ミナミコ探検日誌

みずかん

1日目『たんけん』

わたしはミナミコアリクイ。

あるちほーでたんけんたいをしている。


黒いかみに、いつもネブソクのような目をしているのが「たいちょう」


強くて、マジメなのがふくたいちょうの

「タイリクオオカミ」


目つきがするどく、足がはやいのが、

「チーター」


真っ白で、オシャレを気にしてるのが、

「シロクジャク」


いつも何もおしゃべりしない

「レッサーパンダ」


これが、わたしのたんけんたいのメンバー。

だけど、みんなとはなかよくない。


わたしは、みんなから、いじめられている。


それは、わたしがこのたんけんたいに入って、

すぐはじまったことだった。


入ってから、すうにち。

あの日のできごとは、わすれられない。


***


「いやぁ...、天気悪くなりそうだな」


隊長は窓から空を見て言った。


「雨が降る前に見回りに行く?」


副隊長のタイリクが尋ねた。


「ああ、そうだな」


メンバー全員に召集がかけられ、車で管轄の見回りをしに行った。


車は十分程走った所で止まった。


「ちょっと、森の中の様子も見ないとな。

この先に滝があるだろ?そこの近くまで軽く行って戻って来よう。そうだな。複数に別れた方がいいか」


隊長が提案し、グループ分けをした。

そうして、ミナミコアリクイはシロクジャクと一緒に見て回る事になった。


「...なに持ってるの?」


「え?これの事?」


シロクジャクは右手に持っていたモノを見せる。


「これは傘よ。美しい私の羽根が雨で濡れたらイヤじゃない」


彼女はどこか、偉そうだった。


「へぇ...。どうやって使うの?」


「...なんでアナタに見せなきゃいけないの?」


突然、不機嫌そうに言った。


「え?見せたくなければいいけど...」

(変なヤツだな...)


「というか、アナタ何も知らないのね。

多少の知識は身に付けた方がいいわよ」


彼女は妙にクスクスと笑った。


しばらくすると、ガサゴソと、茂みから音が聞こえた。


「―!!」


赤いセルリアンが1匹、飛び出してきた。


「あ...、セ、セルリアン...!」


「あら、ちょうどいいじゃない。新入り、倒してみなさい」


「え...、え...」


探検隊に入った時からセルリアンと対峙する事は覚悟していたが、いざ実践となると怖い。


「何してるの、さっさとしなさい」


隣のシロクジャクが急かす。


「あ...、い...、く、来るなぁ!

い、威嚇のポーズ!!」


「...チッ」


次の瞬間。

バシッ、っと、頭を何かで強く叩かれた。


「痛いっ!!」


「ふざけてんの!?」


シロクジャクは激昂した。彼女が傘で叩いたのだ。その隙を見計らったかの様にセルリアンが来る。


が、シロクジャクは直ぐ様傘で攻撃し、そのセルリアンを瞬殺したのだ。

彼が砕け散るのを確認すると、ミナミコの方へと向かい、傘で複数回彼女を叩いた。


「いっ...痛いよ...っ!」


「アナタなんでこのチームに入ったのよ?

足引っ張らないでくれる!?

この痴れ者!ゴミクズ!役立たず!!

私の美しい羽根を守る傘が壊れたらどうするの!?」


それほど傘が大事であれば、叩くのをやめればいいのに。そんな事言ったって、余計に酷くなるだけだと思った。


「私達は遠足で来てるわけじゃないのよ?...ッチ、あー、ホントに来た時から思ってたけどね、汚いのよアナタ。汚い汚い!この高貴な私に近づかないで!私の美しさが汚れるわ!」


フェンシングの様に傘でつつき始めた。


「うっ...、ご、ごめんなさい...」


いつの間にか、ミナミコは涙を流していた。


「傘が汚れちゃったわ...、新しい傘をもらわないと...」


シロクジャクの舌打ちが何回か聞こえた。


「アナタ本当にこのチームに、仲間として受け入れてほしいならふざけた真似はやめなさい。

このチームに可愛さとかおふざけは要らないの」


「.....」


ただ、呆然と立ち尽くした。


すると、空からポツリポツリと雨が降り始めた。シロクジャクは傘をさした。


「アナタ、滝の方まで行ってきなさい」


「...シ、シロ...クジャク...」


「...ッチ、行きなさいよ。早く。私の視界から消えて、この汚物」


強くシロクジャクに睨まれたミナミコは怖くなって雨の降る中、滝の方まで走っていった。


ーーーーーーー


ずぶぬれになってしゅうごうばしょにもどると、シロクジャクはおろか、たいちょうのクルマまでいなかった。わたしはのけものにされた。


大雨の中、みちを歩いてきょてんにもどった。


きょてんは入れた。

レッサーパンダが心ぱいそうな顔をしてタオルをくれた。


レッサーパンダに「はなしがある」と言われた。


ーーーーーー


「...ごめんね、あんなことして...」


レッサーパンダは小声で謝った。

彼女は自分が全て悪いかのような口振りだった。


「シロクジャクに...、やられたんだよね」


その言葉に驚き、目を見開いた。


「えっ...」


「私も、初めてここに来たときにいじめられたんだ」


「....」


「でも、あなたが来るとわかっていじめは終わった」


「それって...」


「隊長も、副隊長も、チーターも...。

みんなグルなの」


彼女の言葉は完全に自分の思考を停止させた。


「なんでそんなことするかは、私もわからない...。でも、いずれにせよ、やっちゃいけないことなのは...、わかる」


「探検隊やめなかったの?」


「やめたかったけど、やめるには隊長に届け出が必要なの。でもダメだった。家出もしたけど、あの人達に連れ戻された」


「...どうしようもないってこと?」


レッサーパンダは小さく首肯した。


「...本当に...、みんなを止められなくてごめん...。またいじめられるのが...、怖くて...」


怯えた様に声を震わせた。


「だ、大丈夫だよ...。レッサーパンダの気持ちは...、わかったから...」


「...こ、これ...」


彼女は服の内側から1個のじゃぱりまんを取り出した。


「ミナミコちゃんの分...。ないからあげる」


「....」


「わ、私はいいよ。悪いことしちゃったから...」


「....」


「....え?」


ーーーーーー


わたしは、レッサーパンダとじゃぱりまんをはんぶんこした。


レッサーパンダはなみだをながしていた。


どうすることもできない。

まるで、オリのなか。


レッサーパンダが、ただひとりのやさしい子だとわかった。

わたしがかわりに、いじめられてもいいかもしれない。

けど、いたいのはイヤだ。


うでに、カサでたたかれたあとがのこる。


ヒリヒリする。


ホントにどうすることもできないのかな。


あと、なん日つづくんだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る