第1話 女の子……? 1


とあるスタジオ_。



某雑誌のグラビア撮影が行われていた。



カシャッ カシャッ 



シャッターを切る音が、スタジオに響きわたる。



紫津木しづき。 レンズを見て、色っぽく笑ってみて。 女性を口説くような感じで……。 あっ……いいね。そのまま!」



カシャッ カシャッ

 


オレ紫津木しづきあおは、ファッション雑誌Violet(ヴァイオレット)でモデルをやってる。


今日は、その雑誌ではなく、他の雑誌_。


Violet 以外の仕事をするのは初。



「紫津木。背中向けて上半身だけ脱いでみようか。そう!顔だけ横向く感じで……。」



なぜかオレは、女物の襦袢を着て、上半身を露わにしている……。


腐女子という生き物は、こんなのがいいのか……?



この仕事を貰ったのは、ちょうど一週間前。


なんでも腐女子向けの漫画雑誌で、巻頭グラビアを飾るらしいが、


『フジョシ』なんて、初めて聞くワードで………、


未だに、よくわかっていない……。



*****




「ハーイOK! おつかれぇー!」



ふぅ……終わったぁ……。

オレは、ひとつ息をついて、脱いでいた襦袢を羽織った。 



「お疲れさまでした。失礼します!」



スタッフに頭を下げながら出口付近に向かうと、所属事務所の社長がいることに気づいた。  



「社長。お疲れさまでした。もういらしてたんですか……?」 

 


この後、社長に夕食をご馳走になる約束になっていた。



「久しぶりに、紫津木クンの仕事ぶりでも見ておこうか、と思ってね。」


「ありがとうございます。」


「どうだね?フローラの方は?」


 

フローラ………? あっ……。雑誌名も知らなかった。 やべっ……!



「……戸惑いはあります。 今までのように服が主役ではないので……どう表現すればいいのか………勉強になります。」


「そうか。 フローラで実施した読者アンケートで、1位を獲得したのだから、自信を持ってやりなさい。」


「はい。……ありがとうございます。」



どんなアンケートだったか、オレ知らないんだよね……。



「そうだ。このコの事なんだがね……、」



このコ………?

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