第20話 夢幻都市名古屋

 2021年2月


 夢の中で、私は修学旅行中の高校生だった。コロナ禍のもと皆マスクをつけている。


 舞台は名古屋。

 名古屋駅に着いたら市内を自由行動する時間だ。

 駅構内は混雑するので、いったん最寄りのゲームセンター内に皆で移動する。そこで次の集合場所と時間など説明を聞いてから解散。

 そんなばかな。修学旅行生が何クラスもゲーセンに収まるものか。それにBGMや効果音で先生の声が通らないだろう。

 でもこれは夢。

 ちなみに次の集合場所もこのゲーセンだ。


 それから何をしたかよく覚えていない。

 名古屋には見所がたくさんあることと思うが、これは夢。

 

 時間を忘れるほど楽しかったのは確かだ。

 私は仲間からはぐれてずいぶん移動したらしく、集合場所である名古屋駅(の近くのゲーセン)まで電車も利用しなければならなかった。


 何とかいう駅に着いて、名古屋駅行きのホームへ降りようとした。

 非現実的なエスカレーター的なものがある。手すりに掴まり1人用の台座に立って乗ると、丁度良い速さでレールに沿って下りてゆくのだ。楽しい。


 折よくホームに着いた電車に乗ったは良いが、降りる駅を間違えてしまい、名古屋駅までタクシーで行くことにした。

 修学旅行生の財布!


 タクシー乗り場に、同じ制服を着たOさんがいた。彼女は現実には小学校しか同じではない。少し苦手な人だった。

 けれどこの際行き先は同じだし、背に腹は変えられず、タクシー代を折半する約束で同乗した。


 タクシーの中、不意にOさんが私の耳の下を紙のようなもので擦ったので驚いた。

「産毛が濃くなってるよ」

 そういえば、このごろマスクを付けっぱなしで肌の手入れが疎かになっていた。

 それに比べてOさんは綺麗だ。

 私の耳の下はすべすべになっている。

「Oさん、今のいいね。どこのメーカー?」


 答えを聞く前にタクシーは名古屋駅に着いた。近くのゲーセンに集合するのは同じでもクラスが違えばフロアも違う。すぐにそれぞれ人混みに紛れてしまった。


 苦手だと思っていた人の親切が嬉しかった。夢だけど。





  *  *  *


 この夢の中では高校生の設定でしたが、現実に小学校の修学旅行先は名古屋でした。

 そのころの名古屋には路面電車が通っていました。

 夢で小学校の同級生が登場するなら、路面電車にも乗れたら良かったな、と思います。


 夢幻路面電車。





 

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