ファンタジッククリエイターズ

新浜 星路

ファンタジックノベライター1.2

この世界は、小説家が世界を統べる世界である。

そうなったのは、母なる神による啓示があった為である。

神はこのように言ったとされる。

「次世代の神を欲している。だから小説の登場キャラが具現化するような機能を人間につけといたぞ。

その能力を使って、戦い、頂点になったと私が認めた時、次世代の神がきまる」

とかなりアバウトではあるがこんな感じだ。

うーん、なんか適当な神だ。バカな神なのか、ユニークな神なのか。

俺は別に神になるかなんてどうだっていいが、どうせやるなら可愛い女の子を沢山作っちまうか。

そんなことを丘で寝そべりながら考えていたら、我が自慢のキャラである美雪がのぞき込んできた。白いワンピースから飛び出そうな巨乳が揺れた。やっぱ最高だな美雪は。

「トナタ! 今日はクリスマスでしょ! ノベルバトルイベントに出て優勝して

私を人間にしてくれるっていったじゃない」

「そうだな、勝つよ」

そこまでやる気はないけど。

「あーやる気ないでしょ」

「ばれてた」

「顔みればすーぐわかるんだからね!」

美雪が人間になりたがるのはわかる。彼女にとっての本当のハッピーエンドはリアルなのだ。

だが創り主おやとしてはいつまでも美雪が傍にいてくれればいい。そう思ってしまう。

あ、なんで登場してくる女キャラ1人しかまだいないんだって思ったろ?

それは俺の能力じゃ可愛い女の子をいくつもガトリングのように出せないからな。

「カワベさんも出るっていうから絶対頑張ってよ!」

「あいつも出るのか……」

カワベリョージ。あいつは可愛い女の子を量産する能力がある。

だからあいつん家はハーレムだ。なんでも12人のかわいい妹を統べているんだとか。どんなシ〇プリですか。

「とんだ強敵でしょ!だから頑張ってよ」

「え、でもあいつが書く女の子嘘っぽいじゃん」

「だけど受賞歴すごいんでしょ?12回受賞して本当の妹にしたらしいじゃん」

「あのねえ、あんな嘘で塗り固められたやつと、美雪じゃ雲泥の差だよ」

「だけど、私受賞してないもん・・・」

「そりゃキャラクターは引き立て合わないとね。本来」

「じゃあなんでトナタは私だけつくったの?」

「そりゃあお前に愛があるからさ」

「たまにトナタって平気で恥ずかしいこという……」

美雪は顔を赤らめる。

というか俺の能力が、本来キャラクターは2人同時に作らなくてはいけないんだけども単身でも可愛いってのが俺の能力。能力名は「オンリーワン」だな。

その代わり……他のキャラクター考える気がおきん。

「私を姉妹にするのはどう? 妹作って夏月とかさ」

「どこの安直なラノベライターだよ。冬と夏だしときゃいいやって。

お前は雪のように美しく清い白さであってほしいという願いから創ってるんだぞ」

「それ、初耳……普段はぐらかすくせに」

美雪は不服そうだ。

「わかったよ、ノベバトに出てやるよ」

その返答に直様、美雪も破顔する。

「がんばってね、当日はお弁当もつくるから」

それに俺もいつかは、倒さなくてはならない相手がいる。


俺の父親は小説家だった。

ノベルバトルの決勝戦、優勝したその後、俺は殺されるところを見ていた。

あの時の光景、俺は忘れられない。

父親の瞳孔、刺さるナイフ、吹き出る血、殺人鬼の口角。

俺の心臓、すべてが、煽動する。

いやだ……いやだいやだあああああああああああああ

そのような過去の投影が俺をたまに苦しめる。

殺人犯はおそらく、キャラクターに殺させた。

許せない、キャラクターに殺させるのもだ。

愛があればキャラクターに殺人なんてさせない。

本来、キャラクターに殺人させることなどできない。

だが、聞いたことある。ノベル四天王の一人に、キャラクターを自在に動かせる、

オートマチックにキャラクターを動かせるやつがいると。

そんな小説家みたことがない。

そんな化け物がいるなんて思いたくもない。

俺は俺にしか書けない小説がかければ本当はいい。

でも俺が美雪を創ったときからそんなことは許されないんだろう。

恐らく小説家はもとからキャラクターを人間リアルにしたいって思っている。


ノベバト会場は熱気と静けさが両立していた。

俺の一回戦の相手は田楽 落乃助だった。

なんちゅー名前だ。

「なんてよむの? たらく おちのすけ?」

「いや、普通にでんがくらくのすけじゃないのか」

「でんがく、美味しそうな名前だね。おでんじゃん」

「ああ、おでんだな、人の名前で遊んでいいのはそいつがいないときだけな」

そういう問題ではないが対戦相手を弄っていないと緊張して身が持たない。

「はーい、それでいつ始まるの?というかどんなルールなの?私初めてみるよ」

「少し落ち着け、ルールは簡単。審査員をより感動させたほうが勝ちだ。

Twitter風にいえばエモらせるのさ」

「なんか、難しい?それ?」

「難しいよ、審査員によってかなり左右される。白田っていう審判は大味のものを好むし、臼井は厳しめだ、何度もキャラクターの動きや表情、セリフをチェックされる」

「私が出場したら勝てるじゃん」

「いや、美雪は出場権がないんだ。即興で創り出したもののみなんだよ」

「ちぇー、お代官様そこをなんとか……」

「そういう悪事を働いて賞をとっても意味がない。この世界は能力社会だからすぐ蹴落とされる。そういうよからぬことを考えるやつもいるけど、まあ読者は正直。

審査員なんて神ではなくても天使クラスで能力が使えるんだ。

俺の能力よりもとんでもないやつがいてもおかしくない。」

「早くにんげんになりたーい!」

「なれません!」

「けち!」

美雪が言い合いになった時に誰かにぶつかる。

「あ、すみません」

美雪にぶつかった男、見た所、洒落て小奇麗で、いかにもモテそうだ。

どうしてこんなやつがこの世界にいるのか。

「いいやいいんだ。可愛いね、今度お茶にいかないかい」

甘い声をかけるこいつは誰だ。

美雪は俺のキャラクターだぞ。

「あ、そんな気にしないでください」

「そこは気にしとけ。対戦相手を待ってるんだがお前が田楽か?」

「そうだ」

「おで……」

「それをいうな! 唯一の汚点なのだ。名前のせいで、俺は幼少期からからかわれ、

人間不信になり……」

「なんて可哀想……」

美雪は目を潤ませて共感している。

「お前それ嘘だろ?」

「そうに決まってるだろ?」

田楽は何事もなかったような態度をとる。

「だよな、作家は大嘘つき共ばかりだからな。で、その嘘で女の子をクイモンにしてたと」

「そんな言い方ないだろ? 俺は優しくしていた。女性に嘘はついていない」

「ついていないが、ヒモにしている、だろ」

「そんなことはどうでもいい! 審査員はどこだ!」

「スルーしたな、暗黙のイエスか」

「心は不潔な方ですね」

「ま、恋愛作家ってそんなもんだろうけどな、処女や童貞が書けるほど甘くはない」

「恋愛作家って自称する人は確かに多いな。でも可愛くていいじゃないか」

「もうお前が言っても嘘にしか聞こえない」

「ええ、本当に」

「美雪はもう言わなくていい。お前まで汚れなくていいんだ」

「はい、わかりました」

美雪はノリもよくて可愛い、正直、美雪だけいれば他のキャラクターなんていらないんだが、ここは勝つしかあるまい。

突然、白い衣服を纏った者が現れた。

「はい、審査員の笠原です、よろしく。ルールは双方よくわかってるね。ワンキャラクタールール。一体だけキャラクターを創造してください、その上でキャラクター同士会話をします。作者のフォローはなしです。ではいいですね」

「「はい」」

こうしてノベバトは始まった。


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