季節を歩く幻想

帆場蔵人

第1話 冬を歩く幻想

庭の木も街路樹もすっかり

葉が落ちさり手をひろげて

雪を待ちかねてざわざわと


さぁ、おいで、雪よ、おいで

歌いながら風を掬い夜を掬い

全身で冬の夜空を受け止めて


君は僕の手をひいてその木立ちを縫っていく

僕は君の手にひかれ、木立ちの歌を聴いてる

雪が降るまでにどこまでいけるだろう


雪が待ち遠しいと思いながらも

朽ちかけた落ち葉を拾いあげて

繋いだ手の間に縫いこんでいく


ひとつの季節の幻想がひとつになれない

肌膚の間で編まれ街路樹を縫い続けていく

雪が降るまでにどこまでいけるだろう


ぽつりぽつり、と

浮き上がる街灯が

幻想を打ち消してしまう

工事現場の誘導員が

僕らを日常へと誘っていく、夜の街角

マンホールの蓋がズレている


あそこには辿り着けないんだ

街灯のなかを当たり前に歩いて

ほら、雪が降り始めた


コンビニで缶コーヒーを分け合いながら

僕らはどこまでもいけはしなかった

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