ワールドノック 《人生詰みに詰んだ人達が訪れる最期の駄菓子屋》
うさだいふく
第1話 依頼人
荒んだ世の中荒んだ人生に嫌気がさした。
高層ビルの間に漂う暗闇の中、あてもなく歩くことに後悔の念しかない。
若くして立ち上げた私の会社は、ただ一度の失敗で崩れ去った。
有名自動車メーカーから部品の受注を受けて商品を加工するだけの会社だったが、独自の技術を駆使してコツコツと信頼を積み上げて勝ち得た実績。全ては順調だった。
都会の醸す雰囲気に気圧されたように静かに佇んだ公園。
切れかけた電灯に照らされたベンチに腰掛けて、私は深くため息をつく。
あの男、アマカゼが顧客のデータを部外に流出させた挙句、我が社の製品に欠陥があることを吹聴したことで、会社経営は一気に傾き、なすすべなく倒産した。
アマカゼの採用は巳年の春、見込みある若者と思った私がバカだった。わずか半年で製造に関するノウハウを吸収した矢先での出来事。初めから我が社の情報だけが目当てのスパイであることは明白だった。
会社も家族も失った私に残ったのは千円札1枚に、息を吹けば飛ぶかのような希望…
腰掛けたベンチの目線数10メートルには、ビルとビルの間に立ち並ぶ旧時代の木造家屋。掲げられた看板にはミトミ商店の文字。
思い起こすのは、とあるお得意先で聞いた噂話。ミトミ商店にはアンダーノックがいる。
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