第8話 レイッて娘《こ》

「知らないよ❗

 そんなジェラルミンケースなんて❗❗」

 馬場は必死に首を振って否定した。


「それだけじゃない…… 凶器からもだ」

「え、凶器からも……」

 ナイフからも指紋が…… 


「もちろんアリバイもないしなァ」


「ア、アリバイなんて…… 夜中にアリバイのある独身男性がどこにいるンだよ……」


「うン……」

 確かに、馬場言う通りだ。


「まだ他にも、あの『事件』の後、馬場カレは急に金回りが良くなったンだ……

 まとまった借金も返済かえしているし」

 山村は顎で馬場を差した。


「そ、それは……」

 眉をひそめ馬場は視線を逸らせた。

「……」


馬場カレが、クラブで使った金にも被害者…… 金倉氏の指紋が付着していたんだ」


「え……」

 なるほど、だから任意で取り調べを……

 この恐持こわもて警部は見かけ以上に敏腕なのかもしれない。


「じゃ、決まりねぇ❗❗」

 クリスも微笑んだ。

「え……」


馬場カレが、ラブリから金倉氏の屋敷の情報を聴き、強盗に入って『ジェラルミンケース』を盗み出したンでしょ……」


「そ、そんな…… 違うッて❗❗」  

 盛んに首を振った。


「そうだ……、ッで、いざ一億円を目の前にするとラブリと山分けするのが惜しくなって、共犯の彼女を殺して一億円を独り占めした……」

 山村が引き継いだ。


「ンな…… 違う❗ 知らないッて❗

 一億円なんて見たこともねぇ~よ❗」


「じゃ、三百万のお金はどうしたのよ❓❓」

 クリスの言う通りだ。

 是非、俺にも納得のいく答えを聴きたい。


「だから…、その……

 三百万はもらったンだッて」

 ボソボソと馬場が応えた。

「な、三百万も貰った……」

 俺も信じられない。


「おいおい、小学生かァ~❓

 どっかの資産家セレブに、お年玉でも貰ったのかァ~ー❗」

 山村が怒鳴った。


本当マジなンだよ…… 夜中、コンビニから帰る時、レイッてが俺の元へ逃げて来て」


「なんだ。そのレイッてれ違いざまに三百万円を恵んでくれたのか❓」

 山村はバカにするような口調だ。


「ち、違うよ…… 

 あの夜、『ストーカーに追われているから助けてェ……』ッて俺の背後に回って来て、だから俺は彼女をストーカーからかばったンだ……」

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