女の子……? 6


「お邪魔しまーす…。」



玄関から廊下を抜けて、突き当たりの扉を開けると………

 

うわぁ……。

 

何て言った?………こういう部屋。


アーリーアメリカンカントリー………的な?


ちょっとお袋の趣味に似てるな。


まぁ……男には、この発想は無ぇよな。


8畳位の広さで、フローリングの床にラグが敷いてある。


真ん中には、ローテーブル。


壁際に、背の低いカントリー調の戸棚。

 

ソファは無くて、無造作にクッションが、沢山置かれていた。



「座ってて。すぐ用意するから。」



オープンキッチンになっていて、シンクで手を洗いながら話しかけている。



「嫌いなものとか、ある?」  


「いや……特に無いです。」 



何気に窓を見ると、出窓になっていて、そこにも、クッションが置かれていた。


ここ高台でマンションの7階だから、景色も良いんだろうな……。


なんて……する事も無いので、キョロキョロしていると、


トントントントン………


まな板の音がしてきた。


誰かが作る料理をこんな風に待ってるなんて……、何年ぶりだろ……。

高校入学と同時に、ひとり暮らし始めたし……、

その前から、自炊してたから………


最近……誰に作って貰った?

 

ああ……ばあちゃん……?


小学6年の時か……。


オレは、ローテーブルに突っ伏して、キッチンから聞こえてくる幸せな音を聞きながら、いつの間にか眠ってしまった……。





*****


 



何かの物音で……という訳ではなく、自然と目が覚めた。 


見慣れない天井……。


覚えの無い布団の感触……。


あれ?! オレ……?


身体を起こして、辺りを見回した。

 


「起きた?」


「……えっ?」



寝起きで目が慣れてないせいか、相手の顔がよく見えない。



「……えっと……?」


紫津木しづきくん……昨日、夕飯食べる前に寝ちゃったんだよ。」


昨日……?

 

ああ……。


思い出してきた……。

 

オレ……如月きさらぎさんのマンションにお邪魔して……

 

寝ちゃったのか………マヌケ。

 

見覚えのある可愛い部屋に……、

 

如月きさらぎさんの顔_て、……如月きさらぎさん?



「オレ……なんかしました?」   

 


驚いた顔してるけど?



「大丈夫?」


「えっ?」



オレが聞き返すと、如月きさらぎさんは、そっと、オレの頬に触れた。


彼女の指には、水滴が…。


……へ?


なんで?涙? オレ……泣いてた?



「なにか、あったんですか?」


「いや……。」

 


久しぶりに、昔の夢でも見たんだろうか?



夢で泣くなんて……本当……マヌケ……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る