人間模様12 いにしえのスナック

herosea

転校

ヒロシは、団塊の世代と団塊ジュニアの狭間に生まれている。高度成長期というものが思春期の頃まで続いた。その後、オイルショックがやってきて時代は一気に不景気モードにとなり、それが大学卒業まで続き、社会人になると世の中はいつのまにかバブル景気となっていた。ヒロシの20代はハプル景気とともに華やかに遊んだ時代だった。その後、泡が弾けて、30代以降は長い不景気トンネルのなかでサラリーマン生活を続けている。


 このエピソードの始まりは、ヒロシが生まれてから最初の不景気に傾くきっかけとなったオイルショックの頃からのこととなる。


 ヒロシは茨城県の企業城下町で生まれた。某総合電機メーカーの工場がたくさんある町だ。工場もたくさんあったが、山も川も、そして海もと自然の多い田舎の町だった。会社が採用したたくさんの大学出の技術者の家族が、地元の農家や漁師と共存して暮らしていた。


 ヒロシは、父親と同じ会社に務める家族の子供達というより、地元の農家の息子達といつもいたずらまがいのことばかりして遊んでいた。自然が多く遊ぶには素材がたくさんある環境であった。


 小学校6年上がる時、親が東京の本社へ転勤となった。それとともにヒロシも東京へと移り住むことになった。移り住んだところは豊島区、西武池袋線の沿線である。田舎とはまったく違う環境であった。この地域は人の移り変わりが早い。企業の社宅アパートがいくつもあったため転勤族が多かった。親が転勤で東京に来るとこのエリアの企業社宅に入る。子供はこの地域の小学校・中学校に転入する。そしてまた親が転勤すると子供も転向してしまう。親の転勤だけではなく、マイホームを建てて企業社宅から出て行く家族も多かった。ヒロシも親の転勤とともにこの地域に引っ越してきた典型であった。


 ヒロシは公立の小学校へと転入した。小学校時代は田舎ッペを引きずっていたが、成績がそこそこ良かったこともあった。そして、自然で育ったヒロシは田舎の方言を気にすることなく元気に振る舞った。田舎流に目立とうとするのは東京では新鮮に受け入れられたらしい。ちょっとした優等生に祭り上げられた。東京では・・どちらかというと斜に構える子供が多かったこともある。そのまま公立の中学校に入った後も優等生っぽさはつづく。


 中学校は区内でも1,2位を争う優秀校だったが、一方で不良も多いと評判であった。タバコ、アンパン(シンナー)、そして売春、諸々にはまる少年少女もいた。修学旅行で不良グループの乱交パーティーまがいの行為が発覚して大問題となったこともある。先生達も親達も学校の品位を落としてはいけないと隠蔽に必死なったりと・・、とにかく荒れていた。この時代の世相であった。中学や高校が・・とても荒れていたのだ。当時の世相のキーワードが当てはまる。番長、スケ番、暴走族・・。豊島区の一番の繁華街は池袋であり、ヒロシの住んでいた地域も近いことも影響した。中学には不良崩れが多かったのである。


 ヒロシは学校では優等生の中学生だったが、周りに不良崩れの友達と付き合ううちに、学校の外に出ると素行は確実に外れていった。タバコは中学校1年の時に初めて吸った。お陰で30才半ばまでチェーンスモーカーを続けることになる。中学校2年のころからは賭け事も覚えた。パチンコ、競馬・・、特に麻雀にはのめり込んだ。田舎育ちということで体力はあった。だから他校との喧嘩にも駆り出された。もっとも、田舎とは違って取っ組み合いになることは滅多になかったが。

 不良っぽくしていたが進学はするつもりで勉強は隠れてしていた・・悪になりきれない中途半端な中学生だった。

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