DX3rdオリジナルシナリオ「The Sandy Planet」関連

配線

黒い雷が空を裂く




『――「祈りの果実」スキャン開始』


アルスキュルタブミュジーリテラテアトフィルメディ、スキャン完了』

『各種生命維持装置、異常なし。レネゲイド活化抑制機構、異常なし。セキュリティ・ウォール、レベル3監視中、異常なし。映像及び音声同期開始。同期完了』



『「鑑賞者」の指示に基づき、アルが代理として会議を取り仕切る。この度8つ目の「果実」が作戦に加わりました、メディ。調子はどうです』

『問題ありません』

『よろしい。「鑑賞者」から大体のことを聞いているでしょうが、改めて確認していくので落としこむように。質問があれば、都度許可します』

『はい、アル。配慮に感謝します』

『ええ~、またあのクソつまんない授業すんのォ。聞き飽きたんだけど』

『口を慎め、ミュジー。貴様は3回同じ内容を聞いたのに理解できていないだろうが』

『まあ覚えてませんけどォ』

『キャハハ、ミュジーってマジで頭悪ーい。でもそこが好き』

『黙れ猫被り。貴様のその甲高い声も不快なんだよ』

『いやん。リテラの罵倒ってばドス聞いてて気持ちいい☆』

『…………』

アル、ほっといていいよ。話進まないから』

『そうしましょう。まずは最終戦争について、メディはご存知ですね』

『はい、20XX年X月X日に地球で勃発した、史上最大の世界戦争です。かつての世界戦争では用いられなかった最新化学兵器やレネゲイド兵器、オーヴァード及びジャームで構成された戦闘部隊などの大量導入により、全ての分野において被害甚大であったと記録されています。世界人口の99%が失われ、文明社会は停止。空気中のレネゲイド濃度は12%もの上昇で、戦闘から生き残った人類の生命活動も困難となりました』

『お偉いさん方、自分の支配広めたくて戦争おっ始めたのに、夢中になって侵略しすぎて支配するヒトもモノも全部ダメにしちゃったってワケ~。馬鹿だよね~』

『……そして残された1%が死の塵から免れ地下に、もしくは宇宙に拠点を移しました。しかしただ生き延びたところで、最終戦争が人類の歴史における致命的な汚点となってしまった事実に変わりはない。我々「果実」の使命は、それを雪ぐことです』

『ああ、このような役目を任せていただいて、なんて幸せだろう。僕ら救世主になれるんだよ、メディ

『……はい。素晴らしいことだと思います』

『使命を果たすための目下の課題は2つ。最後の「果実」――バンデの選定と、ウィル・フラグメントの収集です。その鍵となるのが、地上で出現し始めた変種』

『レイク・オーヴァードだ』

『レーキ! あのネズミかゴキブリみたいな、気持ち悪い生命力のやつらね』

『その例えだと子ネズミと子ゴキブリをぞろぞろ連れて歩いてる感じになってキモさ倍増じゃんかよォ。オェッ』

『普通のオーヴァードだった者が変異する例も少なくないが、その数は現在200人に満たないとされている。むしろウィルフラッドとの交戦やら、そもそも衰弱か餓死かで死ぬスピードの方が速いから当初に比べて減少しているとも聞く』

『彼らの特徴は大きく2つ挙げられます。メディ、説明できますか?』

『はい。毒の砂……地上に蔓延する攻性レネゲイドへの耐性と、ウィルの懐柔です』

『その通り。レーキでなくとも装備を整えれば毒の砂の侵食を抑えられますが、ウィルを集めて自身の「群れ」とすることは、彼らにしかできません。原理は今のところ不明ですが……重要なのはその能力を利用できればウィル・フラグメントの収集効率が著しく上昇するであろうこと、ウィル・クリスタルのコントロールが安定するであろうことです』

『全く以て忌々しい。奴らの手を借りねば俺たちの目的は果たせないというのか、アル。現に制御はできているではないか』

『これは私ではなく「鑑賞者」の決定です、方針転換は許可できません。確かに今のところウィル・クリスタルは安定していますが、あくまで未完成だからです。貴方はまだ余裕があるようですが、スキュルはその分クリスタルの制御に意識を全集中しているので「果実」に加わった時から何も話せず、聞くことも叶いません。フラグメントがさらに集まれば、次は貴方がこうなるかもしれないのですよ』

『……承知した。以後慎もう』

『まあ、肝心なところで失敗しちゃったら意味ないし~。ちょっとヤだけど、レーキ使うしかないならそうしないとね?』

『難しくはないと思うけどな……あいつらだって、今の地上で生きてくの大変だろうから。外歩いてたらウィルフラッドにやられるし、地下行ったら生き残りに石投げられるし』

『だよなァ。俺がレーキだったら「こんな地獄オサラバして、ヒーローになって世界救っちゃおうぜ」とか勧誘されたら秒で乗るもん』

アル、質問があります』

『どうぞ、メディ

タブの言う通り、レーキにとって地上での生活環境は劣悪です。彼らを説得して、その中から適性のある者を「果実」とするのはさほど困難ではないように思います。既に複数名のレーキを確保しているとも聞きました。しかし「鑑賞者」は、誘いを断ったレーキもいると言っていました。なぜでしょう? なぜ彼らは、望んで地上に留まるのでしょう』








なぜ、ここにいるのだろう。

意味もわからず放り出され、必死に生きて、生き続けても、独りでは何を成すこともなく。

誰かがここは地獄だと言った。嫌気が差せば、その気になれば、逃げるのは簡単だ。

それでも歩き続ける。生きていきたい理由があるから。





歩き続ける。歩いていると、ただただ思う。

お前のいない地獄は広い。





「どうすれば光が見える」



「教えてくれ、…………     。」







ダブルクロス The 3rd Edition キャンペーンシナリオ『The Sandy Planet』


第1部『Jet-Thunder strikes』

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