06.虫の知らせ
翌朝、天候は
テントでは
「今日は止めとくか?」
面倒臭そうな
「いや、そんなに長期滞在はできないし雨具も持ってきている。決行しよう」
ピシャリとした可憐の言葉で、緩みかけていた場の空気が引き締まる。
……と思った矢先、
「え~、私、嫌だなあ。ずっと蒸れ蒸れポンチョの中で過ごすなんて」と、リリス。
このKYメイドが!
本当にファミリアケースの住人第一号にしてやるか?
リリスを睨み付けていると、隣に来て一緒にポーチを覗き込んできたのは
「じゃあ、留守番してる?」
「おお、立夏ちゃん、話が分かるぅ~」
「いいのか? 俺の使い魔なのにそんなわがまま許して」
「雨で可哀想だし、それに、そんなに役に立ちそうにないし」
「うんうん♪ ……ん?」
首を傾げるリリス。
「仕方ないなぁ。呑気に昼寝なんかしてて連れ去られたりするなよ?」
「はーい。お菓子、買っておいてね!」
「メイドのくせに、
皆がロビーのテーブルに集まるのを待って、可憐がテキパキと指示を出し始めた。
「二班に分けるけど、
「えぇ~、それじゃあ俺、勝っても負けても男二人編成じゃん!」
そういう部分での頭の回転だけはほんと速いな、
ジャンケンの結果、各班のメンバーは、
A班:
B班:
という組み合わせになった。
可憐がテーブルの上に拡げた地図に印をつけていく。
「A班はこの辺りの川辺、B班はこの辺りの林を探索。丸で囲んだ範囲を出なければどんなに離れても百メートル程度だ」
「魔物と遭遇したら?」と、信二が質問する。
「★3以下は
但し、★3でもゴーレム系やタートル系の場合は、捕獲成功率を上げるために全員で対処することも確認した。
テーブルの上で、お菓子を頬張りながら地図を眺めていたリリスをポーチに入れ、荷物棚の下段の奥へ押しやる。
「じゃあ、紬は売店でポーションを十個ほど購入、勇哉は入山記録帳を付けておいて。帰還予定は午後三時で」
という可憐の指示に従い、俺と勇哉がそれぞれ動く。
ほんと、班長は
皆から集めたお金で
痛み止めの効果も付いている高級品だ。
ロビーへ戻るとA班はすでに出発していた。
俺たちも、すぐに準備を済ませて外に出る。直後、頬に当たった
林に入ってしばらく進んだあと、
「この辺りが、目的のエリアだな」
勇哉が、防水ケースに入れた地図を見て声をかける。
「じゃあ、少しずつ場所を変えながら待ち伏せしよう」
可憐の声を聞きながら、何とはなしにA班がいるはずの方向へ目線を向けた。生い茂る木々と、雨粒が作り出す
俺の視線に気づいたのか、可憐も少し表情を曇らせる。
「思ったより視界が悪いな。A班からあまり離れ過ぎないようにしよう」
「百メートルも離れてないんだし、心配いらないって!」と、気楽に笑ってみせる勇哉だが……。
どうも先ほどから左脇腹がチクチクと痛む。
虫の知らせじゃないが、昔から悪いことが起こる前はよくここが痛むんだよなぁ。
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