召喚失敗勇者と捕縛
『
ゲルメヌトの捜索の為、探査魔法を使用してみたんだけど……あ、これ結構まずい奴だ。
探査魔法を使用した瞬間に私の脳内には、魔法の探知範囲の情報が瞬時に入って来る感じがした。
ただ、今回はゲルメヌトのみに探査をかけたからよかったけど、これほど広範囲に無作為に探査をかけていたら一瞬でオーバーフローして倒れていたかもしれない。
勇者の知識も案外あてにならないのか、今回は単一の相手を捜索するだけだったからそう言った注意事項が思いつかなかったのかな?
そんなことよりゲルメヌトの居場所なんだけど、今朝出て行った馬車違う方向でかなりの距離行ったところに探査結果が出たんだけど……よし、ついでにこれも使っちゃえ。
『
魔法を使うと私の視点が切り替わり、ゲルメヌトが居る所を映し出す。
ゲルメヌトが居るのは、王都から数十キロ離れた別の街に既に居るみたい。
格好は司祭の様な格好ではなく普通の商人の様な服装に着替えては居るが、このなにか嫌な感じのする顔だけは忘れようもないから間違いないはず。
場所は大きな屋敷の地下みたいなんだけど、内装や調度品は結構良さそうなものを使っているみたいだし、周りにあまり見たくない格好をした女性達を侍らせているみたいだから居心地は良いみたいなんだけど……嫌なもの見ちゃったな。
馬車に乗って逃げたのでも王都に残っていたわけでもなく、どうやってこんなに早く別の街まで行くことができたのかしら? もしかして転移魔法でもつかえるのかな?
「ねえ、ゲルメヌトってどんな魔法が使えるの?」
「……そうですね。聞くところによると、ゲルメヌトは一部ではありますが超越魔法が使えると言う事はわかっているのですが、実際どの程度の魔法が使えるのかは不明です。回復系の魔法が使えることは分かっているのですが、それ以外は直接見たことが無いもので」
そりゃそうよね。司祭なんだから治療とかで魔法は使う事はあるでしょうけど、流石に攻撃とかの魔法を自分から使う事は無いでしょうから、わからないのも当然よね。
「とりあえず居場所はわかったから、ベロニカさんが合流したら対策を考えましょう」
「見つけたのですか! ゲルメヌトはどこに居るのですか?」
パーラー君は私に王国の地図を見せてきたので、ゲルメヌトがどこに居たかを地図上で教えてあげる。
「……ガイの街ですか」
「ガイの街だって! アカリ様、街のどのあたりに居たか分かりますか!? 」
「まってまって! えっと、この街ってこんな感じで壁があるよね? それの大体この辺りの建物の地下かな? うーん、詳しい地図か何かがあればすぐにわかるんだけど、これだけじゃわからないよね」
「……いえ、大体わかりました。街に付いたらその場所までは私が案内できます」
ビュー君がガイの街と言う名前を聞いて私に場所を聞いて来たんだけど、今はかくものが無かったから地面に大体の場所を書いただけだったんだけど、それで大体のばしょが分かったみたい。
後で聞いたんだけど、ガイの街はビュー君の家が領主をしている街だったんだって。場所もだいたい奴隷商の屋敷のある付近だったから、そこの地下に潜伏していると思うってことだったみたい。
暫くしてベロニカさん達が合流して、ゲルメヌトの居場所を説明してどうするか相談をした。
パーラー君達とベロニカさんで相談した結果、今からなら今日中に到着することが出来るので急ぎ向かう事になった。
急ぐ理由は、今はまだここに居るけど未だに王都から近い為まだ逃走する恐れがあると言う事と、その奴隷商も恐らくグルだろうから証拠を処分される前に捕縛しておきたいんだって。
そしてガイの街に向かったんだけど、舗装されていない道を馬車にガタンゴトン揺られて、途中車酔いみたいなものにはなるし、クッションがあまり良くないからお尻は痛くなるしで散々な行程を数時間経験し、夕刻前にようやくガイの街までたどり着いた。
「……ば、馬車には……もう乗りたくない」
「あ、アカリ様! お気を確かに! 」
私は馬車から降りると、馬車に寄り掛かる様に座り込んでしまい、気を使ったみんなが直ぐに宿を手配して私を搬送して行った。
その後、私が復活したのはハンナ達が薬屋でポーションを買って飲ませてくれるれる一時間後まで、宿のベットでダウンしてしまった。
「アカリ様申し訳ございませんでした。せめて酔い止めの薬は渡しておくべきでした」
「気にしないでハンナ。あなたが買って来てくれたポーションのおかげですっかり良くなったわ。私も馬車があんなに揺れるとは思わたかったし、元の世界でも車酔いなんてして事なかったからびっくりしたわよ」
「誠に申し訳ございません。本日中にはガイの街まで到着する必要があった物で、通常よりも急がせたせいでかなり揺れが酷くなったのです。……その、勇者であるアカリ様なら大丈夫かと思いまして……申し訳ございません!」
「ベロニカさんも気にしないで。私が勝手にあなた達の追ってる件に首を突っ込んだのだから、あなた達に合わせるのは当然よ。どちらかと言うと、私が足を引っ張てしまったみたいでごめんなさい」
ハンナとベロニカさんが謝罪してきたんだけど、どちらかと言うと私が勢いで出てきたせいで準備もままならなかっただろうし、私なら平気だと思うのは当然そうよね。
とりあえずこのままだと謝り合戦になりそうだったので、話を何とかまとめて今後の話をしようとみんなに部屋に入って来てもらった……んだけど、パーラー君の顔を見たら少しドキリとしてしまった。
なぜなら、パーラー君がお姫様抱っこで私を運んでくれたみたいなんだけど、恥ずかしいとかそんなことを考えている余裕が全くなくかなり損した気分だったけど、これは誰にも言えないわね。
誰もが振り返るような美男子にお姫様抱っこなんて女の子だったら誰もが憧れるけれど、面と向かってやってとは言えないしハンナ達に言ったらパーラー君にお姫様抱っこさせそうだからね。
でも……何か良い匂いがしたし……元の世界に帰る時に一度くらいお願いしてみようかな。
「それで、今はどんな状況? 」
「はい。それに付きましては、今ビューがいろいろ探りを入れているみたいですので、もうしばらくお待ちください」
「兵たちが門番に確認いたしましたが、今の所ゲルメルトや奴隷証人と思われる者達はまだこの街から出てはいないようです」
「パーラー君、ベロニカさんありがとう。そうなると、ビュー君待ちと言う事にはなるんでしょうけど、恐らく相手方には私達が街に入ったことはしられていそうよね?」
「……恐らくは。そのため、襲撃するにしても直ぐに行動を起こすのではなく、深夜の人が居ない時間帯に突入するのがよろしいかと」
まあ、これだけ大勢の兵士が街に入ったら確実にばれるでしょうし、そんな状態で守りを固めない様な人達だったら始めから逃走しようとは思わないでしょうからね。
「それじゃあベロニカさん、兵士の皆さんは食事と休憩をとってもらってください」
「畏まりました。それでは失礼いたします」
ベロニカさんは背筋をピンと伸ばして敬礼をして、部屋から退出して行った。
実直なタイプの人で信頼は出来そうなんだけど、なんだかこんな仕事がとても似合わない感じがするわ。
それはともかくとして、今後のこちらの行動決めておかないといけないわね。
「それで、皆に聞きたいんだけどこのまま襲撃したら大騒ぎになる気がするんだけど、そこの所はどう思う?」
「そうですね。まず深夜に宿を大人数で抜け出すこと自体が問題になるでしょうし、目的の奴隷商人の家は高級住宅街にありますので、色々根回ししておかないと問題になると思います」
「しかし、この街はビューの兄が領主をしている街ですので、そこに話を通しておけば問題中と思います」
「そうよね。パーラー君、ハンナありがとう。他に意見があったら言ってね、意見が多ければ多いほど見落としも少なくなると思うから」
パーラー君とハンナはやっぱりみんなのまとめ役だからしっかり発言してくれるけど、他の人達はあまり発言をしてくれないのよね。
そう言って皆を見回していると、アイリスちゃんが少し何か言いたそうにしている気がする。
「アイリスちゃん、何か意見はある?」
「あ! え、えっと……」
「アイリス前にも言ったけど、身分の事は気にしなくていいのよ? そんなことを気にしてアカリ様に迷惑をかけるほうが怒るわよ。それに、過去に盗賊とかと直接戦ったことがあるのはアイリスだけなんだから、その事で何か気が付いたことがあったのなら言ってね」
「そ、その。盗賊たちであれば逃走用の逃げ道とかをはじめから用意しているのですが、もしかしたら今回も同じように隠し通路とかから逃げたりするんじゃないかと。それに、抵抗してるくるのは恐らく奴隷の人達だと思うのですけど、その人たちは命令で強制させられているだけだと思うので……その、捕まえるようにした方が良いと思うのですが……どうでしょうか?」
アイリスの発言に皆がギョッとした表情を一瞬浮かべていたが、瞬時にいつもの表情に戻していた……流石貴族、立ち直りも早いわね。
アイリスの意見をもとに皆で話し合いをしたんだけど、たぶんアイリスの想定している通りに事が進む可能が一番高そうと言う事になった。
奴隷は、体のどこかに奴隷印と言う紋章を魔法で刻まれているらしく、所有者の命令には絶対に逆らえない様になっているんだって。
なんでも、逆らおうとすると身動きが取れなくなるだけじゃなくて、耐え難い苦痛が全身に走るらしい。
この国に居るのは、犯罪奴隷か他国から来た商人が連れて来た奴隷しかいないみたいなんだけど、この間みたいに拉致されて強制的に奴隷にされている子がいる可能性もあるから、奴隷の人達は出来る限り全員捕縛することが好ましい。
それに、逃走用の地下通路とか作られていたら逃げられてしまう恐れもあるから、作成をしっかりと練り直す必要がありそうね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます