07【リリス】入山記録
――暇だなぁ。やっぱり私も、付いていけばよかったかなぁ。
ここは、休憩所の棚の奥に置かれたポーチの中。
買ってもらった菓子を全部食べ終わった途端、やることがなくなってしまった。
――人間の食べ物で太らないっていうのは悪魔のいいところね!
本来悪魔は、人間の悪意や怨念など負の感情を糧に活動する。
口から取る食料なんて単なる嗜好品に過ぎないんだけど、この世界に来てからやたらお腹が減るようになってしまった。
食べなきゃ飢え死にするってわけでもなさそうだけど、なんでこんな体質になっちゃったんだろ?
やっぱり、美味しい食べ物って常習性があるのよね。
食べ物中毒、ってやつかしら?
暇なのでいろいろ考えてみるが、すぐに飽きて思考を放り出す。
ポーチから顔を出して時計を見れば、まだ十二時半。
紬くんが戻るまで、まだ二時間半もあるよ……。
よし!
寝るか!
……と思ったその時。
「本部からの連絡だ。この辺りにキルパンサーの出没特別警報が出たって」
フロントからスタッフの話し声が聞こえてきた。
「キルパン!?
「入山記録見てくれ。誰か入山しているか?」
「……いや、今日は誰も入ってないな」
「そっか、よかった。それなら討伐隊の編成も急がなくて大丈夫だろ」
え?
ええ――っ、なんで?
出る前に、あのユウヤとかって人、入山記録付けてたよね?
とりあえず、このままじゃ当分、討伐隊とやらの出動がないことは確かだ。
紬たちのことを知らせようと慌ててポーチから飛び出たところで、ようやく気が付いた。
――な、なにこれ!?
ポーチの中では気が付かなかったけれど、自分の体が服ごと完全に消えている。
なんとか声はでるようだけど、姿の見えない私があの人たちに話しかけて信じてもらえるだろうか?
それどころか、おかしな魔物と勘違いされて、駆除されるのがオチのような気も。
――もしかして、紬くんのそばじゃないと存在できないとか!?
え~っと、地図に付けていた予定エリアは確か……。
ここから一キロもなかったはずだし、今の私でも、走れば二、三十分で紬くんのもとに行けるはずよね!?
急いで棚から飛び下りると、ドアの隙間から表へ飛び出す。
と同時に、頭を
もし紬くんが死んじゃったら、私の姿もずっと見えないまま?
いや、もしかしたら、存在そのものが消えて無くなっちゃうかも!?
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