? …外れてるぞ!? なんでだ……?」
胸に星印がついた鬼のアイコンが目についた。逆さまになって、なんだか意地悪そうな顔をしている。
「逆さま…。そして、鬼…。なんでさっきは外せなかったんだ? あれだけ連打してスキルを外そうとしたのに…」
僕はふとアンスキルフルに変化したアイコンを見た。こちらはさっきまで片手をあげていただけだったのに、元の逆立ちしたアイコンに戻っていた。
「…そうか、わかったぞ! …天邪鬼だ!」
つまり、こういう事か…。このクソスキルは外れろと願うと、外れない天邪鬼スキルなんだ。
「…なんて面倒くさいスキルなんだ。下手にテストできないぞ……」
例えばあるクソスキルを変化させて優秀なスキルであり続けば問題ない。しかし、クソスキルが更なるクソスキルになってしまった場合は外れなくてもいいとは思えないだろう。
僕はアンスキルフルにパーバスセットを再度つけてスキルフルに変化させた。問題なく変わったようだ。
「変化後がわからない以上は当面これでいいか…。ただ…」
ただ…もしかするとプレイデッドやバリアブルブックも実は厄介なスキルなのかもしれないな……。
僕は恐る恐るプレイデッドの画面を開いた。こいつは好きなときに仮死状態になれるクソスキル…そのはずだ。アイコンはベッドの上に人が倒れて幽霊になっている。
「…まあ、仕方ない。後でデメリットがわかるよりはいいか…。…よし、使ってみよう」
プレイデッドをタッチすると、発動時間を入力する画面がでてきた。
「発動時間か…」
試しに入力してみると、入力可能な数値に縛りがない…。どんな数字も入力可能だ。間違えて押してしまったら、とんでもない事になるだろう。
「……あれ? …解除ボタン?」
入力画面を操作していると、おかしな事に自分で解除する事もできるようだった。ただ…どうやって、仮にも死んでる人間が押せるというのだろう…。
「…解除ボタンを他人に押してもらうとかかな……。…うーん……。…人のステータス画面を勝手に操作できるのか?」
ただ本当に必要がない項目だとしたら…そもそもこの画面自体が必要ない気がして妙に引っ掛かった。
「…そうだな。発動時間は…まあ一分にして様子をみよう」
時間を入力した後に画面をタッチするとステータス画面に発動しますかという画面がでてきた。僕はソファーに寝っ転がったままYESをタッチした。
「…ん? なにも変わらないぞ…」
ゆっくりと起き上がって両手をみたが、変わった様子はない。僕はソファーから立ち上がって辺りの様子を見たが特に変わりはなかった。
「おかしいな…。タイマーが進んでる…」
妙な事に発動していないはずのスキルのカウンターが一秒、また一秒と時間を刻んでいた。僕はそのおかしな現象を操作して確認しようとした時に僕の両手、両足、全身にとんでもないことが起きていることに気付いた。
「…すっ、透けてる!? …なっ…なんじゃこりゃああああ!」
このスキルは仮死状態になった時に幽霊状態になれるとんでもないスキルだった。
「すっ、すごいな…」
幽霊になってる…。……だけど、意外にこれは使えるんじゃないか? ノーリスクで偵察にいけて…。もしかすると…ぐふふっ…悪用だってできるかもしれない…。
そんな事を考えていると後ろから気配を感じた。アリスが食事を終えて、帰ってきたのだろう。
「……あれ? アリス…ではないよな?」
髪も金髪ではなく黒髪で茶色のフードも着ていない。着ている服は季節外れの白いワンピースである。
「…誰だろう? 部屋…間違えたのかな…。…それとも掃除の人?」
長い黒髪の女の子はスーッと音もなく窓際の椅子に座っていた。なにもせず…ただそこにあったかの様に座っていた。掃除の人でもないようだ。
「……」
…間違って入ってきた? …電気もつけずに?
僕は天井の電球を見上げて、再び女の子を確認した。もう嫌な予感しかしなかった。
「まさか…」
ここで一つの悪い予想が浮かんできた。現在、僕が幽霊になっているということは幽霊がいるという証明でもある。もし、本物の幽霊が本当にいたら僕には見えるんじゃないだろうか? いや、もっと短くいうと……。
「………ぎゃあああああ! でたぁああああああ!」
僕が悲鳴をあげると誰かも同時に悲鳴もあげた。僕は襲われまいと一心不乱にバタバタしていた。
「…きゃあああああ!」
気がつくとスキルは解除されていた。どうやら、今の悲鳴はアリスのようだった。ドアのところに食物が入った荷物を落として立ち尽くしている。
「…戻ったのか……」
「…どうしたの?」
「…ごっ、ごめん。実は…いてっ…。……ぎゃあああ!」
ソファーから起きあがろうとしたが腰が抜けてさっきの椅子の前に転んでしまった。
「…大丈夫? 悪い夢でもみたの? とりあえずこの椅子に座る?」
アリスは椅子を近くまで持ってこようとしたので、僕は大声を出してアリスを止めた。
「…触るなぁああ!」
「どっ、どうしたの!?」
「その椅子には触るな! …絶対だ!! …絶対に触るな!!!」
「…えっ!? どういうこと?」
彼女は混乱している様子だったが、僕はその数百倍混乱している自信はある。そうこうしているとドアから白猫がやってきた。
「…急に大きい声上げてどうしたんだい? 他のお客さんに迷惑なんだけどねぇ…」
「…おい、白猫! こっ、この部屋、幽霊いるだろ!?」
「何言ってるのよ…。そんなのいるわけ……」
「……あんた、彼女が見えるのかい?」
「…そこに座ってんだよ! その椅子に!!」
そのセリフを聞いた途端に椅子の近くに立っていたアリスは震えながら一歩一歩なんとか離れようとこちらに向かって歩いていたが、段々と顔が真っ青になり僕の方にフラフラと倒れてきた。
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