好きだからこそ 17


先生らしき人の声が聞こえてなかったのか、藍はオレの事をいっこうに離そうとしない。



「ね…藍…?」



藍との間に腕を入れて、離れようとしたけど、びくともしない。

本当にどうした?藍…。



「オイ、お前ら離れろ。」



ひやぁぁ、やっぱまずいでしょ、藍?



「す、すみません…、」



オレが必死にもがいていると、



「野暮な事言うなよ、宮内。」



ぁ…哲哉さんだ…て事は、校門で会った先生かな?



「愛ちゃん、気にしないで続けてて良いからね。」



続けて_て…、



「テツ、お前な…」


「宮内…相変わらず、頭堅いね。」



頭を胸に押し付けられてるため、全然状況が、把握出来ない。


頭だけで、胸にグリグリともがいていると



「マジで抱きたくなるから、それ止めろ。」



頭を押さえていた手を離してくれたので、藍を見上げると、さっきまでとはうってかわって、切なそうな…今にも泣き出しそうな顔をしていた。


そんな表情にのまれていると、藍が口を開いた。



「…愛は、平気なのかよ。」


「…え?」


「先週の金曜日から、愛に触れてない。おかしくなりそうだった。」


「ぁ…」



ぅ…ズルい…。


そんな…甘えたの瞳で、見つめられたら…


オレだって…もたない…。


「オレも…」て、言いかけた時、藍が一歩早かった。



「さっきオレ…頑張ったなって言ったけど…ホントは、嫌だった。 お前が、オレの腕の中から、どっかに行っちまいそうで…。」


「…藍? オレ…どこにも行かないよ?」



オレは、今日、


藍の傍に居られなくてもいい、

藍に対するみんなの誤解を解きたい


そう思って、ここに来た。


でも…でも、それは違った。



「これからも、ずっと傍に居たいから頑張ったんだ。」


「…愛。」



ほんのり紅い目許と濡れた瞳、艶のある唇が近づいてきて…


ああ…このまま、奪われちゃってもいいかな?なんて…



ウォホンッ!


誰かの咳払いが…



「テツ。今のは邪魔して良かったよな?」


「そうだね。ここには、ベッドも無いしね。」



危ない…流されるところだった。



「名残惜しいかもしれないけど、そろそろ…、」



哲哉さんが、申し訳無さそうに呟いた。


そうだよね。お昼休みも、そろそろ終わるだろうし…。


そう思って、藍を見上げると、藍も漸く身体を離してくれた。



「愛?」


「ん?」



藍は、オレの指に指を絡めてきた。

離れたくないとでも言うように。



「今晩、電話する。大事な話があるから。」


「ぁ…オレも! 話したい事、いっぱいある…!」



藍は、クスッと笑うと「そうだね。」と、呟いた。


そこへ終わりを告げる予鈴が_。



「ぁ…あの…これだけ…」



藍は、優しく小首を傾げて、オレが話しやすいように待ってくれてる。



「黒髪も素敵だったけど…やっぱり、その髪と瞳が好き。オレの天使みたい。」


「なっ…!」



ボンッと音がするんじゃないか?と思うくらい、一瞬で顔が赤くなった藍。



「ぉ…女でも口説いてんのかよ。馬鹿言って無いで、早く帰れよ。」


「ぅ…うん…。」



うーん。藍の赤くなるポイントが、いまだにわからない。


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