第17話『双子の四天王・陰陽襲来!』

「スケキヨかな?」



大地からまるで大根の

ように4つのスラリとした

足が生えていた。


その光景はまるで

犬神家の一族の

スケキヨのようであった。



時間は今から

数分前にさかのぼる。



・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・



村の数十メートル上空に

黒色と白色がマーブルに

混じりあったドラゴン、

混沌の翼竜ケイオス・ドラゴンにまたがった

双子の兄弟があらわれた。


魔王四天王の一人双子である。

混沌の翼竜ケイオス・ドラゴンの上から、双子が地上の

サトシに向かって叫ぶ。



「お前が、魔神将ドヴォルザークと」


「魔王軍精鋭の1000の兵を」


「「倒した強者か!」」



サトシは突然あらわれた

翼竜と双子を見上げて

淡々と答える。



「ああ。そうだよ。んで、

 君たちはわざわざこんな

 化外の地まで何しにきたの?

 というか君ら何者?」



ここは地図に記されていない

化外の地。つまり、人族の領地でも

魔族の領土でもない

未開拓のThe・辺境だ。


勇者討伐に忙しい魔王軍が

本来来るような場所ではない。



「ふふふふふ」


「聞かれたら」


「答えてやるのが」


「「世の定め!」」



(ロケッ○団の

 ムサシとコジローかな?)



「彼の者の名は、ユン


まず応えたのは、

右目が青目のオッドアイの少年。


衣装は蒼色の陰陽師風の服。

服の丈は限りなく短く

機能性重視の形状の服を着ている。

ショタ好みされそうな男児であった。



「其の者の名は、ヤン


左目が赤目のオッドアイの少女。

衣装は朱色の陰陽師風の服。

服の丈は限りなく短い機能性を

高くした形状の服を着ている。

よく見ると兄とは違い、服の

あちこちに子供らしい装飾がある。



「「我ら二人で一柱の四天王、陰陽ユンヤン」」



身長は100cm。

10歳のオッドアイの双子。

パッと見は双子の姉妹に

見えるが、性別は異なる。



「行くわ――兄者あにじゃ


「行くぞ――妹者いもじゃ



そう言うと、

ヤンは右手のひらを

ユンの左手のひらに重ね


ヤンは左手のひらを

ユンの右手のひらに重ね、


双子は、目を瞑り詠唱を始める。




「精霊の祝福を受けし聖なる光よ」


くらき水の底から這いいずる闇よ」


「光と闇が重なりあうとき


「月は太陽を喰らい」


「極光となりて」


「我らの敵を滅ぼさん!」




「「終焉萌す日蝕ジ・エンド・エクリプス」」




少年と少女が詠唱を告げると

村の上空は夜のとばりに覆われ、

闇夜に覆われる。


そして、闇夜にその頭上に巨大な

白光を放つ太陽が一つ。


その太陽から白と黒が

混じり合い、まるで

重ね合わせとなり

陰陽の太極図のようになる。


その太陽から膨大な熱量の

光と闇のエネルギーが

サトシに向かって解き放たれる。



(ん……っなんってもん放ち

 やがるんだクソガキ共っ!

 あんなもの村に落とされたら

 タダじゃすまねぇ!

 それに、いまはミミが身重だ

 1ミリたりともあんな物を

 村に落とさせねぇっ!!!)



サトシは、地面に両手をかざし

速攻で土属性を発動させる。




「うおおっ! "土壁ウオール" "延伸エクステンド" "加速アクセル"」




銀色の激しい光が地面から生じ、

その直後、超速で大地から隆起した

土が巨大な壁となりせり上がり

刹那、数十メートル上空の

双子にむかって襲いかかる。



「無駄だ!」


「土ごときが」


「光と」


「闇を」


「束ねた」


「力に……」


「「叶うはずがないっ!」」



超巨大な質量のマナの奔流が

土壁を飲み込まんと……。



――否。



「そんなこと」


「こんなこと」


「「ありえない!」」



四天王のユンヤンが

放った巨大な光と闇の

マナの奔流は


サトシが放った土という

単純な物理現象のゴリ押し

のパワーに飲み込まれた。


目の前に展開した

陰陽の太極図の形状の

魔法陣はガラス細工の

ように打ち砕かれた。



そして、更に魔法陣を破壊した

その土壁の先端から、ぬるりと

飛び出してきた2体のゴーレムが

両手を組みハンマーのように振り下ろす。


二人は頭上からゴーレムの

ハンマーパンチの直撃を受け、

地面に頭上から超速度で

落下する。



「おっと。このクソガキどもは

 ユミルさんの関係者なんだったな

 村のみんなを危険を晒したからには

 本当はボコリたいところだが、 

 ――"弱化レッサー" "沼地スワム"」



サトシが土属性を発動。

四天王の双子が頭上から落ちた

部分のみが沼地になり、

優しく二人の上半身を包み込んだ。



・・・・・・・・・


・・・・・・


・・・



サトシは目の前のスケキヨ2体上半身埋まった双子

目の前にして、慌ててやってきた

魔王ユミルにことの経緯を

簡単に説明する。



「かくかくしかじか……

 こういうわけなんです。

 ユミルさん、あなたのとこの

 部下が暴れたので何とか

 話をつけてくれますか?」



大地から二本づつ生えた、

四本の端正でスラリとした足を見て、

魔王ユミルは顔を見ずとも

双子のユンヤンであると理解した。



「分かりました。サトシさん。

 二人には我からきつく

 お灸をすえますので、一旦

 土から出してやってくれますか?」



「ああ。分かりました。

 "解除リリース"

 あとは、任せます」



上半身が地面に埋まっていた

二人がぬるりと地面から

這い出してくる。



「うわーん。ユミルナナヒカリ

 オレ、このおっさんにいじめられた!」


「うえーん。ユミル《コネ魔王》。

 ボク、アラフォーに暴力ふるわれた!」


「「たすけてー!」」



双子で一人の四天王は魔王ユミル

がなぜここに居るのかも考えず、

味方をしてくれるものと思い

助けを求める。10歳という

年齢を考慮してもアホの子たちである。



「こんのっ……どアホうがっ!」



魔王ユミルは左右の手を

ゲンコツにしてユンとヤンの

頭上にゲンコツを落とす。


普段の、紳士風のイケメン

を忘れさせるほどの

力強く雑な対応。

さすがはパワー=正義の

魔王といった感じである。




(うわー。いたそーっ!)



「パワハラだ!」


「セクハラだ!」


「お前らなあ……。

 我、何百回も言ったよな?

 勇者や敵対する冒険者以外とは

 絶対に争いはしないよーにって

 口を酸っぱくするよーに

 言ったよな!?」


「記憶に……」


「「ございません!」」


10歳のくせにまるで

政治家のようにしらを切る二人。


その態度をみて、更に

魔王ユミルは激怒。

今やユミルの全身から

魔王っぽい感じの漆黒の

オーラが渦巻いている。



(はは。ユミルさん、

 改めて思うが、マジで

 魔王だったんだな

 怒らせたら怖そうだ)



サトシがそんなことを考えていると、

もう一撃、魔王ユミルからあ

ゲンコツが振りかざされる。



「大体、仮に敵が勇者だった

 としても、一般人が住んでいる

 村が下にあるのにいきなり

 究極魔法とは頭のネジが

 一本外れているんじゃないか?

 あんなもの使ったらこの村はおろか

 森全体が吹き飛んでいたぞ。

 アホなのか? バカなのか?」



(まあ。実は、無尽蔵のエネルギーを

 供給するダンジョン・コアを

 埋め込んだ超強いゴーレムが90体

 以上村に居るから、あの極大魔法が

 地面に届くようなことはないのだが、

 それでも万が一って事はあるからな。

 村の住民にけが人とかでたら、

 さすがに俺もブチ切れていたところだ

 ミミが大変な時期でもあるしな)



サトシは腕を組みながら

そんなことを考えていると、

まるで子供の言い訳のように

双子は魔王に口答えをする。



「アホっていうやつがアホだ!」


「バカっていうやつがバカだ!」



更にもう一撃、魔王ユミルによる

ゲンコツが振りかざされる。



「あのなあ。あの方はサトシさんと

 言って、この村の村長であり一般人だ。

 四天王としてのプライド

 があるなら、カタギの一般人に

 対して暴力を振るったんだぞ。

 魔王軍幹部として恥ずべき振る舞いだ

 10歳とは言え四天王を語るなら恥をしれ!」


「えっ……おっさん、冒険者じゃないの?」


「アラフォーの人、一般人だったの?」



「ああ。俺は一般人であり、

 冒険者じゃない。

 それとな。まず、人のことを

 おっさんとかアラフォーとか

 言うもんじゃない。

 俺にはサトシって名前がある。

 そしてユミルさんの言う通り

 俺はこの村の村長だ。

 ギルドカードも返納した

 非戦闘職の一般人だ!」


「サトシ、ごめんなしゃい」


「サトシ、ゆるしてくだしゃい」



「駄目だ! 村長が許しても、

 魔王である我が許さぬ!!」




「ふえぇん……」


「はわわぁ……」



魔王の覇気に押されて思わず

びびっておしっこをもら

してしまう双子のユンヤン。


魔王ユミルは

双子に多少は反省の色が見えた

のを見て、漆黒のオーラを

制御し、紳士的に話しかける。



「今後、ユンとヤンはこの村で

 村長であるサトシさんの 

 仕事の手伝いをしなさい。

 お前達も一度は社会に

 もまれる経験というものを

 経験した方が良い年頃だ」


「わかった!」


「がってん!」




「あと、これは我の個人的な

 都合ではあるのだが、

 魔王城から我の世話をして

 くれたメイドのサーシャを

 この村に連れてきてほしいのだ。

 お前達サーシャは覚えてるか?」



サーシャとは、魔王ユミルの

想い人である。彼の乳母兼メイドで

人生で最も長くつきあった女性で

あり、初恋であり、今も恋心を

募らせている女性である。


20歳の魔王ユミルとは年齢差は

15ほどあるが、ユミルにとっては

些細な問題……というよりも、

初恋が乳母のサーシャであり、

多感な時期に下着などを盗み、


こっそり一人であれやこれや

楽しむなど、思春期にほんの

少しだけ性癖を拗らせてしまった

経験を持つ魔王ユミルにとっては、

性癖的にまさに

どストライクなのであった。



「えっと。ああ……っ!

 思い出した。思い出した。

 あのメイドのおばさん?」


「お胸が大きいけど

 ほうれい線を気にして

 よく手鏡をみている

 あのアラサーのメイド?」


その二人のサーシャを

侮辱する言葉を聞き、

魔王ユミルの全身から

いままでにない漆黒のオーラが

渦をまき、顔は鬼の形相になっていた。



「サトシさん、

 ここから先は、魔王としての

 四天王の調教の時間なので、

 あとは我に任せてください」



魔王ユミルは笑顔でサトシ

に語るが、目頭がピクピク

動いており激怒しているのが

明らかにわかるありさまであった。



「ええ……ユミルさん。

 あとは、任せます」


「この二人は、我が夜通し

 みっちり調教しておくので、

 サトシ殿はゆっくりと

 休んでいてください」



この一連の事件を通して、

サトシはユミルの魔王としての

一面を理解したのであった。

=================

【辺境村の開拓状況】


◆住民

土属性:1名

世界樹:1名(+1)

ドワーフ:35名

魚人族ディープワン:28名

魔王:1名

雪女:23名

四天王:1(2名) ←New!

ゴーレム:たくさん


◇特産品

ケチャップ

あいすくりいむ

ワイン(ドワーフ族作)


★ペット

混沌の翼竜ケイオス・ドラゴン:1匹 ←New!

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