第8話『ゴーレム無双』
「くっ……殺せ。たとえどんな辱めを
受けても私の心までは屈しは……!」
ゴーレムに羽交い締めされているのは
"ドワーフ"の女騎士だった。
(エルフの女騎士じゃねーのかよ!
いかにもエルフが暮らしてそうな
森林地帯なのに! 詐欺だ!!!)
「落ち着くのじゃ。
そこなドワーフ族の女よ。
その男は妾の旦那さまじゃ。
妻を差し置いて他の女に手を
出そうとは思わんのじゃ。
のう、サトシ?」
(なんか、今のミミの言葉ドワーフ
じゃなくて微妙に俺に釘を刺す
ための言葉だった気がするのだが
気のせいだろうか?)
「おっ、おう。もちろんだ。ミミ。
ところで、ドワーフの人よ、
なぜこんなところに来たんだ?」
「繁殖期のオークの群れが我らの村に
向かっている……。このままでは、
我らの村の女たちはオークの孕み袋
にされてしまうだろう」
(オークにドワーフ。さすがに
性癖拗らせ過ぎだろ。……地獄絵図だな。
そもそもドワーフって男と女が外見が
同じで見分け付かないんだよな。
ドワーフってチビでガタイの良いヒゲのおっさん
という感じなんだよな。リザードマンの
性別を見分けるのよりも難しい)
「危機的な状況なのは分かった。
先手必勝だ。オークの群れを滅ぼそう」
「気軽に言ってくれるな。
お前は繁殖期のオークの群れの
恐ろしさを知らない。繁殖期の
オークの能力は通常時の10倍、
更にこの群れを率いるのは、
グレーターオークロード。
更に種族スキルの女騎士特攻持ちで
女騎士相手には感度3000倍だ!」
「女騎士特攻の話はともかくとして、
グレーターオークロードか。
確かに厄介な相手だな。
奴らの群れに潰された村も多いと聞く。
防衛戦になる前に、やはり先手で潰そう」
サトシは過去にコボルトの
群れに襲われたギルド嬢コノハの
元故郷のホロビー村を守
りきれなかった経験を思い出し
いち早く動こうと決意する。
「オークの群れはどこにいる?」
「ここから、北東の1キロメートルの
地点で拠点を作り村を襲撃する
ための準備をしている」
「なるほど……。時間の余裕が無いな」
「ああ……。危機的な状況だ」
「だいたいわかった。それじゃぁ、
ゴーレム10体を進行中の群れにぶつける
「
サトシの前の土が銀色に光輝き、
魔法陣から10体のゴーレムが生み出される。
「更にっ! 「
生み出されたゴーレムは
土の中に沈んでいく。
「とりあえずまずは、敵勢力の
調査のために10体ほど派遣した」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
地中に潜行したゴーレムは
100頭いる繁殖期で発情したオーク
の群れの前に突如、地中から現れる。
奇襲成功である。
グレーターオークロードの目の前の
地中から現われたゴーレムは、
グレーターオークロードの頭部を
アイアンクローのように鷲掴みにし、
群れのボスの首を引きちぎる。
ボスを殺されて怒ったオークキングや
オークキャスターがゴーレムに
攻撃するも一切の傷をつけること
すらできない。あとは、向かってくる
オークを石の拳でゲンコツ(頭部爆散)
をしていたら全滅していた。
・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
数十分後。
「安心しろ。オークの群れは
村にたどり着く前に全滅させた」
「そんな馬鹿な……。相手は
グレーターオークロードだぞ?
しかも、我が肉眼で見た限りは
その群れの数は100は居た」
「事実だ。本当は敵の戦力確認の
ために送ったんだが、そのまま
全滅させちまった」
(俺が世界樹の葉を食べたせいか
ゴーレムの基礎能力も劇的に
進化しているようだな。
というか距離制限がほとんど
関係ないレベルで遠くまで
ゴーレムを派遣できるように
なっているな。ゴーレムつおい)
「……証拠はあるのか?」
「あるぞ。ちょっと待っててくれ
「
サトシの前の何もない土から
ゴーレムがせり上がってくる。
「はわわわ。これはちょっとだけ
ぐろいのぅ……」
「オークの群れを倒した証拠、
グレーターオークロードの首だ。
これなら他の部位と違って、
勘違いということもないだろ?」
「すまんな。お前を疑うわけでは
ないのだが、村の存続がかかっている
からその首を我によこしてくれぬか?」
「もちろんだ」
ゴーレムは片手に抱えた
グレーターオークロードの生首を
ドワーフの女騎士に手渡す。
まるでお宝を鑑定するように
いろんな角度でグルグルと
生首を回しながら観察する。
(職人気質というか細かいというか
こういうところはやっぱ
ドワーフっぽいよなぁ……
めっちゃヒゲだしな)
「うむ。確かに確認した。
確かにこの生首はグレーターオークロード
のモノでで間違いない。試すようなこと
をして悪かった。非礼を詫びよう」
ドワーフの女騎士は、騎士の作法に
したがって深々とお辞儀をする。
「気にしないでくれ。
まぁ、ご近所付き合いの一環みたい
なものだと思ってくれ」
「どうじゃ! 妾の旦那さまは
強いのじゃ! 自慢の旦那なのじゃ!」
興奮しながらミミは、
サトシを褒める。
「フッ……。お前に妻がいないと
いうのであれば我が妻になっても
良いと思うほどであったが、惜しいな」
(いや、それは無いだろ。
ヒゲのおっさんの外見を愛せる
ほどは俺のストライクゾーンは広くないぞ?
まぁ、ドワーフからしたら人族も
同じように見られているのかもしれんがな)
「あはは。気持ちだけは
ありがたくもらっておくよ。
バタバタしていて挨拶がおくれたな。
俺の名前はサトシ。
そしてそこの銀髪の子が
俺の妻のミミだ。この地に
定住することになったから
今後ともよろしくな」
「挨拶が遅れたな、
我の名前は、グッゴローゼ。
ドワーフ族長の一人娘、
誇り高きドワーフ族唯一の女騎士だ!」
サトシは手を伸ばし握手を求める。
グッゴローゼはその手を掴み、
強く握りしめる。手の大きさは
サトシの2倍ほどである。
「ところでグッゴローゼさん、
ドワーフ族の他の皆さんって
何をしているんですか?」
「まあ、村の民のほとんどが鍛冶師だな。
武器や防具や農具を作っている。
物作りと酒が好きな奴らがほとんどだ」
「おお。さすがドワーフ族じゃの
鍛冶の能力でドワーフ族の
右に出るものはおらんからの」
「おお! それはめっちゃ心強い!
それじゃあ、こんなモノを
作って欲しいんだけどお願い出来るか?」
鉄○ダッシュの手押しポンプ製作
企画で見た、うろ覚えの記憶を
元に土から粘土板を作り手渡しする。
なお、粘土板に転写する際に仮に
本人の記憶がうろ覚えで曖昧でも、
脳の中に刻まれた画像イメージを
超正確に転写することが可能である。
「おお……。井戸の水をより
簡単に作る事ができるように
する器具か。この程度の器具
であれば職人に依頼すれば
数日で作れるぞ。
それにしても、このような高度な
図面を短時間で作りだす技術、
そしてこの屈強なゴーレム、
お主、もしや賢者か?」
「いや、俺は土属性だ」
「そうか……。なるほど。
込み入った事を聞いてしまったな。
今の我の言葉は忘れてくれ。
すまなかったな。土の人よ」
(土属性ってそんなに気を
使われる職業なのか?!)
「旦那さまよ。妾は土属性でも
決して差別などはせぬぞ。
むしろ妾はサトシのそのちょっと
土っぽい感じが好きなのじゃ」
「えぇ……? 俺って土っぽい感じなの?
そもそも土っぽい感じって何?
まぁ、とにかくミミよ。ありがとう。
土だけど頑張るよ」
「あと、農具一式をお願いしたい。
大金貨一枚で足りるか?」
「いや、村を救ってくれたのだから
金貨などはいらない。
その代わりと言っては何だが、
ゴーレムが倒したオーク達の肉
をもらって行っても良いか?」
「ああいいぞ。好きなだけもらって
いってくれ」
「恩に着るぞ。土の人よ!
ポンプと農具が出来上がったらまた来る」
そう言ってドワーフの女騎士
グッゴローゼはグレーターオークロード
の生首を抱えたまま村に帰って行った。
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